「汗でアルコールが抜ける」の声も…飲酒後すぐの「入浴」 実は意識失う危険も? 内科医に聞いた
「家飲み」のメリットとして「すぐお風呂に入れる」と考える人もいるようですが、飲酒後すぐの「入浴」にリスクはないのでしょうか。内科医に聞きました。

コロナ禍を機に、積極的に「家飲み」を楽しむようになった人も多いのではないでしょうか。家飲みは帰宅時間を気にする必要がなく、「飲んだ後、すぐお風呂に入れば酔いが覚めてスッキリできる」「熱いお風呂で汗を流して、アルコールを抜いてから寝られるから、翌日にお酒が残らない」と考える人もいるようです。
しかし、飲酒後すぐの入浴については、「酔っぱらったまま、お風呂に入るのは危なくない?」「浴室で具合が悪くなりそう」「のぼせたら危険な気が…」と危惧する声や「飲酒後どのくらいたてば、お風呂に入ってもいいの?」「シャワーだけなら大丈夫?」「本当に二日酔いが防げるの?」といった疑問の声も聞かれます。
家飲みの場合は特にやりがちな、飲酒後すぐの「入浴」。どのようなリスクが潜んでいるのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
汗をかいただけでは、アルコールは抜けない
Q.そもそも、お酒を飲むと体内では何が起こるのですか。
市原さん「アルコールは胃や小腸で吸収され、『門脈(もんみゃく)』という太い静脈を経由して肝臓に運ばれます。肝臓では、分解酵素によってアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸に分解されて全身の血液中を巡り、最終的に水と二酸化炭素になります」
Q.平常時、入浴すると、体内でどんな変化が生じるのか教えてください。
市原さん「入浴して体が温まると、全身の血管が広がることによって血流がよくなり、血圧が下がったり、利尿作用をもたらしたりします。シャワーだけで済ませるときは、この効果は弱いです」
Q.「飲酒後すぐ、酔った状態で入浴する(=湯につかる)のは危険」なのは事実でしょうか。
市原さん「危険であることは事実です。湯につかることで全身の血流がよくなり、アルコールが全身に回る勢いが増してしまうからです。つまり、酔いが加速するので、風呂場での転倒や入浴中の居眠りなど危険な状況が考えられます。
また、アルコールにも入浴にも、一時的な血圧降下作用に加えて利尿作用もあるので、脱水によって、さらに血圧が下がってしまう可能性があります。それにより、目まいや意識消失などの危険があります。飲酒後すぐに『シャワーだけ浴びる』のは泥酔した状態でなければ問題ないと思いますが、転倒には十分注意してください。
なお、汗をかいただけではアルコールは抜けないので、入浴することでは二日酔いの予防にはなりません」
Q.飲酒後すぐの入浴について、特に注意した方がよい人の特徴はありますか。
市原さん「高齢者は血圧の調整機能が弱くなるため、アルコールと脱水によって血圧が大幅に下がる可能性があり、注意が必要です。また、高血圧の薬を飲んでいる人は同じく、血圧が下がり過ぎる可能性があるので要注意です」
Q.もし、飲酒後すぐの入浴で体に異変が起きたり、体調が悪くなったりした場合、どうすればよいですか。
市原さん「まずは血圧の低下を疑ってすぐに横になり、できれば、足をクッションなどの上に置いて少し高い位置にしてください。脱水の可能性もあるので、水分をしっかり摂取しましょう。
これでも改善しない場合や、目まいや意識消失、胸痛、まひなどの症状が出たときは、違う病気を発症している可能性があるので、すぐに医療機関に相談してください」
Q.飲酒後、どうしても湯につかりたい場合、どれくらい時間が経過してからであれば問題ないのでしょうか。
市原さん「摂取したアルコールの量や体質にもよりますが、少量のアルコールであれば、通常2~3時間ほどで分解されるので、飲酒後3時間が経過してからの方が安心だと思います。長湯をしたり、湯船に入ったり出たりを繰り返したりすると、脱水や血圧低下を引き起こす可能性が高くなるのでやめましょう」
Q.翌日、二日酔いの状態で入浴する際に気を付けるべきことはありますか。
市原さん「二日酔いはアセトアルデヒドが分解しきれず、体内に残っていることによって、頭痛や倦怠(けんたい)感などの症状を引き起こすものです。アセトアルデヒドを分解させるためには、水分補給をしっかりと行わないといけません。つまり、脱水になると二日酔いが治りにくくなるので、入浴による脱水に注意して、入浴前から十分に水分補給をしてください」
(オトナンサー編集部)
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