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わが子が「厄介者」扱いされるケースも…発達障害児の親が「幼稚園・保育園」を選ぶときに大切なこと

もし、わが子が発達障害児だったら、どんな幼稚園や保育園を選ぶのがよいのでしょうか。自閉症児を育ててきた筆者が「園選び」に大切なことを伝えます。

発達障害児の「園選び」に大切なこととは…
発達障害児の「園選び」に大切なこととは…

 幼稚園や保育園の多くは、特別な配慮が必要な子どもに対して、特別支援学級のようなものは設置していません。もし、わが子が発達障害児だったら、どんな園を選べばよいのでしょうか。

ママ友から「運動会を休んでほしい」と言われた

 小学校に入学するまでは「義務教育」ではないので、幼稚園や保育園に入園させず、療育施設だけに子どもを行かせていても、「親が子どもに教育を受けさせる義務を怠っている」「子どもが、親から教育を受ける権利を奪われている」となることはありません。そのため、療育手帳を持っていなくても、受給者証をもらい、療育施設だけを利用する方法もあります。

 しかし実際は、小学校入学までは、週に1回程度は療育に通わせていても、在籍する子どもの大半が定型発達児の幼稚園、保育園に行かせている親御さんが多いのではないでしょうか。 そんな園で、あからさまに言葉にされずとも“歓迎しない雰囲気”を感じることもあるかもしれません。

 例えば、「ママ友からの理解がない」こと。“お受験系幼稚園”とは限りませんが、教育熱心な親御さんばかりが通う園で、手のかかる子がいると、他の保護者から「保育士がその子ばかりに関わっている」「うちの子の足を引っ張る厄介者」と思われてしまうケースが実際にあります。

 また園側に、障害に対する理解がない場合、親も子も苦しい思いをします。現在は昔と違い、障害者差別解消法により合理的配慮をしなくてはならないので、園側もあからさまに拒否することはできません。ただ、「障害のあるお子さんを積極的に受け入れています」という園がある一方で、「歓迎はしていません」という園もあります。

 これは知人の話ですが、何かトラブルが起きるたびに園から「迎えに来てください」と電話がかかってくるため、知人は携帯が鳴るたびにビクッとしていました。また、せっかく園に入れたのに「お母さまがいつも一緒に保育室内にいてください」と、加配の先生のようなことを要求されるケースも聞きます。

 さらに、発表会が“先生の指導力の成果発表の場”と化しており、子どものためになっていない園や、「発表会や運動会で成果を挙げることが最重要」となっている園もあります。「発表会で鍵盤ハーモニカを勝手に吹いてしまうため、音が出ないようにホースに小さな穴を開けられた」「ママ友から『あなたの子が参加したら、運動会でうちのクラスが勝てない。運動会を休んでほしい』と言われた」などは、実際に私の知人が経験したことです。それでも、「園から悪く思われないように」「周りに迷惑をかけないように」と猛特訓している親御さんもいます。

“自由”がわが子を戸惑わせることも

「ずっと自由に遊んでいていいんだよ」と言われたら、「伸び伸びできていいじゃないか」と、その一瞬は思うでしょう。私たち大人には「スケジュールが組み込まれる=窮屈」「自由=楽しい」という思い込みがあるからです。

 でも、私の自閉症の息子の場合は真逆で、自由な空間にポツンと置かれてしまうと、本人は見通しが立たず、不安になっていました。通っていた保育園は“自由で伸び伸び”ではなく、タイムスケジュールに従って「◯時からはお歌」「△時からは体操」「□時からはお絵描き」と決まっていて、息子にとっては1日の流れの見通しが立つため、比較的安定していました。

 小学校には時間割があり、「1時間目は算数、2時間目は国語」と見通しが立つ上、「これをやって、あれをやって」とプリントや制作課題を出されます。しかし、休み時間は「校庭で各自好きなように遊びましょう」「自由に友達と過ごしましょう」となるため、「好きなように」「自由に」に戸惑ってしまう子もいます。“自由で伸び伸び”の幼稚園や保育園は、小学校でいうところの「休み時間」が一日中続くようなものなのかもしれません。

 重要なのは、大人の固定観念を捨て、子どもの状態に合わせて最も居心地のよい園とは何かを考えること。「教育熱心な園で、子どもが刺激を受けて伸びるような気がするから」「親しいママ友の子が通っているから」「園バスが近所まで迎えに来てくれるから」「制服がかわいいから」「有名だから」「施設がきれいだから」といった理由ではなく、発達に課題のある子の保護者の話にじっくり耳を傾けてくれて、他の子と比較せず、「こうであらねばならない」基準を押し付けない園を選ぶことが大切だと思います。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【イラストで解説】「発達障害児」にみられることのある「5つの行動」

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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