脳梗塞の夫にこき使われ続けた53歳女性、介護離婚で2000万円を“総取り”できた理由(下)
退職金800万円を100万円ずつ出金
そして2つ目は退職金です。前述の通り、夫は定年まで働くつもりでいたのですが、脳梗塞の後遺症で通常の仕事はもちろん、毎日の通勤すらままならないありさま。夫はまだ55歳で定年まで5年も残っているのですが、不本意ながら退職せざるを得ず、今のタイミングで退職金の受給権が発生したのです。
夫の勤務先では、退職金の手続きを総務部が担当しており、総務部は本社(本部)の中にあるのですが、自宅から車で片道40分。夫が車いすで往復するのは難しいところです。悦子さんが運転する車に同乗させてほしいと頼めばよかったのですが、今さら車中で2人きりになるのが気まずかったのか。結局のところ、悦子さんが夫の代わりに総務部へ出向き、書類の一式を受け取って自宅で夫が署名をし、また悦子さんが総務部へ届けるという形でまるで伝書鳩のようにこき使われたのですが、悦子さんも黙っていたわけではありません。
「退職金の受け取り方法は一括にして、振り込み口座はメイン(給与の振り込み)口座ではなく、夫が口座の存在を忘れており、悦子さんが通帳やキャッシュカードを管理している口座に指定してはいかがでしょうか」
私は、夫の署名が必須ではない箇所は悦子さんが代筆できることを逆手に取り、そんなふうに助言したのですが、悦子さんは退職金800万円が口座に振り込まれるとキャッシュカードを使ってATMで100万円(1日の限度額)ずつ小刻みに出金を続け、800万円をそっくりそのまま自分の口座に移動させておいたのです。
さらに3つ目は保険金です。悦子さん夫婦が加入していた保険ですが、契約者は夫、被保険者も夫、そして死亡保険金の受取人は妻、高度障害保険金の受取人は夫という内容でした。高度障害保険は団信のように、死亡の場合だけでなく、がん、脳梗塞、心筋梗塞などの三大疾病を発症した場合も支給される保険のことで今回の場合、1200万円一括という保証内容でした。保険を申し込む際に「指定請求代理人」を設定することが可能です。
病気の後遺症で本人(契約者)が保険請求の手続きを行うことが難しい場合、指定請求代理人が代わりに行うことができるのですが、今回の場合、妻になっていたので悦子さんが保険会社へ申請したのです。そして退職金と同じく、夫が存在を知らない口座に保険金の振り込み先を指定しておき、1200万円が振り込まれると口座から出金し、悦子さんの口座へ移しておいたのです。
最後、4つ目は年金です。夫が婚姻期間中に納めた厚生年金の最大2分の1を妻に付け替える制度のことを「年金分割」といいます。
「年金事務所で『年金分割のための情報提供通知書』という書類を手に入れておいてください」
私は前もって悦子さんに頼んでおいたのですが、夫の厚生年金+妻の厚生年金の合計額を夫5割、妻5割で按分した場合、夫の厚生年金がいくら減り、妻はいくら増えるのか……もちろん、今後も年金の保険料を払い続け、年金額が増えていきますが、仮に今すぐ離婚した場合の試算が書かれています。悦子さん夫婦の場合、夫から妻へ渡る年金は毎月3万円だということが先んじて分かったのです。
ここに書いてある事がそのまま認められるかはともかく、法律を悪用しているだけじゃない?こんな事を書くから若い人が結婚なんかしない方がましと思うんでは。