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田村亮さん、丸山穂高議員…「適応障害」ってどんな病気? うつ病との違いは?

田村亮さんや丸山穂高衆院議員、河井案里参院議員が患ったとされる「適応障害」。一体どのような病気なのでしょうか。

(左から)田村亮さん、丸山穂高衆院議員、河井案里参院議員(2019年7月、同5月、同8月、いずれも時事)
(左から)田村亮さん、丸山穂高衆院議員、河井案里参院議員(2019年7月、同5月、同8月、いずれも時事)

 お笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんや、NHKから国民を守る党の丸山穂高衆院議員、自民党の河井案里参院議員が患ったとされる「適応障害」。よく聞く病名ではありますが、どのような病気で、同じく精神疾患の一つである「うつ病」とは、何が違うのでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

「心がくじけた状態」、自殺のリスクも

Q.適応障害とは、どのような病気でしょうか。

田中さん「適応障害とは、わかりやすく言うと、ストレスによって心がくじけた状態です。医学的には、本人の特性(考え方、生き方を含む)と環境との相互作用によって発症すると考えられています。

原因としては、恋愛、失恋、進学、就職、解雇、退職、1人暮らしの開始、結婚、離婚、妊娠、出産、身体疾患の発病など、さまざまな生活上の変化が挙げられます。もちろん、学校でのいじめ、職場でのハラスメントなどといった過度のストレスも原因となります。

適応障害では、そうしたストレスを受けてから数カ月以内に、うつ、不安、睡眠障害、食欲低下などの心身の不調が見られます。また、人によっては、いらいら、攻撃的な言動、過剰飲酒が見られる場合もあり、自殺行動のリスクもあります」

Q.治療はどのようにするのでしょうか。また、一般的にどのくらいの期間が治療にかかるのですか。

田中さん「治療はまず、『一体何が起こって、どのようにつらくなってきたのか』を話してもらうことから始めます。安心感や信頼感のある治療関係のもとでつらさを語ることは、それだけでも治療効果があるでしょう。その上で、睡眠時間を確保し、適度な運動をすすめ、ほどよいリラックスが得られるような生活指導を行います。

人によっては、職場などに宛てて診断書を作成し、数週間から1カ月程度の自宅療養を指示する場合もあります。環境的なストレスから離れることができれば、適応障害は投薬治療を行わなくても数カ月以内に速やかに回復するのが一般的です。

回復段階に入れば、適応障害を引き起こした本人の対処不全と適応力についても焦点を当てていきます。一体どのようにすれば、つらい状況を乗り越えることができるのか、あるいは、乗り越えることができないとしたらどうすればいいのか(本人の特性と環境の相互作用なので、必ずしも乗り越えられるとは限りません)を一緒に考えます」

Q.うつ病との違い、共通点を教えてください。

田中さん「先述したように、適応障害の症状にも『うつ』があり、睡眠障害、食欲低下などの身体症状も見られます。従って、症状の上では、適応障害とうつ病はかなり共通しているということになります。また、発症の仕方も、丁寧な診察によって『過度なストレスと本人の特性(考え方、生き方など)との相互作用』が明らかになってくると、適応障害とうつ病はかなり似通ってきます。

ただし、両者が重なり合うのは軽度のうつ病までです。中等度以上の本格的なうつ病を発症した場合、脳機能を改善させるための投薬治療が必要となるでしょう」

Q.適応障害で自殺のリスクがあるとのことですが、うつ病の場合も自殺に至る場合があります。適応障害とうつ病で、リスクの程度に違いはあるのでしょうか。

田中さん「先述したように、適応障害の場合にも自殺行動のリスクがあります。うつ病と同程度と言ってもよいかもしれません。というのも、過度なストレスにさらされ続けると、誰しも心が折れた状態に陥り、『つらい状況から抜け出すためには死ぬしかない』と考えてしまうからです。

いつもの余裕を取り戻し、自分の特性(考え方、生き方など)と環境がミスマッチを起こしていることに気付くことができれば、体勢を立て直せるでしょう。しかし、次から次へとストレスが襲ってくる状況では、広い視野を持って柔軟に対処することができません。自殺行為にまで至らずとも、攻撃的な言動が増えたり、大量に飲酒したり、危険な行動を起こしたりすることもあるので十分に注意が必要です」

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田中伸一郎(たなか・しんいちろう)

医師(精神科専門医)・公認心理師

1974年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。赤光会斎藤病院、東京大学医学部付属病院精神神経科、杏林大学医学部精神神経科学教室などを経て、現在は、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科准教授。「誰もがこころの問題を理解し、互いに助け合うことのできる社会づくり」を目指し、精神医療の最前線で老若男女の患者を日々診療しながら、メディアを通じて正しい知識を普及すべく活動の場を広げている。

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