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子どもは検査結果に反して障害児だった… 「新型出生前診断」開始5年、私がいま思うこと

正しい情報を集めて、検査の選択と決断を

 出生前診断については「検査でおなかの赤ちゃんに障害があると分かった場合、出産後の育て方について妊娠中、十分考えることができる」と主張する人もいます。しかし、ただでさえも不安の多い妊娠中、検査直後からそのように前向きに捉えられる人がどれだけいるでしょうか。

 私が医師に言われたように、どんな子でも受け入れる覚悟があれば、そもそも出生前診断を受ける選択をすることはないでしょう。現実は、検査を受けること自体が、「赤ちゃんに異常が見つかれば中絶する」ことに結びついており、「育て方を考える」人は1割未満。確定検査を受けて陽性となった妊婦の9割以上が人工中絶をしています。

「第1子に染色体異常があったため、第2子の時は検査を受けてから決める」「親に何かあった時、他の兄弟に負担がかかるから産めない」などの考えから、出生前診断を受ける人もいるでしょう。

 家庭によってさまざまな事情がありますし、検査自体を国が容認していることなのですから、選択に関する善し悪しの意見を他人がとやかく言うものではないと思います。

 私自身、「障害児を育てる」ことは、人生の設計図にはありませんでした。けれども、実際に育ててみると大変なことはたくさんあるものの、不幸だと感じたことはありません。

 自分が健常者として生きてきた道が、我が子に当てはまらないと知った時、親は、これまで培ってきたものとは全く違う価値観をゼロから作り上げることになります。障害の受容とは、長い年月をかけて子どもを育てていく過程で、親が築いてきた自身の価値観を一度リセットし、再構築していく作業だと感じています。

「障害児を育てるのには莫大なお金がかかるだろう」と考え産まない選択をする人もいるかもしれません。けれども、療育手帳を取得することにより、特別児童扶養手当や障害児福祉手当、税金などの減免があります。さらに、さまざまな福祉サービスを受けることもできます。

 人は「見えない先のこと」「自分の知らないこと」に強い不安を抱くものです。まずは、検査についてきちんと調べること。そして、障害児を実際に育てている保護者の話を聞いたり、体験談の本を読んだりして正しい情報を集めた上で、検査の選択と決断をしてほしいと思います。

(文/構成・ライフスタイルチーム)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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