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子どもが「就活」で苦戦したらどうする? 親の心構え&NG行為をプロが解説

就職活動中の子どもに対して、親はどのように接するのが望ましいのでしょうか。就職・転職のプロが解説します。

就活中の子どもに親はどう接する?
就活中の子どもに親はどう接する?

 企業の中には、学生を対象とした就業体験制度「インターンシップ」を行っているケースがあります。7月から9月にかけて行われることが多く、大学3年生がインターンシップを機に本格的に就職活動を始めるケースが見られます。

 ところで、大学3年の子どもがいる人の中には、今後、子どもが就職活動で苦戦するようなことがあった場合、親としてどう対応しようかと不安になる人もいるのではないでしょうか。

 今回は、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた人事コンサルティング会社「人材研究所」の代表・曽和利光さんが、現在の就職活動と20~30年前の就職活動の違いなどを踏まえながら、就職活動中の子どもへの接し方について、解説します。

親世代よりも少し厳しい現在の就職市場

 現在の日本において、第一子の出産年齢の平均は約30歳です。つまり、今年就活をする学生の親は、およそ30年前に就活をしていたことになります。リクルートワークス研究所の調査によると、今から30年前、つまり1993年卒の求人倍率は1.91倍です。少し前のバブル期最高値である1991年卒の2.86倍には及びませんが、2024年卒の1.71倍と比べても高い水準にあることが分かります。

 つまり、新聞やテレビなどが「人手不足」「採用難」「売り手市場」と報じていたとしても、子どもは、親世代よりも厳しい就活に臨んでいるということを認識していただくのがよいと思います。

人気企業の倍率は極端に高くなっている

 また、就活の方法として大きく変わっているのは、現在はオンライン就活が中心であるということです。就活のオンライン化は、学生にとってはそれだけチャンスが増えたことではあります。親世代の場合、資料請求のはがきを出しても企業からは一切連絡が来ないというケースもありましたが、今は受けたい企業にエントリーして入社試験を受けることが可能です。

 しかし、就活のオンライン化により、競争が激化しています。例えば、人気企業に一気に人が集まるようになり、100倍を超える競争倍率はざらです。つまり、人気企業だけを見ると、極端な競争となり、何十社受けても受からないケースが普通にあるということです。これも昔の就活と大きく違うところです。

人気企業や業界も変化

 そして、当然ながら、この30年での社会や産業界の変化によって、人気企業も大きく変化しています。親世代の1990年代は「楽観的大手志向」などとも呼ばれており、運輸や通信、都市銀行、総合商社、自動車、家電など伝統的な日系大手企業が人気でした。

 ところが、就職情報サイトを運営するマイナビが、日本経済新聞と共同で調査した「マイナビ・日経 2024年卒大学生就職企業人気ランキング」を見ると、文系総合は1位がニトリ、4位にファーストリテイリング、10位にPlan・Do・Seeなど、この30年間に急成長した新進大手企業がランクインしています。

 理系総合でも4位にSky、10位にアイリスオーヤマが登場しています。もちろん日系大手は今でも人気がありますが、親が知らない、もしくは親世代には人気がなかった会社や業界に注目が集まっているということです。さらに言えば、東大・京大の学生を対象としたランキングなどを見ると、外資金融やコンサルティングばかりで、以前とまったく違う志向であることが分かります。

中小・ベンチャーにも目を向ける

 このような変化を踏まえて、就活生の親はどのような対応をすればよいのでしょうか。まずは、先述のように「意外に厳しい」ことを踏まえ、「不合格」になることに対して驚き過ぎないでください。就活中の学生は、ただでさえ自分を否定された気分になっていますが、親が「なぜそんなに落ちるのか」などと追い打ちをかけてしまっては、就活に対するモチベーションは、だだ下がりでしょう。

 また、全体的には「売り手市場」と言われていても、人気企業は昔よりも超難関になっているため、中堅・中小企業やベンチャーなど、学生認知度は低いがよい会社を発掘するお手伝いやアドバイスをしてあげてください。今は、国内企業の99.7%を占める中小企業と、残りの大企業での人気格差がとにかくすごいのです。

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曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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