「運転手さんに怒られるよ」「先生が言ってたよ」 発達障害児を育てる母が《他力本願のしつけだって悪くない》と考えるようになった理由
「バスで騒ぐと運転手さんに怒られるよ」。他人の存在を利用してわが子をしつける方法に疑問を持っていた筆者が、「他力本願のしつけも悪くない」と考えるようになった理由とは……。

子育てにおいて、「他力本願」や「責任転嫁」のしつけはよくない、と言われることがあります。例えば、「バスで騒ぐと運転手さんに怒られるよ」といった言い回し。これは「親が注意しているのではなく、他人の目があるから静かにしよう」と伝えていることになります。また、「運転手さんが怒らなかったら騒いでもいい」と誤学習してしまいます。
私自身、かつてはそうした言い回しに頼らない“王道のしつけ”が正しいと思い、自分の著書にもそう書いたことがありました。けれども、今は違う考えを持っています。子どもは、時に親の言葉より、赤の他人の言葉の方に耳を傾けます。そして、親の言葉が届かないとき、どうしても伝えたいことがあるとき、他人の力を借りることは決して間違いではないと感じています。
親の言葉が届かない現実
私の息子は現在24歳。知的障害を伴う自閉症で、強迫性障害も発症しています。私が命令口調や否定的な言葉を使うと、激しく怒り、自傷行為をします。
ある朝のこと。息子は電車の型番を書くことに夢中になり、朝食も食べずに時間がどんどん過ぎていきました。私は「遅刻するよ、早くご飯を食べて」と声をかけました。すると床を蹴り、腕をかみ、自傷が始まりました。
私はとっさに、「家を壊すと工事の人が来なきゃいけないかもね。『引っ越ししてください』って言われるかもしれないよ」と、他人の力を借りる言い方をしてしまいました。
すると、息子はふと不安そうな顔をし、「引っ越ししたくない」とつぶやきました。私はさらに「お母さんもこの家に住みたい。でも、壊れてしまったら仕方ないよね」と続けました。結果的に、息子の暴れはそこで収まりました。
これは「責任転嫁」と言われるかもしれません。でも、私の言葉では届かない状況で選んだ手段でした。
息子には強迫行為があり、通院して治療を受けています。例えば、電車を見に行く計画を立てたときのこと。息子は時刻表や運行情報が気になりすぎて、「本数が減ったらどうしよう」「変更されていたらどうしよう」と不安が次々に押し寄せ、確認行為が止まらなくなりました。そんなとき、主治医にお願いして、こう言ってもらいました。
「確認は2回までにしましょう。もし、不安がひどくなって入院することになったら、電車も見に行けなくなってしまいますよね」
主治医の診察は月に1度しかありませんが、私は普段の様子をメモして伝え、必要なメッセージを先生から口にしてもらうようにしています。白衣を着た医師の言葉の方が、息子にはずっと届きやすいのです。親ではない“第三者の声”には、特別な力があるように思います。
また高校時代、息子は爪を極端に短く切ってしまう「深爪」を繰り返していました。やめてほしくて私が注意しても、逆に怒りを爆発させるだけでした。
そのため、学校の先生から「手の爪は週に1回、足の爪は毎月15日に学校で切りましょう」と言ってもらいました。親の言葉には反発する息子も、先生の言葉なら素直に従いました。








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