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「居酒屋で吐きたくなったら女子トイレを使えるか」「制止されて吐いたら誰の責任か」投稿が話題に、法的には?

酔って吐きそうになったら、男性でも女性トイレを使ってよいのか――。SNS上で先日、こんなテーマをめぐって議論が行われました。「そこまで飲んだ本人が悪い」との意見もありますが、法的にどう扱われるのでしょうか。

男性でも女性トイレを使える?

 SNS上で先日「酔って吐きそうになった男性が女性トイレを使ってもよいのか」について議論が交わされました。きっかけは「『居酒屋で吐きそうになり男性トイレが空いておらず女性トイレを使うのは違法なのか、また店員に女性トイレの使用を止められそのまま吐いてしまい他の客の物を汚してしまったら店の責任ではないのか?』って弁護士相談の記事」を見た、という趣旨の投稿。投稿者は「吐くまで飲むてめえの責任じゃねえか」としていますが、「法解釈の問題としては非常に面白い題目だと思う」「それほどまでに飲まされた(強要された)としたら、飲ませた方の責任になるのでしょうか」「呑んで吐く場合その人の問題でしょうけど、体調不良で吐く場合はまた変わってくるでしょうね…」など、さまざまな声が上がっています。

 こうしたケースで、男性が女性トイレを使うことに法的問題はないのでしょうか。オトナンサー編集部では、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「のぞき」などの目的なら軽犯罪法違反も

Q.そもそも「男性が女性トイレを使う(または、その逆)」ことは違法でしょうか。

牧野さん「まず、事業所や事務所のトイレを男性用と女性用に区分することは、労働安全衛生法と関連規則に定められており、罰則(6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)もあります。しかし、これは事業者に対するものであり、トイレを使用する客の行動に関するものではありません。ただし、男性が女子トイレに『のぞき』など違法な目的で侵入すると、軽犯罪法に触れる可能性があります。同法第1条23号は『正当な理由がなく人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者について拘留または科料に処する』としているからです。裏を返すと、酔って吐きそうになり、女性トイレを使うことは『のぞき』など違法な目的ではないので、違法とはならないでしょう」

Q.仮にトイレを使用できずに店内で吐き、ほかの客に損害が及んだ場合、その責任は誰にありますか。

牧野さん「吐いてほかの客に損害を与えた本人は、当然ですが、損害を受けた客に対して発生した損害の賠償(クリーニング代や精神的な損害に対する慰謝料など)をしなければなりません。民法709条の不法行為に該当するからです。他方で、お店側の民事責任(管理責任)ですが、お店には空いているトイレを使用させたり、非常時のビニール袋や洗面器を用意したりして(以前は長距離電車やバスには必ず備え付けてあった)、ほかの客に被害が及ばないような措置を講じる義務があるでしょう。この措置義務に違反した場合、お店側にも過失があったとみなされて民法上の不法行為に該当し、店舗管理者は加害者(吐いた本人)と連帯して、ほかの客の損害を賠償する責任を負う可能性があります」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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