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脳梗塞の夫にこき使われ続けた53歳女性、介護離婚で2000万円を“総取り”できた理由(下)

もしも夫や妻が病気になり、自分が介護する立場になったら……。そして、感謝ではなく罵声を浴びせられ、わずかな年金も介護費用に吸い取られたら……。夫が脳梗塞になった女性のエピソードです。

女性は財産を手にして離婚に“成功”したという(写真はイメージ)

 最後の最後で夫はそんなふうに捨てゼリフを吐き、ようやく離婚届に署名したのですが、ここまでひどい目に遭ってただで別れるほど悦子さんはお人よしではありません。夫の有無にかかわらず、悦子さんの人生はこれからも続き、老後の生活にはお金が必要ですが、もはや夫に対して情けをかける義理はないので「取れるものはすべて取る」つもりで、夫の身ぐるみを剥いだとしても罰は当たらないはず。先に結論を言うと「自宅の居住権」「800万円の退職金」「1200万円の保険金」そして「夫の厚生年金の半分(毎月3万円)」を手に入れることに成功したのですが、どのように実現したのでしょうか。

 まず1つ目は自宅の居住権です。悦子さん夫婦が住んでいた持ち家は築20年。夫が倒れる前の段階で約1000万円も住宅ローンが残っていました。夫が倒れたことで住宅ローンは帳消しになり、毎月の返済が免除されたのですが、これはどういうことでしょうか。

 ほとんどの場合、銀行で住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険(団信)に加入しなければなりません。団信とは万が一、途中で債務者(悦子さんの場合は夫)が亡くなった場合、住宅ローン残額と同額の保険金が支給され、そして保険金は優先的に住宅ローンへ充当されるので安心です。一家の大黒柱を失った遺族が住宅ローンの返済に苦しめられるのを防ぐためですが、保障の対象は死亡だけでなく、がん、脳梗塞、心筋梗塞などの三大疾病を追加することも可能です(三大疾病保障特約)。悦子さん夫婦の場合、住宅ローンを組む時、団信に特約を付与しておいたので、悦子さんの夫はまだ生きていますが脳梗塞を発症し、現在就業不能であることを証明することで保険金が支給されたのです。

 前述通り、退院直前に夫の両親が「元の会社に戻れるまで、うちで(夫を)預かってもいい」と言い、悦子さんに気を使ってくれたのですが、両親は息子の病状を甘く見ており、元の会社に戻れると過信しているからこそ軽い気持ちで息子の介護を申し出たのでしょう。悦子さんにとって両親が協力的だったのは不幸中の幸いでした。

 私は悦子さんに「退院から現在まで起こったトラブルの数々を両親に伝えた上で、夫を実家で引き取ってほしいと頼んでみてはどうですか」とアドバイスしたのですが、悦子さんが両親に頼みに行ったところ、両親はあっさりと快諾したのです。おそらく、職場復帰するまで一時的に預かるだけだと軽んじているのでしょう。しかし、夫がリハビリを頑張るつもりがないのは明らかなので、後遺症が回復し、前の会社へ復職することは叶わないでしょう。つまり、悦子さんは「このままずっと」夫を任せるつもりで実家を訪ねたわけです。

「二度とうちの敷居をまたがせるつもりはないです」

 悦子さんは途中で何があっても考えを変えるつもりはないそう。こうやって自宅から夫を追い出し、悦子さんが暮らしている間、住居費なしで住むことができるのは金銭的に大助かりです。そして、お互いの病状を考えると夫の方が先に亡くなる可能性が高いですが、自宅も含め夫の遺産はどうなるのでしょうか。

 夫が遺言を残していなければ、夫の遺産は妻(悦子さん)がすべて相続することができるので、先々は自宅の権利も夫から悦子さんへ切り替わっているでしょう。将来的に悦子さんの病状が悪化し、心身ともに不自由になって施設に入らざるを得なくなっても、自宅を売却し現金化すれば、施設の入居金に充てることができるのだから、住宅ローンなしの家を手に入れたことは大きいのです。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。