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脱水が怖い ウイルス性胃腸炎の対処法【ぼくの小児クリニックにようこそ】

千葉市で小児クリニックを構えている医師である著者が、子どもたちの病気を診てきた経験をつづります。

手洗いの習慣付けも大切
手洗いの習慣付けも大切

 今日も、ウイルス性胃腸炎のお子さんを連れたお母さんがクリニックにやって来ました。診察が終わった後で、お母さんが質問してきました。

「自宅では何に気を付けたらいいでしょうか? 脱水(症状)が怖いって聞いたんですけど」

「そうですね。確かにこの病気は、どうやって脱水に対応するかということと、家庭内でいかに感染を広げないかという2点が大事です」

経口補水液や点滴が必要な場合も

 嘔吐(おうと)や下痢が激しく続いているお子さんは、目が落ちくぼみ、唇がカサカサになり、泣いても涙が出ず、よだれが流れなくなり、尿も減少あるいは出なくなります。脱水が始まっている兆候です。0歳児の脱水は、入院になると考えた方がいいでしょう。1~2歳児は脱水が進行する前に、なるべく早く手を打つ必要があります。

「人間は水でできている」といわれます。実際、成人の体重のおよそ60%が水分です。一方、子どもの場合は70%が水分です。子どもは体内に水分をたくさん持っていますが、脱水に強いかというと逆です。子どもの体は生命を維持するために多量の水を必要としているからです。つまり、水が不足すると、成人に比べて子どもの方が脱水に陥りやすいということになります。

 脱水で失うのは、水だけではありません。「電解質=塩化ナトリウム=塩」も失います。嘔吐・下痢がひどいときに水を飲ませると、血液中のナトリウム濃度が低下して「低ナトリウム血症」になり、激しい疲労感や虚脱感に襲われます。重度の場合は、けいれんを来すこともあります。

 従って、水・白湯(さゆ)・お茶などを飲ませてはいけません。スポーツドリンクも、軽症のときを除いて原則的には使用しません。特に、重症のときは危険です。「スポーツドリンクを水で割って飲ませました」と保護者から言われることがありますが、これは真逆のことをしていることになります。やってはいけません。

 嘔吐・下痢が激しく、既に脱水となっている場合は点滴を受けるか、経口補水液を飲む必要があります。経口補水液は電解質濃度が高く、脱水に効果的ですが、味がしょっぱいために飲みにくいことが欠点です。

何度も丁寧に手を洗う習慣を

 ウイルス性胃腸炎を広げない最善の方法は、手をしっかりと洗うことです。家庭で毎日、何度も丁寧に手を洗う習慣を確立してください。せっけんを使って十分にこすり、たくさんの流水で洗い流してください。せっけん洗いに30秒、流水洗いに30秒かけてください。タオルは個人ごとに分けて使ってくださいね。

 お子さんが嘔吐してしまった場合、吐しゃ物はなるべく早く処理すべきです。乾燥させていけません。処理の際は、使い捨てのマスクと手袋を着けてください。エプロンもあった方がいいです。ペーパータオルを使って吐いたものを集め、ペーパータオルごとビニール袋へ入れてください。

 次亜塩素酸ナトリウム液はありますか? 身近な市販商品では例えば、「キッチンハイター」が次亜塩素酸ナトリウム液で、6%濃度のハイター8ミリリットルを水500ミリリットルに入れて薄めると、濃度が約0.1%になります。薄めた液をビニール袋の中に入れて、しっかりと口を縛り、破棄してください。

 汚れた衣服は熱湯消毒をします。85度以上の熱湯に最低1分は浸してください。白い衣服なら、0.1%のハイターを使ってもいいでしょう。カーペットは次亜塩素酸ナトリウム液を使うと漂白されてしまうので、それは知っておいてくださいね。

(小児外科医・作家 松永正訓)

松永正訓(まつなが・ただし)

小児外科医、作家

1961年東京都生まれ。1987年千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より「松永クリニック小児科・小児外科」院長。「運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語」で2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社)などがある。

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