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「上司に質問したくない、意見を言いたくない」職場を変える“3つのステップ”

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

「上司に質問したくない、意見を言いたくない」職場を変えるには?
「上司に質問したくない、意見を言いたくない」職場を変えるには?

 いろいろな会社の中で、若手メンバーが上司や先輩に気軽に質問したり、意見を言ったりする雰囲気がなく、上の意向だけで動く職場があります。上司の性格なのか、トップダウンの度が過ぎるのか。

 それで業績が上がっているなら、いいかもしれないのですが、どんな仕事でも創造性が企業競争のポイントになっている現代においては、自発的に自由に意見を言い合える雰囲気のない組織は、メンバーの持つ能力やアイデアを引き出しづらいことが多く、やはり業績もなかなか上がらないことも多いようです。なぜ、そのような職場が生まれるのか。どうすれば解決できるのでしょうか。3つの段階に分けて考えてみましょう。

(1)「無力感を生む」要因を知る

 人にはもともと自発性が備わっています。どんな人でも子どものうちは、自分がやりたいことをやりたいと主張したり、行動に移したりします。ところが、ある事柄について、長期にわたってトライし続けたにもかかわらず、どうしてもうまくいかないことが続くと、「何をやってもどうせ無駄だ」という認知が生まれ、徐々に自発性が縮小していきます。

 そして、最終的には過剰に従順になり、抵抗することさえしなくなります。このような現象を心理学者セリグマンは「学習性無力感(learned helplessness)」と呼びました。もしかすると、質問や意見が言えない職場は、メンバーがこの状態に陥っているのかもしれません。

 学習性無力感についてのセリグマンの衝撃的な実験があります。犬を2グループに分けて電気ショックを与えるのですが、一方はボタンを押すとショックが止まり、一方は何をしてもショックが止まらないようにします。

 その後、低いハードルを乗り越えれば電気ショックから逃れられる別の部屋で、再びショックを与える実験をしました。すると、前者の「ボタンを押せば電気ショックは止まる」と学習したグループは、ハードルを乗り越えるのですが、後者の「何をしても無駄」と学習したグループは、電気ショックに抵抗する手段を探すことなく、じっとショックに耐えたというのです。

(2)自発性に「ゼロ回答」していないか、振り返る

 さて、もし職場で似たような状況が起こっているとすれば、思い当たる節はないでしょうか。例えば、メンバーの質問に対して「そんなことも分からないのか」「まずは自分で考えろ」というような返答をしたり、提案してくる意見に対して「そんなものは全然ダメだ」「ピンと来ない。よく分からない」「黙って言うことを聞いていればいい」と言ったりしていないでしょうか。

 こういう会話が繰り返されれば、「質問しても、意見を言っても無駄」という認知が生まれても仕方ありません。このように、せっかくのメンバーからの自発的な発言に、上司や先輩が「ゼロ回答」をしていないか、振り返りが必要です。

 ただ、若いメンバーの質問や意見は稚拙なことも多いでしょうから、つい先述のようなことを言いたくなることもあるでしょう。また、ビジネスは遊びではなく真剣勝負なのですから、間違ったおかしな意見なのに、「いい意見だ」と、うその反応をすることも、メンバーを妙な方向に導いてしまうかもしれません。

 間違っているものは間違っていると正しくフィードバックしなければ、当人に改善を促すことができないのも事実です。ですから、学習性無力感を起こさせないためとはいえ、ネガティブフィードバックをしないのも本末転倒です。ここが難しいところです。

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曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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