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CD店のキャンペーンで抽選券の連番から欠けた番号が当選する「不正疑惑」、同種ケースの法的問題は?

あるCDショップのキャンペーンで「不正抽選」が行われた疑惑がSNS上で浮上しました。その疑惑とは「当選番号の抽選券が事前に連番から抜かれていた」というもの。今回はあくまで「不手際」ということですが、不正があれば法的には――。

連番が一部欠けている抽選券=杉咲さん(@sugisaki_0x)提供

 都内のCDショップが行ったキャンペーンにおける「不正抽選疑惑」が先日、SNS上で話題となりました。キャンペーンは、CD購入時に配布される抽選券の番号とホームページに発表される番号が一致すると「当選」となり、商品がもらえるというもの。これについて「25枚買って24枚が連番で全部ハズレ。不自然に飛んでた1枚が当選」「まとめて買って連番になってない時点で怪しかったけど、抜かれた番号が当選してるのはおかしい」などの声が上がっていました。

 この疑惑について、オトナンサー編集部が運営会社に取材すると「一部の抽選券が十分にシャッフルされず、そのことが『抜け落ちた連番』につながる不手際があった」(広報担当者)ものの、調査の結果、運用方法上の不正はなかったとのこと。疑問を抱いた購入客にも事情を説明し、理解を得られたといいます。

 こうしたケースで、仮に「当選番号の券が抜かれる」など運用上の不正があった場合、法的にはどのような問題があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に取材しました。

不正は数多くなされている可能性

Q.こうしたケースで店側に不正があった場合、どのような法的問題がありますか。

牧野さん「CDを購入する目的があくまでCDの購入であり、抽選券がオマケ的な性質の場合、景品表示法の『有利誤認』(当選する可能性があると有利性の表示をしたが、当選する可能性はなかった)として景品表示法違反にあたる可能性があります。ただし、会社内部のことであり、これを証明することは実際には非常に難しいでしょう。有利誤認に該当する場合はまず、消費者庁からの措置命令を受けます。次に、その命令に違反した場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります(景品表示法第16条)。一般的には、消費者庁から指導を受けてから是正すればよく、いきなり罰則にはならないため、こうした行為は数多くなされている可能性があります。しかし、これは客をだます行為であり、道徳的に許されるものではありません。組織的不正であれば、社会的責任を追及され、相応の対価を支払うことになるでしょう。なお、店員が権限なく当選券を抜いた場合には、刑法上の窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)にあたるでしょう」

Q.CDを購入する目的が「抽選券」だったとしたら、どうでしょうか。

牧野さん「抽選券が単なるオマケではなく、CDを購入する目的が抽選券の取得である場合、事情は少し異なります。店側が組織的に不正をしており、なおかつ、客が証拠(内部者の証言など)によって不正を証明できれば、元々当選する可能性のない抽選券を販売するのですから、民法上の『詐欺』にあたる可能性があり、契約をキャンセルして返金を請求できます。民法上の詐欺は『他人を欺騙(きへん)して錯誤に陥れること』です。詐欺に基づく意思表示は取り消せるので(民法第96条)、契約をキャンセルして返金してもらうことができます。さらに、店側の行為は『他人を欺騙し錯誤に陥れさせ、財物を交付させるか、または、財産上不法の利益を得た』として、刑法上の詐欺罪(10年以下の懲役)にあたる可能性もあります(刑法246条)」

Q.CDを購入する目的が「CD購入」か「抽選券取得」か、という違いはどのように決まるのでしょうか。

牧野さん「購入者の『主観』は一般的に証明が難しいので、購入行為の外形から判断されることが多いはずです。たとえば、同じCDを複数購入するような場合、明らかに『抽選券取得』が主目的と判断されるでしょう」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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