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就活に不利? 在籍する「大学」関係者が不祥事、面接時にどう対応? 専門家が解説

在籍している大学の関係者が不祥事を起こした場合、就職活動時に不利になる可能性はあるのでしょうか。専門家が解説します。

在籍する大学の関係者が不祥事を起こした場合、就活に影響する?
在籍する大学の関係者が不祥事を起こした場合、就活に影響する?

 大学生が違法薬物の所持などの事件を起こしたときに、新聞やテレビで当該の学生が在籍している大学の名前が大きく報じられることがあります。大学3年生は、秋以降、本格的な就職活動に入りますが、就職活動中の大学生の中には、自分が在籍する大学の関係者が不祥事を起こした場合、選考に影響しないか不安に感じる人もいると思います。

 在籍している大学の関係者が不祥事を起こした場合、就職活動時に不利になる可能性はあるのでしょうか。不祥事があった際に就職活動に臨む場合、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。

 企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた人事コンサルティング会社「人材研究所」の代表・曽和利光さんが解説します。

基本的に選考に影響しない

 まず、結論から言うと、在籍している大学の不祥事は、基本的に「選考には影響しない」と言ってよいと思います。なぜなら大学は、学生だけを見た場合、組織というよりも集団と言えるからです。大学の講義では、基本的に企業のような組織内の役割分担などはなく、学生同士の関係性は極めて緩いです。

 そんな集団の一部の人が何らかの不祥事を起こしたからといって、集団全体に影響を与えることはほとんどないでしょう。もちろん、悪いイメージがついてしまう場合があるかもしれませんが、企業の採用担当者は、選考時に大学名ではなく、目の前の「個人」を見ているため、対策を練らなくてはいけないほどのことではありません。

面接での特別な配慮も不要

 もし面接で在籍中の大学の不祥事について聞かれた場合でも、基本的に配慮する必要はありません。不祥事についてほとんど知らないのであれば、「あまり知りません」と答えて構いません。一般人と同様、ニュースなどで知っている程度のことを答えたり、その上で素朴に感じたことだけを伝えたりしておけばよいでしょう。面接官も「自分の大学のことなのに、何も知らないのか!」とは感じません。

 会社員が転職活動時に自社の不祥事について知らないと答えた場合、面接担当者は「自分の会社なのに!」と感じると思いますが、就職活動中の学生の場合、大学のような大きくて緩い関係性の集団について、さまざまなことを知っておく必要はありません。就職活動時に面接官が大学の不祥事について質問をしてきた場合、センスを疑ってもよいくらいです。

不祥事の当事者と関係性がある場合は注意

 しかし、大学の中にも部活やサークル、学生団体などのように、所属する人同士の関係性が強く、企業組織に似た組織的な集団があります。そういった組織に所属していて、その組織の構成員が不祥事を起こした際はどうでしょうか。この場合、就職活動時は少し配慮する必要があります。

 私の経験で言うと、以前、ある有名大学のサークルで大きな不祥事がありました。その際、多くの企業の採用担当者は、応募してきた学生がそのサークルの関係者かどうかをネットで確認したり、似たような活動をしている学生がいた場合は具体的なサークルの名前を聞いたりしていたほか、自社のOB・OGから情報を集めるなどして、できる限り確認しようとしていたのを覚えています。

 基本的に、企業は採用活動時にリスクを取りたがりません。もし、応募してきた学生が不祥事を起こした組織に所属していると分かった場合、不祥事に関与していないことが明らかにならなければ、その学生の評価は大きく下げられてしまったと思われます。

自分から先に言及した方がよい

 さて、そんな場合はどうすればよいでしょうか。基本的に、自分が所属している組織が、社会を揺るがすような事件を起こしたのであれば、学生は面接時に自分からそのことについて発言した方がよいのではないかと私は思います。

 もちろん自分が当事者でなかったとしても、「どのような空気感の中でその不祥事が起こったのか」「自分は当事者とどのような関係性があり、それに対してどのようなことを思い、どんな行動を取ったのか」といったことを、相手から聞かれる前に伝えるのです。

 面接官に聞かれてから答えると、どうしても「隠していた」というイメージがつくため、やましいことがないのであれば先に言う方が、相手に与えるイメージが良いのではないかと思います。

不祥事を起こした組織に所属→必ずしもNGではない

 自分からあえてマイナスイメージになるようなことを言うのはどうかと思うかもしれませんが、先述のように、企業は採用活動で無理にリスクを取ろうとはしないため、「分からなければ危ないから、不採用にする」と判断するかもしれません。

 一方、企業は不祥事を起こした組織に所属していたからといって、組織のメンバー全員をNGとすることはありません。あくまで、採用とは目の前の個人を見て決めるものです。不祥事の当事者ではなく、責任がない人までをひとまとめで扱うことはないのです。

 不祥事を起こした部活やサークルなどに所属している場合、就職活動時は不安になると思いますが、面接官が疑心暗鬼にならないためにも、勇気を持ち、公明正大に自分のことを話せばよいと思います。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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