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「ノリスケ出入り禁止」が話題に 「親族が急病で…」とうそをついて欠勤後、バレたら?

「親族が急病で…」などと勤務先にうそをついて仕事を休み、その後、そのうそがばれた場合、うそをついた人は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

うそをついて欠勤、法的責任を問われる?
うそをついて欠勤、法的責任を問われる?

 8月28日に放送されたテレビアニメ「サザエさん」の次週予告で、「ノリスケ出入り禁止」というタイトルが登場し、ツイッターでトレンド入りするほど話題になりました。翌週9月4日の放送内容は、ノリスケが仕事を休むために「伯父の波平が急病で病院に搬送された」などとうそをつき騒動に発展、激怒した波平が、ノリスケに磯野家への当分の出入り禁止を言い渡すというものでした。

「親族が急病で…」などと勤務先にうそをついて仕事を休み、その後、そのうそがばれた場合、うそをついた人は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

懲戒処分を下される可能性も

Q.そもそも、「親族が急病で…」「(私が)体調不良で…」などと勤務先にうそをついて仕事を休み、その後、そのうそがばれた場合、うそをついた人は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

佐藤さん「うそをついただけで、罰せられたり、損害賠償責任などの法的責任を問われたりする可能性はありません。世間では、うそをつくと『詐欺』なのではないかと言われることがありますが、詐欺罪はお金などをだまし取る犯罪であり、うそをつくだけでは成立しません。

しかし、勤務先に対してうそをつくと、信用を損ない、事実上さまざまな不都合が生じる可能性があります。また、就業規則に『各種届け出などで虚偽の申告を行わない』などのルールが定められていれば、懲戒処分の対象になることもあり得ます」

Q.では、仕事を休むためについたうそがきっかけで、勤務先や取引先などに何らかの損害が生じた場合、うそをついた人は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

佐藤さん「従業員が勤務先などに損害を与えた場合、理論上、勤務先は問題を起こした従業員に対し、損害賠償請求することができます。

しかし、会社は従業員を雇って多くの利益を上げており、従業員を指揮監督する立場でもあります。そのため、従業員のミスなどによって損害を負うことがあったとしても、従業員個人にすべての責任を負わせるべきではないと考えられており、会社の従業員に対する損害賠償請求が認められるハードルは高いです。例えば、従業員による横領など悪質なケースでなければ、会社の請求は認められにくい傾向があります。

仕事を休む場合、有休を取得することが多いと思いますが、そもそも有休はどんな理由であっても取得でき、会社に対して理由を説明しなければならないものではありません。もちろん、会社に対してうその理由を説明することはよくないことではありますが、一度きりのうそであれば、悪質性が高いと判断できないことも多いでしょう。

そのため、仮に、仕事を休むためについたうそがきっかけで、勤務先や取引先に何らかの損害が生じたとしても、実際に損害賠償請求などの法的措置が取られることは少ないと思います」

Q.「親族が急病で…」「(私が)体調不良で…」などとうそをついて有休を取得後、そのうそがばれた場合、有休が無効となる可能性はあるのでしょうか。

佐藤さん「すでに休んでしまったことをなかったことにすることはできないため、仮にうそをついて有休を取得したとしても、既に取得した有休が無効とされる可能性はありません」

Q.うそをついて仕事を休んだ社員がいた場合、経営者は当該社員に対し、減給や解雇などの処分を下すことができるのでしょうか。

佐藤さん「会社に対して従業員がうそをついた場合、会社との信頼関係が崩れたり、社内秩序が乱れたりします。

また、有休の取得は労働者の権利なので、いつでもどんな理由でも取得できるのが原則ですが、会社は『請求された時季に有休を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合』には、有休を与える時季を変更することができ(時季変更権)、『親族が急病で…』『(私が)体調不良で…』といったうそは、会社の時季変更権を妨げる場合もあるでしょう。

従って会社は、うそをついた従業員に対して注意したり、就業規則に基づき一定の懲戒処分を下したりすることができます。繰り返しうそをついて休んでいるなど、悪質性が認められる場合には、減給処分も許されるでしょう。

ただし、いきなり懲戒解雇処分にするのは、処分の程度として重過ぎ、許されません。処分の程度を決める際は、問題行為の悪質性を踏まえ、専門家にも相談の上、慎重に判断する必要があるでしょう」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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