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「混浴可」年齢引き下げ大歓迎 ただ、地域差やシングル家庭対応など課題も…

公衆浴場での「混浴」が認められる年齢を引き下げる動きが、各地で相次いでいます。この動き自体は望ましいと思われますが、果たして、引き下げるだけでよいのでしょうか。

混浴可能年齢を引き下げへ
混浴可能年齢を引き下げへ

 3月16日、東京都が、銭湯など公衆浴場での「混浴」が認められる年齢を「6歳以下」に引き下げる方針を固めたとの報道がありました。都では現状、混浴ができる年齢が「9歳以下」となっていますが、報道によると「子ども自身の羞恥心が出始める年齢」を考慮し、年齢の引き下げが望ましいとする国の通知に合わせた形で、「6歳以下(基本的に小学校入学前の幼児)」を基準とするようです。

「10歳以上の男女を混浴させないこと」と定めている現行の都条例が「7歳以上の男女を混浴させないこと」へと改正・施行されれば、父親が小学生の娘を連れて男湯へ、また、母親が小学生の息子を連れて女湯へ入ることができなくなります。

 この動きに私は大賛成です。父親と娘が男湯へ、また、母親と息子が女湯へ入っているのを公衆浴場で見掛けた経験がある人も多いと思いますが、小学校ではトイレも更衣室も男女で分かれていますし、体育の授業でプールに入るときは水着を着用するのですから、「銭湯に行ったら、同じクラスの男の子が素っ裸で女湯に入ってきて、娘がびっくりしていた」「親以上に子ども自身が混浴を嫌がっている」という声があるのは当然のことでしょう。

自治体によって違いも

 ただ、他の地域では引き続き、親子での混浴時に注意しなければなりません。東京都民にとっては、都内の銭湯での混浴がなくなったとしても、家族で行く温泉地は東京都外であることが多いからです。公衆浴場の配置基準や入浴者の衛生・風紀に必要な措置の基準は地方自治体ごとの「公衆浴場法施行条例」などで定められていますが、その内容は自治体によってばらつきがあり、混浴を禁止されている年齢基準にも違いがみられます。

 有名な温泉地が多い九州を例に挙げると、大分県は「10歳以上」の男女の混浴が禁止されています。福岡県と鹿児島県も「10歳以上」ですが、「7歳以上」にする条例改正案を現在、県議会に提案しています。長崎県も「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」へと条令を改正(施行は7月1日)。熊本県や宮崎県は以前から「8歳以上」と定めています。また、佐賀県は、県としては条例で年齢制限を設けていません。

 混浴禁止の年齢基準は都道府県単位だけでなく、市区町村の条例でも定めている場合があります。子ども連れの旅行の際は事前に、行き先の地域の条例に年齢基準があるかを調べたり、施設に問い合わせたりしておくのが望ましいと思います。

親の目と他人の目の違い

 私の息子は知的障害を伴う自閉症児です。私はシングルマザーなので、温泉旅館に行ったとき、息子とお風呂に入ってくれる夫もいませんでした。そのため、息子が小学生になっても私が女湯に連れていこうとして、旅館の人から、「お子さんは男湯に行ってください!」と注意されてしまったこともあります。

 多くの人が利用する公衆浴場では、親が「まだまだ幼いわが子」と思っている子どもでも、他人から見たら、「立派な男児」と見えるなど、親の目と他人の目とのズレが生じやすいと感じた出来事でした。

 子どもの「制限」の例だと、遊園地のアトラクションの場合は「身長制限」されていることが多いです。たとえ、年齢が10歳でも身長が低ければ、安全装置が適切に作動しない恐れがあり、重大な事故につながりかねないからです。

 これにならい、「銭湯も『身長が100センチ以上の人は混浴禁止』としたらどうか」という意見もあるようです。しかし、実際には背が高い幼児もいますし、体重があるために体格がよく、小学生に見える幼児もいます。こうした実情から、銭湯で身長制限を行うのは賢明とはいえず、やはり、年齢制限の基準を下げるのがよいと考えます。

 一方で、混浴可を幼児に限定すると、シングル家庭の場合、小学生が銭湯や温泉に行くことができないケースも当然出てくるでしょう。同性の親がいればよいのですが、母親が息子を、父親が娘をそれぞれ、浴場に連れていくことができなくなります。そのような場合は現状、内風呂付き客室や貸し切りの家族風呂が利用できる宿を選ぶなど「大浴場を利用しない」方法を選択するしかないと思います。

 子ども連れの親も他の利用者も日頃の疲れを癒やすために訪れた場所で、ヒヤヒヤしたり、不安になったりしながら、お風呂に入るのを避けたいのは当然ですし、現状は他の利用者に協力や理解を求めることが難しいからです。

 同性の親がおらず、小学1年生の子どもが1人で銭湯を利用できないケースへの対応として、今後、浴場で利用者の背中を流すサービスを行う江戸時代の職業「三助(さんすけ)」のようなサポートスタッフを利用できるといった、有料のオプションサービスの需要が高まってくるかもしれません。

「もれなく全員に配慮」というのは難しいことなのかもしれませんが、多様な家族の形、さまざまな事情を抱えた人に対応した宿泊施設の仕組みやサービスを望む声もあると思います。皆さんはどう、お感じになりますか。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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