「不妊治療」のいま 検査から治療、かかる費用まで
治療その2「人工授精」
タイミング療法で妊娠に至らなかった場合、また検査時フーナーテストの結果がよくなかった場合に人工授精を考えます。
人工授精は、事前に精子を採取し、女性の排卵日のタイミングで子宮に注入する療法です。男性の精子が少ない(精子減少症、乏精子症)場合や運動率がよくない(精子無力症)場合、女性では頸管粘液不全によって精子がスムーズに子宮に届きにくい場合に行われます。
精子を注入したら、排卵予定日後に超音波検査によって、排卵がきちんと起こったかどうか、黄体ホルモンが分泌されているかどうかなどを確認することもあります。
人工授精には以下の種類があります。
人工授精(AIH)
排卵当日に、男性から採取した精子を濃縮・洗浄して注入する方法。注入後の受精から着床~妊娠に至るまでは自然妊娠と同じ過程です。精子に障害があるケース(精子減少症、精子無力症)のほか、セックスができない場合(性交障害)、頚管粘液不全や抗精子抗体陽性の場合などに適していますが、一方で、精子に異常がないとわかっている時や女性が高齢な場合にはあまり向いていないとされます。
冷結精子使用人工授精(AIH)
排卵当日に精子の採取が難しい場合は、事前に預かった精子を冷結保存して、女性の排卵のタイミングで融解して注入します。注入後の流れは、人工授精と同様です。
非配偶者間人工授精(AID)
配偶者ではない男性の精子を子宮に注入して妊娠を目指すもので、無精子症など、男性が何らかの理由で精子を提供できない時の治療法です。治療が行えるのは、男性が無精子症の場合や、精巣精子回収術でも精子が見つからなかった場合、主治医からの提案があった場合に限られます。日本産科婦人科学会の規定によって、精子の提供者を知ることはできません。同時に提供者側も誰に提供したかを知らされません。提供者は、妊娠を望む夫婦の男性側の血液型と合った人が選ばれますが、条件を指定することはできません。
無事、着床~妊娠に至れば、女性のおなかの中で成長し、法的にも正式に夫婦の子どもになりますが、精神的な問題が残るケースも少なくありません。治療の前には夫婦間で話し合い、お互いにしっかりと納得した上で決めることが大切です。実施できる医療機関は極めて限られています。
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