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「おもちゃに興味示さず」「5歳で発達年齢は1歳半」 知的障害伴う自閉症の8歳息子の母が直面した「クリスマスプレゼント」選びの難しさ

実年齢と発達年齢に差がある子どもにプレゼントを贈るときは、どのような基準で選ぶとよいのでしょうか。知的障害を伴う自閉症の息子を育てるライターが解説します。

クリスマスプレゼントにあまり興味を示さなかった息子(筆者作)
クリスマスプレゼントにあまり興味を示さなかった息子(筆者作)

 今日はクリスマスイブです。子どもたちはどんなプレゼントをもらえるかとワクワクし、親たちはそんな子どもたちの姿をほほ笑ましく思う、幸せな季節ですね。しかし、知的障害を伴う自閉症の息子を育てる筆者にとって、クリスマスは、悩みの種でもありました。

 現在、息子は8歳ですが、発語がほとんどないため、「あれがほしい!」と訴えることができません。「発語がなくても選ぶことはできるだろう」と思うかもしれませんが、息子は何事にも興味が乏しく、強い熱意を持って欲しがることがほとんどないのです。

 自閉症というと、周りが見えなくなるほど一つのことに夢中になるお子さんを想像する人もいるかもしれません。

 しかし、息子のように知的障害を伴う子の中には、「すぐに飽きてしまう」「長く興味が続かない」というケースもあるのです。そのため、息子のプレゼント選びはいつも悩みました。「親としては、かわいいわが子にプレゼントを渡したい。でも、本人に適した物も本人が本当に欲しい物も分からない」という気持ちです。

 息子が幼少期の頃は、玩具店の前で欲しいおもちゃをねだっている子を見ては、何度もうらやましく思いました。さらに、4歳で息子の障害がはっきり分かるまでは、おもちゃのパッケージに記載されている「対象年齢」を見て、不安をかき立てられました。

「この年齢でこのおもちゃに興味を示さないということは、普通とは違うのかな?」

 後になってみればその予感は正しかったのですが、楽しいはずのおもちゃ選びでさえも悶々(もんもん)とした気持ちになるのは、寂しかった記憶があります。

おもちゃの「対象年齢」をどう捉えるか

 多くのおもちゃには、「対象年齢」が記載されていると思いますが、それが実年齢を指しているのか、発達検査を基に算出した「発達年齢」を指しているのか、考えたことはありますか。筆者も、最初は深く考えていませんでした。

 しかし、息子は5歳のときに発達年齢が1歳半程度と診断され、息子のように障害があって、実年齢と発達年齢が大きく離れた子どもの場合、「対象年齢」の把握を間違えると思わぬ危険が生じる可能性があると、次第に実感するようになりました。一方、危険がなかったとしても、まったく興味を持てずに無駄になってしまうことだってあるのです。

 例えば、実年齢はもっと上でも、発達年齢に合わせたおもちゃを買ったとします。息子には、昔から何でも口に入れてしまう特性がありました。そのため、息子が4~5歳のときに、対象年齢が1歳程度のおもちゃを口に入れてかめば、おもちゃは耐え切れずにつぶれてしまいます。

 柔らかい赤ちゃん用ブロックや歯固めなど、わが家にはそうしてつぶれていったおもちゃがたくさんありました。さらに息子の場合、手先は実年齢相当に器用だったため、予想外の方法で分解して細かい部品を取り出し、誤飲しようとしたこともありました。

 一般的に、3歳以上の子どもは、物を口に入れることがほとんどありません。そのため、対象年齢が3歳以上のおもちゃは、低年齢向けのおもちゃに比べ、細かい部品が一気に増えることが多いです。

 しかし、それを息子のような何でも口に入れる特性がある子に渡すと、誤飲の危険が生じます。そこで、対象年齢3歳以上のおもちゃは要注意と考え、たとえ購入したり他の人から頂いたりしても、付属の細かい部品は別の場所にしまうなどの対策を行っていました。

 さらに、本人が楽しめるかどうかという観点で考えても、発達が緩やかな子どもに対して対象年齢に応じたおもちゃを渡しても、理解が難しいかもしれません。

 先述のように、息子は5歳の時点で発達年齢が1歳半程度でしたが、やはり、仕組みを理解できるおもちゃの対象年齢の範囲も1歳程度かなと感じていました。

 特性は子どもによってそれぞれなので、一概には言えません。しかし、息子のように物を口に入れる特性がある子の場合、顎の力や歯の成長、誤飲の可能性などへの注意を払いながら興味を持てる物を選ぶことは、とても難しく感じました。

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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