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運動習慣あってもリスクは消えない…「座りっぱなし」が“がん”招く? 医師が説く健康被害とは

日常生活での座り過ぎが招く危険な病気について、消化器内科医に聞きました。

座る時間が長いと発症しやすい病気とは?
座る時間が長いと発症しやすい病気とは?

 デスクワークや車の運転などで座る時間が長い人は多いのではないでしょうか。座り過ぎると筋力が低下し、太りやすくなるだけでなく、さまざまな病気の発症リスクを上げるといわれています。日常生活での座り過ぎが招く危険な病気について、半蔵門 渡海消化器・内視鏡クリニック(東京都千代田区)院長で消化器内科医の渡海義隆さんに聞きました。

運動習慣があっても座る時間が長いとがんリスク増

Q.デスクワークなどで座りっぱなしの生活を続けると、体にどのようなリスクが生じるのでしょうか。座りっぱなしにより、発症のリスクが上がる病気の種類も含めて、教えてください。

渡海さん「デスクワークや車移動が増えた現代では、1日の多くを座って過ごす人も少なくありません。実際、国際研究では日本は世界でも特に座位時間が長い国の一つと報告されています(Bauman A et al.,Lancet.2011)。

近年、長時間座り続ける生活はさまざまな病気のリスクと関連することが指摘されています。特に消化器領域では、大腸がん(結腸がん)や脂肪肝、便秘、痔などとの関連が指摘されています。順番に説明します」

■結腸がん
長時間の座位行動と関連が示されている代表的な病気の一つが大腸がん、特に結腸がんです。

これまでの研究では、テレビ視聴時間(座ってテレビを見る時間)、仕事中の座位時間、1日の総座位時間のいずれもが大腸がんリスクの上昇と関連する可能性が示されています(Markozannes G et al.,Int J Cancer.2024)。

過去に独立して実施された複数の研究結果を集めて統合し、それらを用いて解析を行う「メタ解析」と呼ばれる方法があります。このメタ解析では、座位時間が1日2時間増えるごとに大腸がんリスクが段階的に上昇する可能性が報告されています(Ma P et al., Medicine. 2017)。

研究結果を詳しく見ると「結腸がん:関連が比較的一貫して認められる」「直腸がん:関連は明確ではない」という結果です(Schmid D & Leitzmann MF., J Natl Cancer Inst. 2014)。

つまり、「長時間座る生活は、少なくとも結腸がんリスクの上昇と関連している可能性が高い」と結論づけることができます。

Q.なぜ座り過ぎで結腸がんのリスクが上がるのでしょうか。

渡海さん「長時間座る生活が結腸がんリスクと関連する理由として、いくつかの要因が考えられています。その理由の一つとして考えられているのが、腸の動き、いわゆる蠕動(ぜんどう)運動の低下です。

身体活動が少ないと腸の蠕動運動が低下し、便の腸内滞留時間が長くなる可能性があります。便が腸内に長くとどまると、腸粘膜が発がん物質にさらされる時間が長くなり、これが大腸がん発生の一因になる可能性が指摘されています(World Cancer Research Fund/AICR Continuous Update Project)。

実際に、身体活動量が多い人では腸管通過時間(colonic transit time)が短い傾向が報告されており、身体活動は腸の動きを維持する上でも重要と考えられています(Dukas L et al.,Gut. 2003)。

つまり、体を動かすことは単に『運動不足を解消する』というだけでなく、腸の動きを保ち、発がん物質が腸粘膜に接触する時間を短くする可能性があるという点でも重要と考えられます。

一方で、長時間座る行動そのものも大腸がんリスクと関連する可能性が指摘されています。

例えば米国の大規模コホート研究(Nurses’Health Study)では、運動習慣がある人でも座っている時間が長い人は結腸がんリスクが高い可能性が示されています(Schmid D & Leitzmann MF., J Natl Cancer Inst. 2014)。

つまり、長時間座ること自体が結腸がんの独立したリスク要因である可能性があります。そのため、健康維持のためには『運動すること』と『長く座り続けないこと』の両方が重要と考えられています。夜にジムに行くからといって日中の座りっぱなしを帳消しにできるわけではありません。

長時間の座位行動は、『血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなる』『内臓脂肪増加』『不健康な食行動』などを介して発がんリスクが上昇する可能性も示唆されています(Hermelink R et al.,Eur J Epidemiol. 2022)」

Q.日常生活で座る時間が長いと、がん以外にはどのような健康被害が生じる可能性がありますか。

渡海さん「主に脂肪肝、便秘、痔が挙げられます」

■脂肪肝(MASLD)
長時間座る生活は、近年増えている脂肪肝(MASLD:代謝異常関連脂肪性肝疾患)とも関連しています。

身体活動量が少ないと、エネルギー消費低下、内臓脂肪増加、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が生じ、脂肪肝の発症につながります。

最近の研究でも、身体活動が少なく座位時間が長い人ほどMASLDのリスクが高いことが示されています(Frontiers in Nutrition. 2025)。

脂肪肝の初期は症状がほとんどありませんが、進行すると、肝炎や肝硬変、肝がんへ進展する可能性があります。

■便秘・腹部膨満
長時間座る生活は腸の蠕動運動を低下させ、その結果便秘や腹部膨満を起こしやすくなります。

身体活動量が少ない人では便秘の頻度が高く(Bharucha AE et al., Gastroenterology. 2013)、身体活動量が多い人ほど腸管通過時間が短い傾向が報告されており(Dukas L et al., Gut. 2003)、運動習慣は便秘改善に有効とされています。

最近のレビューでも、身体活動の低下は消化管機能低下や便秘と関連する可能性が示唆されています(World J Gastroenterol. 2024)。

■痔(痔核)
長時間座る生活は痔のリスクにもなります。理由として、肛門周囲の血流うっ滞、便秘によるいきみ、腹圧上昇などが挙げられます。

痔の疫学研究でも、長時間座る生活やトイレに長く座る習慣は、痔の悪化要因とされています。(Riss S et al., Int J Colorectal Dis. 2012)。

近年問題になっているのが、トイレでスマホを見る習慣です。排便後も長く座ることで肛門の血流が悪くなり、痔を悪化させる可能性があります。

(オトナンサー編集部)

【要注意】えっ…ヤバっ! これが「座りっぱなし」が招く“恐ろしい病気”です!

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渡海義隆(とかい・よしたか)

半蔵門 渡海消化器・内視鏡クリニック院長、消化器内科医

2008年筑波大学医学専門学群(現・筑波大学医学群医学類)卒業。2008年4月がん・感染症センター都立駒込病院にて研修医、2017年4月がん研究会有明病院消化器内科、2021年4月より上部消化管内科医長、2023年9月より頭頸部がん低侵襲治療センター兼務。患者さんともっと近くでかかわりたいという思いと、内視鏡治療可能な段階での消化管がんの早期発見を患者さんに提供したいという思いから2024年に半蔵門 渡海消化器内視鏡クリニックを開院。内視鏡診断・治療をはじめ、幅広い消化器疾患の診療に従事してきた豊富な経験を活かし「楽だけではない、質の高い内視鏡検査・消化器診療」を掲げ診療にあたっている。日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会学術評議員。半蔵門 渡海消化器内視鏡クリニック(https://tokai-naishikyo.jp/)。

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