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熱性けいれん 3割の子どもが再発、座薬を予防投薬する方法とは【ぼくの小児クリニックにようこそ】

千葉市で小児クリニックを構えている医師である著者が、子どもたちの病気を診てきた経験をつづります。

「ダイアップ座薬」の使い方とは?
「ダイアップ座薬」の使い方とは?

 子どもが高熱を出してけいれんを起こす「熱性けいれん」は、5分以内に治まるようであれば慌てる必要はないと、前回(12月7日)の記事でご紹介しました。ただ、熱性けいれんが悪い病気でないといっても、お子さんが熱性けいれんを起こす姿は二度と見たくないと思うのが当然です。一度、熱性けいれんを起こしたお子さんのうち、30%のお子さんが再発するといわれています。

 けいれんを止めるためには、「ダイアップ座薬」を肛門内に入れます。再発のリスクが高いと推定されるお子さんには、発熱が始まったらダイアップ座薬を予防的に使用するという方法が推奨されています。

再発リスクのある子ども向け

 2015年、日本小児神経学会がダイアップ座薬の予防投薬の基準を発表しています。この基準が将来にわたってずっと変わらないかというと、それは分かりません。ガイドラインというのは、数年ごとにデータを蓄積して再検討が加えられるため、変更されていくことがむしろ普通だからです。

 再発のリスクが高いのは、どのような熱性けいれんなのかは主治医の先生によく聞いてください。ここでは、代表的なリスク因子を挙げておきます。

・15分以上のけいれん、体の一部のけいれん、1日2回以上のけいれん
・以前から神経の異常や精神発達の遅れがある
・家族の中に、熱性けいれんの経験者や「てんかん」の人がいる
・生後12カ月未満の子のけいれん
・発熱後、1時間未満でけいれん
・38度未満でけいれん

 どうですか。ほとんどの人が、これらに当てはまらないのではないでしょうか。これらの因子がいくつあり、何回繰り返したかによって、ダイアップの予防投与を考えます。

 ダイアップ座薬を入れるタイミングは、お子さんの発熱が37.5度を超え、38度に向かって上昇しているときです。お子さんをオムツ交換をするような姿勢にして、座薬を一直線に肛門の奥に向かって差し込みます。座薬にはオイルを塗っておくといいでしょう。なければ、水でぬらすだけでもスムーズに入ります。

 先端がとがっていて痛そうに見える場合は、指の腹で温めて少し溶かしてください。座薬の深さは大人の人さし指の第1関節くらいの長さです。しっかり、深く入れないと、ツルンと出てきてしまいます。腸の粘膜が傷つくことはありません。

 熱が上がり切って38.5度を超えた場合、お子さんが熱でつらそうならば解熱剤を併用しても構いません。座薬でも内服薬でもどちらでも大丈夫です。ただし、座薬の場合、油脂がダイアップの薬効を阻害するため、ダイアップ座薬と解熱剤の座薬は30分以上の間隔を空けてください。内服薬の場合は投与間隔を気にする必要はありません。なお「解熱剤を使うと、薬の効果が切れたときにリバウンドで発熱し、けいれんを誘発する」という意見がありますが、俗説で正しくありません。

 ダイアップ座薬を入れて8時間が経過したとします。依然として38度以上の発熱が続いていたら、もう一回だけダイアップ座薬を入れてください。この2回で1セットと考え、これ以上は発熱が続いても(翌日になっても)、ダイアップ座薬は使用しません。

リスクを理解して使用を

 熱性けいれんは、生後6カ月から6歳までに見られます。ダイアップの予防投薬の目安は2年、あるいは6歳になるまでです。

 そして、ダイアップ座薬の予防投薬のリスクも知っておいてください。ダイアップは、けいれんを止めてしまうほど強力に脳の活動を抑えるので、猛烈な眠気に襲われますが、小児は大人に比べてこのような眠気を催す薬剤に強いため、睡眠に入らず、眠いまま頑張って歩き回ったり、興奮してしまったりすることもあります。また、転倒するなど大きな事故につながる危険もあります。ダイアップ座薬を入れたら、お子さんから目を離さないようにしてください。

 ダイアップ座薬の使用にはリスクがあるということをよく考えて、十分理解した上で主治医の指導の下に使ってくださいね。私もダイアップを予防投与するときは、たっぷりと時間をかけて保護者に説明しています。

(小児外科医・作家 松永正訓)

松永正訓(まつなが・ただし)

小児外科医、作家

1961年東京都生まれ。1987年千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より「松永クリニック小児科・小児外科」院長。「運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語」で2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社)などがある。

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