糖尿病患者は熱中症リスクが高い? 「どんなことに気を付けたら?」などの声、医師に聞く
「糖尿病患者は熱中症リスクが高い」と話題に。糖尿病と熱中症の関係について、医師に聞きました。

厚生労働省の「平成28年 国民健康・栄養調査」によると、日本の糖尿病有病者数は約1000万人と推量され、増加傾向にあります。
そんな中、SNS上などで先日、「糖尿病患者の熱中症リスク」について話題となりました。糖尿病を患っている人は脱水症状を引き起こしやすい上、摂取できる飲料の種類が限られるため熱中症のリスクが高いとされており、「家族に糖尿病の人がいるので心配」「糖尿病だから、スポーツドリンクが飲めなくてつらい」「どんなことに気を付けたらいいの?」など、さまざまな声が上がっています。
オトナンサー編集部では、糖尿病と熱中症の関係や適切な熱中症対策について、医師の市原由美江さんに聞きました。
スポーツドリンクや経口補水液の飲み過ぎに注意
Q.糖尿病を患っている人が、熱中症になりやすいのは事実でしょうか。
市原さん「糖尿病であっても、血糖値のコントロールがうまくできている状態では、多飲多尿の症状は出ないため、糖尿病による脱水は起こしません。逆に、血糖値のコントロールが悪いと脱水を引き起こします。
尿糖が出ると尿量が増えるため、のどが渇き、口渇のため多飲するとまた多尿となり、悪循環に陥ります。ちなみに、尿糖が出るのは、血糖値がだいたい180mg/dlを超えた時です。血糖コントロールの指標である『ヘモグロビンA1c』の8%に当たります(正常値は4.6~6.2%)。従って、糖尿病の人は血糖値のコントロールをしっかり行わないと、夏場に脱水を起こしやすく、熱中症にもかかりやすくなると言えます」
Q.糖尿病患者の熱中症対策の注意点とは。
市原さん「糖尿病の患者で夏場に多いのが、熱中症予防にスポーツドリンクばかり飲んで血糖コントロールを悪化させてしまうことです。スポーツドリンクは水分やミネラル、糖質を摂取するのには適していますが、糖質が多いため、糖尿病の患者には向きません。糖質量の少ないスポーツドリンクがあるのでそちらを利用してください。最近は、糖質制限中の人に向けたスポーツドリンクも市販されています。
また、猛暑が続く中、熱中症対策に経口補水液が盛んに推奨されていますが、これも注意が必要です。経口補水液は、スポーツドリンクよりも糖分の含有量は少ないですが、代わりに食塩が含まれています。その量はメーカーによって異なりますが、500ミリリットル当たり1.5グラムほどです。糖尿病の方だけでなく、高血圧や腎臓病で治療中の方は経口補水液を飲み過ぎないようにしてください。通常の水分補給は水やお茶で十分です」
Q.その他、糖尿病患者やその家族が意識すべき熱中症対策のポイントはありますか。
市原さん「糖尿病患者が熱中症を予防するには、まず血糖コントロールをよくすることです。その上で、こまめな水分摂取を心掛け、なるべく涼しい環境で無理をしないでください。熱中症になってしまった場合の行動は、健康な人と同じです。症状が軽く、意識がしっかりしているのであれば、涼しい場所に移動して水分を摂取し、安静にしましょう。
症状が強い場合や、意識がもうろうとしている場合などは、状況に応じて速やかに医療機関を受診させるか、救急車を呼んでください」
(ライフスタイルチーム)
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