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わが子の給食に6年間付き添い…知的障害児の進級先に「通常学級」を選ぶ親が知っておくべき「2つのこと」

障害のあるわが子が「通常学級」へ…親に知っておいてほしい「判断のポイント」を、自閉症児を育てた筆者が自身の経験をもとに伝えます。

障害児のわが子の学校・進級先選びをどうすべきか… ※画像はイメージ
障害児のわが子の学校・進級先選びをどうすべきか… ※画像はイメージ

 学校選びに正解・不正解はないと思いますが、障害児を持つ親として選んだ就学先、選択についてお話したいと思います。

 現在24歳の息子は知的障害のある自閉症です。2歳3カ月で正式に診断されました。次のような選択を経て、現在は企業で働いています。

・小学校1・2年生……特別支援学校
・小学校3~6年生……特別支援学級
・中学校……特別支援学級
・高校(高等部)……特別支援学校

 私は息子が生まれる前の1995年、特別支援学校の教員免許取得のため、実習生として特別支援学校に入っていました。その後、起業して20年間、学習塾を経営していました。塾では私自身も小学生のクラス(1年生~3年生)を担当し、算数と国語を教えていました。

 世の中にある学習塾の中には、受験を目的としているところも多くありますが、私がやっていた学習塾は基礎学力をつけることを目的とした場所でした。同時に、定型発達児であっても学校の授業のスピードが速すぎてついていけない子を指導する、補習塾的な側面もありました。

 実際、入会希望の保護者から「学校の担任の先生から、『全く勉強についていけていないので、塾にでも通って学力をつけてほしい』と個人面談で言われたので、入会をしたい」と言われたこともありました。

 この話を聞いて「学校の先生、無責任すぎる!」と感じるかもしれませんが、実際に学校の先生は、学年末までに教科書を最後まで終えなくてはなりません。「クラスの子全員に理解させるために、教科書は3分の2の範囲までしか進んでいません」ということは許されないのです。

 熱意がある先生は、早朝や放課後などに、授業についていけていない生徒を集めて補習することもあるかもしれませんが、そうなると教員の仕事はますます激務となります。そして実際、教員になりたい人材が不足している現実があります。

知的障害児を通常学級へ…押さえておきたい2つのこと

 地域によっては、知的障害のない発達障害児が毎日通う固定学級として「情緒障害児学級」がすべての公立小学校に併設されていて、そこに通うケースもありますが、そうではない自治体もまだまだ多いです。例えば東京都世田谷区の場合、区立小学校61校のうち「情緒障害児学級」はたった5校にしかありません(2025年3月現在)。知的発達の遅れがない子どもの場合、現在の制度では通常学級に通うことになります。

 学力以外のコミュニケーション力や、「イスに座っていられない」などの課題がある場合は「通級指導教室」を利用することもあります。

 けれども、知的障害がある場合は、次の2つのことを頭に入れておいた方がよいと感じています。

・通常学級は、定型発達の子どもが学ぶことを前提にカリキュラムが組まれている
・各学年相当の学習を理解できることを前提に教科書は作られており、その内容に基づいて授業が進んでいく

 例えば、小学校2年生の算数で出てくる「かさ」の単元。「◯◯ミリリットルは、何リットルですか」の換算問題が登場すると、普段使わない単位なのでなかなか理解ができず、定型発達児でもこの問題を出されると嫌がっていました。知的障害があれば、なおさらです。

「教科書の内容を理解できるかどうか」が、障害のある子を通常学級に通わせることができるかを判断するポイントだと、私は思っています。

【画像】「もしかして…わが子も…?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

コメント

1件のコメント

  1. 私の子供はダウン症と軽度の難聴があり、地域の小学校の通常級に通っています。
    療育と自宅での勉強は独自に行なっています。
    この記事を書いた立石さんの基本的な一つの考えを否定はしませんが、通常級に通わせているのを「美談としてメディアに取り上げられている」という、通常級に通う障がい児を非難する言い方はやめてもらいたいです。
    いろいろな状況を考えて通常級に通わる判断をする家庭もあります。
    私は支援級や支援学校を避難するほど偏った考えは持っていませんが、逆に通常級に通わせる事を非難されるのはどういった思考なのか、私には理解できません。
    保育園からお世話になった先生方や耳の聞こえを見てくれている耳鼻科の先生には親子で頑張っていて良いですね!と褒められているくらい頑張ってたくさんのことを学んでいます。
    私は学校へは付き添いませんし、学校や学校のサポーターさん、学童も私の考えを支持してくれています。
    サポーターさんは私の考えに賛同してくれた方が支援してくれています。
    言葉の遅れもお友達とのコミニュケーションの中からも学んでいるようで、言葉を発することも増えてきています。
    兄弟姉妹のいない私の子供に関しては地域の子供たちと一緒に育つのは必須なんです。
    立石さんの支援学校での生活は立石さんの考えとしては合っていたと思いますが、一方的なその考えを押し付けて、通常級へ通う障がい児を「美談のようにメディアに取り上げられる」という言葉を使って避難するのはやめていただきたいです。