1日20時間勉強、スパルタ高校が「夢工場」? 中国の大学入試「高考」、なぜ過酷?
「カンニング専用」腕時計が40万円!
Q.受験勉強がそこまで大変だと、親も熱心なのでしょうか。
青樹さん「親も必死です。中国人は、自分の老後は子どもに面倒を見てもらうのが一般的です。自分の老後の保障もかけて、親も命を懸けています。
先ほど述べた毛坦廠のある母親は、6時前に起きる子どものために、自分は5時半に起き、翌日の午前2時まで、ひたすら子どもの世話をしているそうです。経済的にも負担は大きいのですが、『子どもは大学に行って、自分の運命を変えてほしい。子どもには自分と同じ人生を送らせたくない』と必死なのです
住宅購入の面にも、親の必死さが表れます。レベルの高い名門小中学校のある地域に住むと、大学入学で有利になるため、一般のマンションよりかなり高くても、そういった地域のマンションを買う親は珍しくありません。子どもに質の高い教育を受けさせて、運命を変えさせたいのです。親のなかには、子どもの受験勉強支援に専念するため、離職する人もいます」
Q.全国統一の試験ということは、問題もすべて同じなのでしょうか。
青樹さん「問題は、すべて同じではありません。全国共通の問題で実施する地域と、地域独自の問題で実施する地域があります。北京や上海は独自の問題を作っています。
そのため地域によって、難易度が違ってきます。問題の難易度によって、比較的易しい方から『ハッピー式』『悪夢式』『地獄式』と呼ばれ、地獄式のエリアに住む受験生の家庭が、ハッピー式のエリアに転出することもあります。
地獄式の代表例が、江蘇省です。毎年、試験問題が地獄のように難しく、高考の終了直後から、受験生たちの悲鳴が上がるそうです。ある年では、『英語の問題が1.6メートルもあって、清明上河図(中国の有名な絵巻)のようだ』といった嘆きの声が上がりました」
Q.そこまで熾烈だと、浪人する人もいるのでしょうか。
青樹さん「出願の際に、第1志望だけでなく、第2志望以下の大学も出せるので、浪人することは、昔は考えられませんでした。浪人する人は『人生の敗残者』のように見られていました。中国の社会が豊かになってきて、浪人する受験生が少しずつ出てきましたが、一般的には、浪人する人は少数派です」
Q.日本の大学入試共通テストでスマホを使ったカンニングが事件となりましたが、高考でもカンニングが見つかることはあるのでしょうか。
青樹さん「あります。カンニングを専門とする業者が組織化されていて、ITの先進技術をカンニングに使います。スパイ映画さながらに、盗聴、盗撮が年々エスカレートしています。身代わり受験もありますし、集団でのカンニングもあります。『透視眼鏡』なるものや、闇ではカンニング専用の腕時計が40万円くらいで売られているそうです。
不正防止の対策をする側も、金属探知機や防犯カメラはもちろん、高考直前の6月初めになると、試験会場付近で、電波を遮断するシールドが設置されます。周辺のインターネット環境に大きく影響を及ぼすので、通信会社が近辺の人に連絡します。
不正行為が見つかると、合格取り消しはもちろん、受験資格の3年間剥奪、最高で7年の実刑といった厳しい罰則があります。『ブラックリスト』にも載せられて、就職などへの悪影響も免れません。
史上最大規模のカンニングは1997年、広西省チワン族自治区陸川県で起きました。1600人の受験生のうち、500人以上が不正をしていたとみられています。受験生の3分の1がカンニングをしていたということで、カンニングの痕跡が大量に見つかりました。高校の先生や試験会場の監督官も関わっていたそうです。地域をあげての合格率アップという圧力が、学校などにかかっていて、党籍剥奪や実刑処分を受ける人が続出。およそ200人が合格を取り消されました。関わった教師ももちろん資格剥奪です」
Q.中国では昨年、教育産業への規制強化をしたと思います。高考への影響があれば教えてください。
青樹さん「中国政府は昨年、少子化対策も視野に入れた教育費負担軽減策として、『塾禁止令』ともいえる教育産業規制強化策を実施しましたが、対象は小中学生への教育分野にとどめています。
大学入試への受験対策までを規制するのは、現在の中国政府でも、とてもできなかったようです。もし、規制強化をしたら、社会全体でとてつもない反発が起きるでしょう。1日20時間勉強している子に、『勉強時間を減らしなさい』とはとても言えないということです」
(オトナンサー編集部)



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