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カフェで席の「横取り」行為、諦める?取り返す? 法的問題は

混雑しているカフェでは、注文前に店員から席の確保を促され、荷物などを希望の席に置きますが、確保した席を横取りされることもあります。この「横取り」する行為に、法的問題はないのでしょうか。

カフェの席、横取りされたら…
カフェの席、横取りされたら…

 混雑しているカフェに入店すると、店員から注文前に席の確保を求められることがあります。そうした場合、荷物やコートなどを希望の席に置いて確保するのですが、注文後、確保した席に戻ってきたとき、見ず知らずの人が荷物やコートなどを移動させ、座っているケースもあるようです。確保した席を「横取り」する行為に、法的問題はないのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

席取りは法的にも有効

Q.希望する席に、荷物やコートなどを置くと、その席を確保したと見なす“暗黙の了解”があるように思います。法的にも、席を確保したものと認められるのでしょうか。

佐藤さん「認められる可能性があります。法的には、希望する席に荷物やコートなどを置くことで、『占有権』を取得したと評価できる場合があるからです。

占有権は、『自己のためにする意思をもって物を所持すること』によって取得します(民法180条)。この『所持』とは、“物”に対する事実上の支配のことをいい、事実上の支配があるのかどうかは、社会通念、いわゆる常識によって決まります。

大手カフェチェーン店では、店舗が混雑している場合、注文前に席を取ることを店内飲食の客に勧めることも多いようです。そのため、客の間でも、『荷物やコートなどを置けば、自分の席として確保した』という認識が広まっていると言え、常識に照らして『事実上の支配』と認められる可能性があります。

従って、店側が事前の席取りをはっきりと禁じているような場合を除き、カフェでの席取りは、法的にも保護される可能性があります」

Q.荷物などを置いて席を確保したのに、それらを動かされ、席を横取りされるケースもあるようです。確保した席を横取りする行為に、法的問題はないのでしょうか。

佐藤さん「荷物などを無断で動かし、席を横取りすることは、先述した『占有権』の妨害に当たる可能性があり、許されないでしょう。仮に、店側が事前の席取りを禁じているにもかかわらず席取りする客がいて、その客の荷物を動かしたとしても、法律上、問題があります。

なぜなら、客は店の管理権を持っておらず、他人の荷物を勝手に動かす権限がないからです。荷物を動かしたい場合には、店に事情を説明し、対処してもらう必要があります。いずれにせよ、勝手に他人の物を動かすと、トラブルになる危険がありますので避けましょう」

Q.もし、荷物やコートなどを置いていたのに席を横取りされた場合、横取りした人に「私の席です」と言って、席を取り返そうとする行為は、違法性を問われるのでしょうか。

佐藤さん「自力で取り返すことは、法律上、禁じられています。法律上、『占有』を奪われた場合には、裁判所に訴えることで、返還を求められます(民法200条)。取り返す必要があるケースでは、自力で取り返すのではなく、訴えという正当な方法によることが求められているのです。

とはいえ、カフェで横取りされた席を取り返すため、裁判所に訴えるのは現実的ではありません。強引に取り返そうとせず、譲り合うか、店員にお願いして、仲裁してもらうなどの方法を検討しましょう」

Q.カフェの店員から先に席の確保を促されますが、置いた荷物などが盗まれるリスクもあります。席の確保を促され、荷物などが盗まれた場合、店側に責任を問えるのでしょうか。

佐藤さん「店側の責任を問うのは難しいでしょう。飲食店は、客から預かった荷物をなくしたり壊したりすれば、原則、損害賠償責任を負います(商法596条1項)。また、店に預けられた物でなくても、店側の不注意で荷物がなくなったり、壊れたりすれば、賠償責任を負います(同法同条2項)。

しかし、今回のケースでは、店に荷物を預けて、保管してもらっているわけではありません。席の確保を促しただけで、店側の不注意と評価するのは難しいと思います。

ただし、たびたび盗難被害が出ている死角になりやすい席にもかかわらず、見回り強化をしていないなど、店側の盗難防止体制に問題があれば、責任を問える可能性もあるでしょう」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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