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子どもの花粉症、対策は「避ける」「緩和」「免疫療法」【ぼくの小児クリニックにようこそ】

千葉市で小児クリニックを構えている医師である著者が、子どもたちの病気を診てきた経験をつづります。

子どもの花粉症、どう対応する?
子どもの花粉症、どう対応する?

 スギ花粉は2月ごろから飛び始めて、5月の大型連休を過ぎる頃まで続きます。そこで花粉症が治まるかと思うと、今度はヒノキ花粉の飛散がピークになります。今日もクリニックに花粉症のお子さんがやってきました。

「先生、薬を飲んでもなかなかよくならないんです。何か工夫はないでしょうか?」

「第2世代抗ヒスタミン薬も、抗ロイコトリエン薬も飲んでいますよね。ステロイドの点鼻も、抗ヒスタミン薬の点眼もしていますね。じゃあ、薬以外でもう少し工夫してみましょう」

 私はお母さんに、花粉症に対する3つの対策を説明しました。

【対策その1】花粉を避ける

 よく晴れて気温が高い日は花粉が多く飛びます。そして、雨上がりの翌日で気温が高くなってくると、花粉はいよいよたくさん舞います。つまり、お子さんが外遊びをしたい日は、花粉がたくさん飛んでいる日なのです。もちろん、風が強い日も要注意です。

 出掛けるのであれば、厳重な防御が重要です。帽子、マスク、ツルツル素材の化学繊維の上着、そしてゴーグル型の眼鏡(「子ども用」「花粉対策」「眼鏡」で検索してください)。女の子は髪の毛を束ねるといいかもしれません。

 そして、帰宅時には玄関先で花粉を払うことが重要です。お子さんはトントントンと足踏みをして、保護者はお子さんの体の表面に付いた花粉を払ってください。上着などにはブラシをかけてもいいでしょう。

 家の中に入ったらすぐに、うがい・手洗い・洗顔をしてください。空気清浄機は有効です。積極的に活用してください。その代わり、窓を開けての換気は最小限にしてくださいね。

【対策その2】症状を緩和する

 スギ花粉が飛ぶ時期は空気が乾燥しています。すると、鼻の粘膜も乾燥します。乾燥した鼻粘膜は風邪をひきやすい(ウイルスに感染しやすい)だけでなく、アレルギー反応も起こしやすいと考えられています。従って、加湿が重要です。積極的に加湿器を使ってください。ただし、湿度が60%を超えるとカビやダニが増えるので、50~55%を目安に設定するといいと思います。

 目のかゆみや鼻詰まりは本当にうっとうしいですよね。冷たいタオルを目の上に乗せると、かゆみはかなり取れます。鼻詰まりも、蒸しタオルを鼻にあてがうと楽になることがあります。

 もう一つ工夫できることがあります。それはワセリンを塗ることです。目の周囲や鼻の下、鼻の穴の中にワセリンを塗ってみてください。花粉がワセリンに付着するので、アレルギー症状を抑えられる可能性があります。ワセリンは市販のもので大丈夫です。

【対策その3】舌下免疫療法

 5歳になると、舌下免疫療法が保険適用になります。これは、スギ花粉(ダニもあります)の成分を自宅で毎日、舌の下に入れて、お子さんの体をスギ花粉に「慣れた」状態にしてしまう方法です。根本的な治療といえるかもしれません。

 そんな素晴らしい治療法ならばすぐに始めたい? ちょっと待ってください。この治療法にも欠点がないわけではありません。

 まず、治療に3年間かかること。そして、3年かけても全員が治るわけではないこと。さらに、まれとはされていますが、スギ花粉を体に入れることでアナフィラキシーショックを起こすリスクがあることです。従って、舌下免疫療法を実施している開業医はあまり多くありません。

 もし希望するのであれば、主治医の先生とよく相談してくださいね。大学病院などでやってくれるはずです。

(小児外科医・作家 松永正訓)

松永正訓(まつなが・ただし)

小児外科医、作家

1961年東京都生まれ。1987年千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より「松永クリニック小児科・小児外科」院長。「運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語」で2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社)などがある。

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