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あがり症の保育士さん「大人を前に話すのがどうしても苦手」投稿が話題に…症状は改善できる?

「大人を前に話すのがどうしても苦手」という保育士さんの投稿がSNS上で話題となっています。今回は、あがり症の人の特徴やその改善法についてご紹介します。

あがり症は人によっては深刻な問題だ

 SNS上で先日「あがり症」に関する投稿が話題になりました。保育士だという投稿者は「子どもの前で絵本を読んだりお話したりするのは平気ですが、職員会議など大人を対象に話すのがどうしても苦手」で「話す予定じゃなかったことを急に話そうとしてしまう」「途中で何を喋ってるかわからなくなる」そうです。このツイートに対して「人前苦手」「大丈夫と言い聞かせるほどあがってしまう」「場数を踏むしかないのでは」など、さまざまな反応が見られますが、あがり症の人の特徴や改善法とはどのようなものでしょうか。一般社団法人あがり症克服協会の鳥谷朝代理事長に聞きました。

生活に支障をきたす「社交不安障害」

Q.そもそも、あがり症とは病気なのでしょうか。

鳥谷さん「あがり症自体は正式な病名ではありませんが、対人場面での恐怖や不安が強く、日常生活に支障をきたす場合は『社交不安障害(SAD=Social Anxiety Disorder)』と診断されることもあります。日本ではこれまで、英語の直訳にあたる『社会不安障害』と呼ばれていましたが、2008年の日本精神神経学会で、より実態に近い『社交不安障害』に名称変更されました」

Q.あがり症の症状にはどのようなものがありますか。

鳥谷さん「人は不安や恐怖を感じると、神経伝達物質であるノルアドレナリンが血液中に多量に分泌され、自律神経の一つである交感神経を活性化します。すると心拍数や体温、血圧が急上昇するため、動悸(どうき)や発汗、震え、赤面などの症状が起きます。また消化機能が抑制されるので腹痛や食欲不振になる人もいます」

Q.あがり症の原因は何でしょうか。また、なりやすい人はいますか。

鳥谷さん「あがり症の原因としては『他人に見られている』『人前で恥をかきたくない』『失敗したくない』などと強く思い過ぎることが挙げられます。つまり、人前に出た時、自意識過剰になりやすい人や、失敗や恥を恐れ過ぎる人がなりやすいのです」

Q.あがり症の症状を持つ人はどのくらいいるのでしょうか。

鳥谷さん「米国の調査によると、SAD罹患率は人口の10~15%というデータがあります。日本人特有の『恥の文化』『謙遜の美学』という文化的背景を考えると、日本ではさらに増えることも考えられます。また、診断はされていないものの『人前であがる』『緊張する』ことで悩んでいる人は、実に80%を超えていると言われています」

Q.あがり症は“治る”のでしょうか。

鳥谷さん「あがり症は治せます。症状として最も多いのは『声の震え』『上ずり』ですが、これらは姿勢が悪いことや呼吸が浅いことが原因になるため、呼吸練習や発声練習などで改善が可能です。手足の震えなども、体の硬さが原因である場合が多いため、日常的にストレッチなどを取り入れてみてください。もちろん、本番までの心構えや準備も大切。『人前』への苦手意識をなくすために、しっかりと準備して予期不安を解消することや、日頃から積極的な行動を心がけること、自分からあいさつや会話をしてコミュニケーション力を磨くことなどをオススメします。一人で悩まず、専門の講座やセミナーなどに参加するのも有効です」

(オトナンサー編集部)

鳥谷朝代(とりたに・あさよ)

あがり症克服協会代表理事、スピーチ塾代表取締役、心理カウンセラー

中学1年生の本読みで、自身のあがり症を自覚。以来17年間、苦しみ続ける。名古屋市役所の職員となって以降も症状は悪化。精神内科の通院や催眠療法を試みても効果はなかったが、ある話し方講座と出会い克服。その後「自分のようにあがり症で苦しむ人の助けになりたい」と思うようになり、2004年、公務員生活に終止符を打ち「あがり症・話しベタさんのためのスピーチ塾(R)」を開校。メンタルだけでなく体から誰でも楽にあがりを改善する方法を確立し、アナウンサーや弁護士、経営者から学生、主婦まで幅広く指導、克服へ導いた受講生は6万5000人を超える。2014年、全国初の元あがり症によるあがり症のための協会「一般社団法人あがり症克服協会」を非営利団体として発足、理事長に就任。全国各地のカルチャースクール、学校、企業・団体で年間200回以上の講演活動を行う。「あさイチ」「ZIP!」「まる得マガジン」「ごごナマ」などテレビ出演多数。オードリー若林さんやトレンディエンジェル斎藤さんの人見知り克服、カラテカ矢部さんのあがり症克服指導も行う。著書に「人前であがらない人とあがる人の習慣」(明日香出版社)「1分のスピーチでも30分のプレゼンでも、人前であがらずに話せる方法」(大和書房)「人前であがらないスピーチ術」(NHK出版)などがある。あがり症克服協会公式サイト(http://agarishow.or.jp/)。

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