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危ない!とヒヤリも…歩道を走る「自転車」、なぜ取り締まられない?

自転車に乗って歩道を走る人をよく見かけます。こうした行為は原則的には違法ですが、警察の取り締まりを受けることはありません。なぜでしょうか。

自転車の歩道走行は違法でも…
自転車の歩道走行は違法でも…

 歩道を歩いていると、横を自転車が追い抜いたり、反対側から来た自転車とすれ違ったりするのは日常の光景です。しかし、そもそも、自転車は道路交通法上ではバイクと同じ「軽車両扱い」であり、歩道ではなく車道を走らないといけないルールのはずです。自転車で歩道を走っても、なぜ、警察の取り締まりを受けないのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

例外あり、刑事罰に適さない面も

Q.道路交通法では、自転車は車道を走るように定められているのは本当ですか。

佐藤さん「本当です。道路交通法では、自転車は『軽車両』とされているため(2条11号)、歩道と車道の区別のある道路において、原則、車道を通行しなければならないと定められています(17条1項)。違反すると『3月以下の懲役、または、5万円以下の罰金』に処される可能性があります(119条2号の2)」

Q.自転車が歩道を走ってもよいという例外はあるのですか。

佐藤さん「あります。まず、道路標識等により、歩道を通行することができるとされている場合は歩道を走ることができます(同法63条の4第1項1号)。また、自転車の運転者が13歳未満、または70歳以上の者や、車道を通行することに支障を生ずる程度の身体に障害を有する者の場合、歩道を走れます(63条の4第1項2号、道路交通法施行令26条)。

その他、車道や交通の状況に照らして、自転車の通行の安全確保のため、歩道を通行することがやむを得ない場合にも歩道を走ることができます(63条の4第1項3号)。『やむを得ない場合』とは例えば、車道が狭く、自動車の交通量が著しく多い場合や、道路工事や駐車車両のせいで車道を通行することが困難な場合などです。

ただし、こうした例外に当たる場合であっても、自転車は車道寄りを徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げるときは一時停止しなければなりません(63条の4第2項)。これに違反すれば、2万円以下の罰金、または科料に処される可能性があります(121条1項5号)」

Q.歩道を自転車で走っても、警察が取り締まる場面を見たことがありません。なぜ、警察の取り締まりを受けないのでしょうか。

佐藤さん「自転車事故やマナー違反が社会問題となる中、2006年ごろから、自転車の違法運転に対する警察の取り締まりは強化されています。しかし、歩道通行違反で警察が取り締まり、検察が起訴するケースは極めて少ないでしょう。

不十分な取り締まりにとどまっている理由の一つとして、自転車の場合、反則金支払いで刑事手続きが免除される『交通反則切符』の制度がなく、軽い違反をした場合でも刑事手続きに入ることになり、有罪となれば前科がついてしまうことが挙げられます。ルールをよく知らずに歩道を走ってしまった人など刑事罰に適さないケースも多く、他の犯罪とのバランスも考えて、取り締まりや起訴に消極的になっているのでしょう。

そのため、2015年6月1日に施行された改正道路交通法により、『自転車運転者講習制度』が始まり、歩道通行などの一定の危険行為を過去3年以内に2回以上繰り返した運転者を対象に、各都道府県の公安委員会が講習の受講を命じることができるようになりました。受講命令に違反すれば、5万円以下の罰金が科されます。

また現在、警察庁は自転車運転の取り締まりについて、新たな違反金制度を作ろうと検討を進めています。刑事罰とはせず、前科がつかない制度にすることで、交通違反の実態に応じた取り締まりをしやすくし、多くの違反者の責任を問えるようにする狙いです」

Q.自転車の違法運転の取り締まり件数はどれくらい増えているのでしょうか。自転車の運転のルールについて、道路交通法がどのような方向性で改正されればよいと思われますか。

佐藤さん「先述したように、2006年ごろから、自転車の違法運転に対する取り締まりは強化されており、2020年の摘発は2万5465件で2006年と比べて40倍超に増えています。また、『自転車運転者講習制度』が作られたり、新たな違反金制度が検討されたりと、より実態に合った取り締まりを行う方向で道路交通法の改正が議論されています。

安全な交通環境を守るため、自転車の車道走行のルールを周知し、悪質な違反に対しては厳しく、軽い違反に対してはそれに見合った取り締まりを行える方向で法改正がなされることが望ましいと考えます」

Q.例えば、制限速度が時速40キロの道路をその制限速度を守って走っている車は、肌感覚ではありますが少ないように思います。道路交通法は刑法など他の法律とは違い、厳密に定められた規定を守らせるものではないのでしょうか。

佐藤さん「道路交通法は道路における危険を防止し、交通の安全を守ることなどを目的とする法律です(同法1条)。その目的は非常に重要であり、『道路交通法の定めなら厳密に守らなくてよい』というものではありません。あらゆる道路で起こる、あらゆる速度違反などをすべて取り締まることは現実的に難しいですが、各都道府県の警察は『速度違反取り締まり強化日』を設けて周知するなど、法で定められた交通ルールをしっかり守ってもらうよう取り組んでいます。

交通事故は加害者、被害者双方の人生を狂わせますので、日々、きちんと交通ルールを守ることが大切です」

(オトナンサー編集部)

佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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