【就活】親に“内定同意”を確認させる「オヤカク」 なぜ実施? 企業側の注意点は? 人事のプロが解説
企業が、内定を受諾した学生に対し、親が内定に同意したかどうかなど、親の意向を確認させる「オヤカク(親確)」を実施するケースが増えています。企業側がオヤカクを行うことの是非や注意点について、人事のプロが解説します。
近年、企業が、内定を受諾した学生に対し、親が内定に同意したかどうかなど、親の意向を確認させるケースが増えています。こうした行為は、「オヤカク(親確)」と呼ばれており、中には企業側が直接、学生の親に意向を確認するケースもあるようです。
30代以上のビジネスパーソンから見れば、オヤカクは過保護に思える取り組みかもしれませんが、なぜ行われるようになったのでしょうか。親がオヤカクを通じて子どもの就職活動に介入した場合、どのような影響があるのでしょうか。
オヤカクが行われるようになった背景のほか、就活中の子どもがいる親がやりがちなNG行為や企業側がオヤカクを行う際の注意点などについて、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた、人事コンサルティング会社「人材研究所」の曽和利光代表が解説します。
これから始まる超人手不足
オヤカクが行われるようになった背景としては、学生の売り手市場と一人っ子の増加などが関係していると思われます。リクルートワークス研究所が公表した「労働需給シミュレーション」によると、2030年には341万人余、2040年には1100万人余の労働供給が不足するということです。
このような人手不足の中、高卒や中途採用を含めた採用市場全体で人材獲得競争が激しくなっており、一番採用しやすい大卒マーケットで確実に人材を確保したいという企業の意識が強まっているわけです。
ちなみに、厚生労働省が公表した2024年3月末時点の高卒の求人倍率は約4倍、総合人材会社「パーソルキャリア」が公表した2024年4月の中途採用の求人倍率は約3倍であり、相対的に採用しやすいのは大卒採用です。
一人っ子の増加が親の介入を招く
また、国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」(調査時期は2021年)によると、「夫婦の出生子ども数の分布(結婚持続期間15~19年)」における一人っ子の割合は約30年前の2倍となり、全体の2割程度を占めています。大都市圏での比率はさらに高まります。
一人っ子が増えることで、当然ながら、子どもへの関心が高まり、保護者が就活に介入するようになってきたのではないかと思われます。例えば、複数の子どもがいれば、そのうちの誰かが親のそばにいてくれればよいとなりますが、1人しか子どもがいなければ、「その子」にそばにいてほしいと思うのは人情です。
そのため、企業側は保護者の心配を解消することが学生の内定辞退の防止につながると考え、オヤカクをするのが常識という雰囲気になっているわけです。
今の就活状況を知らない保護者の悪影響
このように、親が子どもの就職を心配する気持ちは分かりますし、それが悪いとは思いません。今後も少子化が進み親子の距離が近くなれば、就活に親が参戦するのは当たり前となっていきそうです。
しかし、問題ではないかと思うのは、今のリアルな就活状況を知らない保護者のアドバイスが子どもに悪影響を与えることもあるということです。リクルートワークス研究所が公表した2025年3月卒業予定の大卒求人倍率(大学院卒含む)を見ると、従業員5000人以上の大企業の求人倍率は0.34倍であり、売り手市場であっても難関です。
そのため、保護者が難関であることを知らずに、有名な大手企業を受けるように安易に勧めたり、新進気鋭の急成長企業や企業間の取引が中心の「B to B」企業に関する知識が不足していて、子どもに正しい助言ができなかったりするなどして、子どもがなかなか内定を得られないというようなケースが発生しています。
親を頼る学生に正しいアドバイスができるように
このような、親の「間違った」サポートの弊害を避けるために、多くの大学が保護者向けに就職説明会を開いています。これは過保護だからではなく、保護者に正しい情報提供をして適切な関わり方を求めているというのが真の狙いでしょう。
世の中には就活に関する情報やサービスは充実してはいますが、そこにはたくさんのポジショントークがあり、学生個人のことを本当に考えているかどうかは疑問です。ですから、最終的には自分を第一に考えてくれる保護者を信頼して意見を求める学生は多いと思います。
サポートすること自体は良いことなのですが、そうであれば、保護者はしっかりと準備した上でサポートしてあげてほしいと思います。
コメント