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コロナ自粛解禁後、経営や人事に待っている「大変なこと」【就活・転職の常識を疑え】

就活や転職のさまざまな「常識」について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。今回は、コロナ禍で通常とは違う動きを迫られている人事担当者向けの話です。

人事担当者も例年にない対応をしている
人事担当者も例年にない対応をしている

 新型コロナウイルスの影響で対面での会社説明会や面接が難しくなり、就活生や転職希望者の戸惑いは大きいと思いますが、例年とは違う状況に戸惑っているのは、人事担当者も同様です。今回は、主に経営者や人事担当の皆さんに向けて、「コロナ後」も見据えた人事制度、働き方の構築についてお話します。就活生や転職希望者にとっても、志望先の企業がどう変わろうとしているのか見極める一助になれば幸いです。

「コロナ体制」からの復帰が難しい

 経営者や人事担当者の皆さんはこの数カ月間、コロナ禍への対応で大忙しだったのではないかと思います。急に外出自粛を求められ、テレワークを開始するために、ウェブ会議ツールの導入、勤怠ルールの設定、通信環境の整備、在宅勤務用のPC手配などなど、いろいろな変更を短期間で行わねばならず、それはそれは大変だったことと思います。

 ただ、バタバタしたという意味では大変だったと思うのですが、疫病による政府からの要請ということで、ある意味「どうしようもないこと」「やらねばならないこと」でもあるため、粛々と「やればできる」状態ではあったともいえます。

 しかし、それよりも、緊急事態宣言が解除されて自粛が徐々に緩和されていくにつれて、その後、どのような勤務体制に持っていくのか決めることの方が難しいと、筆者は思います。なぜなら、「こうしなければならない」と方針を示されることがなくなり、自分たちで考えて、意思決定をしなければならないからです。

 コロナ前の元の状態に完全に戻すという考え方もあるでしょうし、定着したテレワークを維持するという考え方もあるでしょう。そこには「絶対解」はありません。経営者や人事の皆さんが結論を出して、それを社員に展開・浸透させていく必要が生じるのです。

全員の希望を満たす選択肢はない

 まず、そもそも普段の業務をどうするかを決めなくてはなりません。テレワーク研究は、実は以前より行われており、どのような作業が向いているか、テレワークのメリット・デメリットなどについては、ある程度のことが既に分かっています。

 例えば、創造性の必要な作業は意外とオンラインコミュニケーションの方がよい(リアルの場よりも民主的にメンバーが等しく発言できることや、空気を読まなくて済むことなどが理由)とか、「報連相」のような情報共有や伝達については、リアルの場でのコミュニケーションがよい、などです。それらを踏まえて、自社の仕事や文化に合ったものを選んでいけば、「コロナ後の理想の働き方」は決まります。

 ところが、「合理的なもの」が「納得できるもの」「社員が希望するもの」とは限りません。例えば、仕事の観点からすれば、「うちはテレワークをやめて、普通に出社することを基本にしよう」と決めたとしても、テレワークのメリットを知ってしまった社員の中には、それに猛反発する人もいるでしょう。

「仕事上でデメリットがあっても、自分のワーク・ライフ・バランスからはテレワークがよい」という社員がテレワークの継続を望むのは当然です。

 逆に「テレワークを主とする」と決めたら、リアルの場で顔を突き合わせて働くことが好きな人は「そんな味気ない会社にいたくない」となりかねません。全員の希望を満たすような選択肢、全員が納得できる結論はあり得ないと言ってよいでしょう。

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曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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