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「自律神経失調症」とはどのような病気か プロ野球選手が発症、一般人も増加?

プロ野球選手で「自律神経失調症」に悩まされる人が増えています。どのような病気なのでしょうか。

米大リーグでも活躍した川崎宗則氏(2016年4月、AFP=時事)
米大リーグでも活躍した川崎宗則氏(2016年4月、AFP=時事)

 3月のプロ野球開幕に向け、春季キャンプが始まりました。各選手はトレーニングに励んでいますが、近年、選手の間で自律神経系の病気に悩まされる人が相次いでいます。2018年3月、川崎宗則氏が「自律神経の病気」を理由に福岡ソフトバンクホークスを退団したほか、昨年はソフトバンクの中村晃外野手、埼玉西武ライオンズの多和田真三郎投手が「自律神経失調症」を発症したことを公表しています。

 また、一般のビジネスマンが発症するケースも増えており、決して人ごとではありません。そもそも、自律神経失調症とはどのような病気なのでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

ストレスで体がまいった状態

Q.自律神経失調症の主な症状、発症する原因は。

田中さん「自律神経失調症は分かりやすく言うと、ストレスによって体がまいった状態です。

医学的に説明すると、自律神経には、活動しているときに働く交感神経とリラックスしているときに働く副交感神経があります。私たちの体は平常時、交感神経と副交感神経がバランスをとって機能しています。ところが、心身に過剰なストレスがかかると、交感神経が異常興奮した状態、つまり、自律神経失調の状態に陥ってさまざまな身体症状がみられるようになります。

具体的には、動悸(どうき)、息切れ、過呼吸、食欲の減退、吐き気、めまい、頭痛、睡眠障害などです。これらの症状のために日常生活に支障が出て、病院で問診や精密検査を行っても体の病気が発見されなかった場合、自律神経失調症と診断されることが多いです」

Q.自律神経失調症になると、憂鬱(ゆううつ)になることもあると聞いたことがありますが、他の病気と間違えられることはあるのでしょうか。

田中さん「不安、抑うつなどの精神症状がみられることもありますが、問診や精密検査を行った結果、うつ病などの精神障害が発見されなかった場合に自律神経失調症と診断されます。つまり、自律神経失調の症状はさまざまな心身の病気に広くみられますが、自律神経失調『症』というのは、そのようなさまざまな身体の病気が存在しない状態につけられる病名です。

うつ病でも、食欲の減退、睡眠障害を中心に先述のような自律神経失調の症状がみられますが、この場合はあくまで『うつ病』であって、自律神経失調症とは呼ばないということです。ちなみに『パニック障害』でも動悸、息切れなどの自律神経失調の症状がみられますが、この場合は『パニック障害』であって、自律神経失調症とは呼びません」

Q.自律神経失調症を疑って受診すべきと判断する基準はありますか。また、受診する際は、どの診療科がよいのでしょうか。

田中さん「さまざまな身体症状のため日常生活に支障が出て、学校に行けない、仕事や家事ができない状態が1週間も続くようなら、ぜひ心療内科か総合診療科を受診することをおすすめします。例えば、採血、レントゲン、心電図などの精密検査を受けることができ、いろいろな診療科があるような大きな病院(総合病院、大学病院など)を選ぶのがよいと思います。

精神科医の立場から言うと、いきなり精神科のクリニックを受診することは反対です。採血などの検査を受けることができないクリニックがほとんどだからです」

Q.自律神経失調症の治療はどのように行うのでしょうか。

田中さん「自律神経失調症にかかった人は、交感神経と副交感神経のバランスが崩れている状態のため、それらのバランスを回復させる必要があります。交感神経が異常興奮している状態をなだめるため、何とか副交感神経が機能するようにしていかなければなりません。

これまで日本では、不安、緊張をほぐすために、抗不安薬が漫然と長期に処方されることが多かったのですが、近年は抗不安薬の依存性の問題が指摘されるようになり、以前ほど積極的に処方されなくなってきました。

薬物療法よりもリラクセーションの方法を知り、日々実践してもらうことが何よりも大切です。リラクセーションに関してはいろいろな方法が知られています。ご自身の心身の感覚に合ったものを選択し、あまりこだわりすぎずに気楽に取り組んでみるとよいでしょう。

意外に見落とされがちですが、交感神経を興奮させる作用のあるカフェイン、タバコなどの摂取を減らしたり、止めたりすることも重要です。日々の生活習慣を見直し、リラックスできるようなものを増やして、興奮作用のあるものを除去する工夫を継続するとよいでしょう」

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田中伸一郎(たなか・しんいちろう)

医師(精神科専門医)・公認心理師

1974年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。赤光会斎藤病院、東京大学医学部付属病院精神神経科、杏林大学医学部精神神経科学教室などを経て、現在は、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科准教授。「誰もがこころの問題を理解し、互いに助け合うことのできる社会づくり」を目指し、精神医療の最前線で老若男女の患者を日々診療しながら、メディアを通じて正しい知識を普及すべく活動の場を広げている。

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