不安…だけど応援するか、反対するか 「YouTuberになりたい」子どもを持つ親の声
子どもが将来なりたい職業に「YouTuber」が挙がるようになって久しいですが、わが子がYouTuberを目指していることを知った親の考え方・感じ方はさまざまなようです。親の声を聞きました。
子どもが将来なりたい職業に「YouTuber」が挙がるようになって久しいです。ソニー生命(東京都千代田区)が2021年7月に発表した「中高生が思い描く将来についての意識調査」(対象は全国の中学生200人、高校生800人の合計1000人、インターネット調査)でも、YouTuberは男子中学生と男子高校生でともに1位、女子中学生では2位と、将来なりたい職業として人気です。
こうした傾向がある中で、実際にわが子が「YouTuberになりたい」と夢見ていることを知ったとき、親の考え方・感じ方はさまざまなようです。数人の声をピックアップして紹介します。
同じ苦労を味わってほしくないが…
「不安はあるけど、10歳の息子がもし本気なら、応援しなければならないと考えている」と話すAさん(41歳、男性)。積極的に賛成できない理由には自身の経験が関係しているようです。
「私自身がイラストレーターとして、フリーランスで仕事をしていて、生活を軌道に乗せるのに苦労しました。今は生活していけるようになりましたが、そこに至るまでが大変でした。YouTuberは、基本的に人気商売です。だから、浮き沈みがあるだろうし、人気が出なければ、生活もままならない可能性も十分あり得ます。
私がした苦労を息子も同じように味わうのではないかと心配です。過保護なようで恥ずかしいですが、できれば、企業に勤めて、安定した生活をしてほしいというのが本音です」(Aさん)
ひたすら、息子が心配なAさんでしたが中年に差し掛かり、心配しつつも応援する気持ちが出てきたとのことです。その背景として、「私の両親の気持ちがやっと分かった」と話します。
「実は、私もフリーランスでイラストレーターの仕事を始めた頃、古里の両親から頻繁に電話がかかってくるなど、とても心配されました。父は安定志向を絵に描いたような勤め人で、母もその時代の専業主婦という感じの人です。2人ともいまだに“フリーランス”という職業形態が理解できないみたいで、私がまともに働いていないように見えるようです。
それでも、両親は心配しながらも応援してくれていたので、私も両親に倣って、息子を応援すべきなのだろうと考えるようになってきました」
両親から学んだ姿勢を自分自身も実践しようと、Aさんは決意したようです。
「本気」でなければ反対
Bさん(44歳、男性)は「子どもが決めた夢なら全力で応援したい」という基本スタンスを持ちつつ、「その夢がまっとうなものでないなら、YouTuberだろうとなんだろうと本気で反対します」と強い口調で話します。
子どもが決めた夢は「全力で応援したい」と言いつつも、夢がまっとうなものではなければ、「本気で反対する」というのは矛盾しているように見えますが、これは一体どういうことでしょうか。
「YouTuberは立派な職業だと思っています。企画、撮影、編集、サイトや活動の運営など、やることは山のようにあり、作業量も膨大だろうと推測しますし、華やかな見た目とは裏腹に地道な世界なのだろうなと思って見ています。
14歳の息子が昨年から、『YouTuberになりたい』と言い始めましたが、まだ、世間の苦労を知らない年齢です。息子には常に『やるならとことんやれ』と言っていますが、憧れだけといった浮ついた気持ちでYouTuberをやるなら、うまくいきっこないので、そうした気配が見えた時点で反対するつもりです」(Bさん)
Bさんにとって「息子の選んだ夢は何か」は重要でなく、「息子は本気か」がポイントとなっているようです。
「それと、息子が常識を逸脱する行為で炎上を狙うこと、誰かを傷つけること、あるいは自分自身がむちゃをすることなどで、YouTubeの視聴回数を稼ごうとするならば、反対すると思います。息子には常々、『恥ずかしくないと自信をもって胸を張れるように、きちんと考えてから行動しろ』と言っています。
何も考えずに行動して、他人を傷つけたり、責任を全うしなかったり、といった生き方を息子にしてほしくありません。もし、息子が数年後、将来の進路をもっと具体的に考える年齢になっても『YouTuberになりたい』と考えているなら、その点だけはしっかり守ってほしいと思います。そこだけしっかりしていてくれれば、YouTuberだろうとなんだろうと、息子の夢を応援するつもりです」
YouTuberが職業としてメジャーになってきて、最近の小学生の間では「編集作業とか意外と大変らしい」といった会話が交わされることもあるのだとか。人気のお仕事“Youtuber”が今後、子どもたちの間で、そして、子を持つ親たちの間で、どのような受け入れられ方をしていくのか、興味深く思われました。
(フリーライター 武藤弘樹)
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