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五輪マラソンゴール地点に熱中症対策の「氷風呂」、効果や心臓まひなど体への影響は?

2020年東京五輪の暑さ対策として、氷入りの水風呂や、かち割氷が想定されています。安全性はどうなのでしょうか。

MGCで氷を持って走る選手たち(2019年9月、時事、代表撮影)
MGCで氷を持って走る選手たち(2019年9月、時事、代表撮影)

 2020年東京五輪のマラソン日本代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が9月15日に開かれましたが、来年8月の本番も見据えた暑さ対策として、ゴール地点に氷入りの水風呂(アイスバス)が用意されました。この「氷風呂」を巡ってネット上では「心臓まひを起こさないの?」「命懸けのレース」「そもそも8月にマラソンやるのが無理なのでは」と疑念の声が上がっています。東京五輪・パラリンピック組織委員会と医師の見解を聞きました。

男子7人、女子3人がリカバリー用を利用

 まず、組織委戦略広報課に聞きました。

Q.MGCで熱中症の疑いがある選手用に、ゴール地点に氷風呂を用意したのは事実でしょうか。

担当者「事実です。熱中症対策の医療用として、緊急時の対応に使えるものを4台、選手がリカバリー目的で使うためのものとして3台のアイスバスを用意しました。医療用のアイスバス利用者はいませんでしたが、リカバリー用は男子7人、女子3人の選手が利用したと聞いています」

Q.五輪本番でも用意する予定でしょうか。

担当者「本番でも準備する予定です」

Q.ネット上では、「心臓まひを起こさないのだろうか?」と疑問の声が上がっています。

担当者「医師が選手の状態を医学的側面から評価して、使用の判断を行い、使用中も心拍数などを継続的に観察しています。医学的に安全な状態で使用されているものと解釈しています」

Q.レース中、選手にかち割氷(砕いた氷を袋詰めしたもの)も配布していましたが、今回の暑さ対策について組織委としての評価は。

担当者「組織委内各部署の視点からの評価を今後、取りまとめる予定です」

 次に、医師の市原由美江さんに聞きました。

Q.まず、真夏にマラソンを走ることの課題を教えてください。

市原さん「熱中症は、暑い環境にいることで熱が体の中にこもり、さらに脱水によって汗による熱の放散が十分できないために起こります。水分やミネラルの補給を十分に行ったとしても、真夏にマラソンをするという環境自体が熱中症を引き起こす可能性が高いため、時間帯を早める、または、夜にするなど環境の工夫が必要だと思います。特に暑い環境にない国の選手にとっては、体が暑さや湿気に慣れておらず、より熱中症のリスクが高くなります」

Q.2020年東京五輪のマラソンは、女子は来年8月2日、男子は8月9日のいずれも午前6時スタート予定です。

市原さん「私個人の印象としてお話しますが、私も朝、よく犬の散歩に行きますが、真夏の6時台はすでに暑い印象があります。4時台なら涼しいという感じです。もちろん、風や湿度の状態で変わるので何ともいえないかもしれませんし、アスリートと一般人のケースを同列には扱えないかもしれませんが、真夏の6時台が暑いのは事実です」

Q.熱中症、特に熱射病の原因と症状を教えてください。

市原さん「熱中症は、軽いものから重度のものまで症状がさまざまです。軽度から中等度の熱中症であれば、めまいや立ちくらみ、大量の発汗、頭痛、吐き気、倦怠(けんたい)感などの症状がみられます。重度のものは『熱射病』と呼ばれ、意識障害やけいれん、40度以上の発熱などの症状があります。軽度の症状の段階で暑さを避けたり水分やミネラル補給をしたりしないと、症状が進んで、熱射病になることがあります」

Q.熱中症、熱射病になった際、氷風呂(氷入りの水風呂)に入ることの効果は。心臓に負担がかかる恐れはないのでしょうか。

市原さん「熱射病の治療として、医療機関での点滴などに加えて体を冷やすことが必要なので、救急車を呼んでいる間に冷水で冷却することは大切です。五輪で想定しているように、医師が立ち会って心拍数などを測定し、その管理のもとに温度や時間を考えて実施しているのであれば問題ありません。

一方で、医師がいない状態で運動後、冷たい氷水に入ることは、健康な人でも不整脈を誘発する可能性があり、狭心症の人は発作を誘発する可能性があります。知識を持ったアスリートが温度や時間を決めて行う場合は別ですが、一般的には氷風呂に入るのではなく、全身を濡らすようにしましょう」

Q.MGCでは選手の暑さ対策として、かち割氷を配っていました。こちらの効果は。

市原さん「体温を直接的に下げてくれるので、暑さ対策としてよいと思います。常に携帯できるように手配されているとよいと思います」

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市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

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