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過重労働、サービス残業…過酷な環境でもメンタルを維持できる人は何が違うのか?

「働き方改革」が叫ばれる中でも、過重労働や長時間のサービス残業が続く企業もあります。そんな環境でもメンタルを維持できる人は、何が違うのでしょうか。

過酷な環境でもメンタルを維持できる人とは?
過酷な環境でもメンタルを維持できる人とは?

「働き方改革」に多くの企業が取り組む一方、業界によっては、過重労働や長時間のサービス残業など過酷な労働環境に身を置く人が少なくありません。こうした環境においては、過労などでメンタル面に不調をきたし、休職・退職を余儀なくされる人も多くみられますが、同様の激務であっても、精神的健康を維持しながら働き続ける人もいます。劣悪な労働環境の改善が第一ではあるものの、すぐには改善されないケースも多いため、「過酷な環境下でメンタルを維持できる人」への関心が高まっているようです。

 ネット上では「休日が充実している人はメンタルが安定しやすいイメージ」「趣味の有無でかなり違うよね」「でも飲み歩くのは悪影響では」など、さまざまな声が上がっています。過労が引き金となるメンタルの不調について、YSこころのクリニック院長で精神科医の宮島賢也さんに聞きました。

柔軟性ない人は不調のリスク高

Q.過労などによって、身体面だけではなく、メンタル面にも不調をきたすのはなぜでしょうか。

宮島さん「睡眠時間が6時間未満になると、翌日の日中に強い眠気を感じる人が多くなります。睡眠不足が蓄積すると、脳が疲労回復する時間が足りなくなり、メンタル面の不調として、集中力・注意力の低下、やる気が起きない、ミスが目立つ、イライラ感などが生じます。また、日中に慢性的な眠気が生じて疲れやすくなるほか、不眠、食欲の低下などを引き起こしやすくなります」

Q.過労などによって、メンタルに不調をきたしやすい人の特徴はありますか。

宮島さん「周囲に相談ができない人です。何かあったときに“相談をする”のは女性の方が多いです。男性は相談ができず、ため込みがちで、メンタル不調をきたしやすいと言われています。しかし、最近は女性でも相談が苦手な人が増えている印象を受けます。性格的には、柔軟性がなく『0(ゼロ)か100か』思考の人はメンタル不調のリスクが高いでしょう。また、暴飲暴食、睡眠不足、運動不足といった生活習慣の影響も大きいです」

Q.過酷な労働環境下でもメンタルを壊さない人には、何らかの特徴はありますか。

宮島さん「柔軟性を持ち、周囲に相談ができるタイプの人はメンタルを守りやすいです。少食で胃腸に負担をかけず、短くとも休養を取り、適度な運動をしていると、メンタルおよび体の健康を維持しやすいといえます。また、趣味を持ち、オンとオフを分け、仕事が忙しくても休日にリフレッシュできる人、忙しさのめどを付けられる人はメンタル不調のリスクを乗り越えやすいです。

つまり、『柔軟な性格』と『一人で抱え込まず、周囲に相談する傾向』の有無が、過労でメンタルを壊しやすい人/壊しにくい人の違いといえます」

Q.過労によるメンタルの不調について、早期に気付くためのサインはありますか。

宮島さん「メンタルの不調サインには、自分自身で気付けるものと、周囲からの指摘によって気付くものがあります」

【自分での気付き】
・アルコールやたばこの量が増える
・食欲不振で痩せる(もしくは過食で太る)
・睡眠障害(不眠もしくは過眠)
・風邪をひきやすくなった(もしくは風邪が治りにくくなった)
・頭痛が取れない
・腰痛や肩こりの悪化
・胃痛が治らない

【周囲の気付き】
・遅刻や早退、欠勤が増えた
・ミスが増えた
・判断力の低下、仕事の能率の低下がみられる
・周囲との会話が減った、昼食時など1人で過ごすことが多くなった、口数が減った
・表情が暗い、元気がない、顔色が悪い

Q.メンタルの不調を感じたとき、どのように対処すればよいでしょうか。

宮島さん「食事やアルコールは少なめに。無理のない範囲で、散歩などの有酸素運動を増やし、血行をよくすることを心掛けてください。普段より休養を取ることを意識しましょう。可能なら上司に相談し、仕事の優先順位の見直し、休暇申請を行うのも有効です。不眠や意欲低下などの症状が2週間続くときは、病院の受診も検討してみてください」

Q.過酷な労働環境においても、メンタルをできるだけ健康に保つために意識すべきことは何でしょうか。

宮島さん「メンタル不調時と同じアドバイスになりますが、暴飲暴食をせず、食事もアルコールも“喜び”の範囲内にとどめ、適度な運動をして血行を良くしましょう。そして、最も大切なことは『仕事を人生の全てにしない』ことです。仕事はあくまでも人生の一部であり、仮に現在の仕事がなくなっても自分の人生は続いていきます。そのために家族や友人との時間、趣味の時間を大切にしてください」

(オトナンサー編集部)

宮島賢也(みやじま・けんや)

医師(YSこころのクリニック院長、精神科医、精神保健指定医、産業医)

防衛医大卒業後、研修医時代にうつ病の診断を受ける。紆余曲折を経て精神科医に。受診が終了しても再発する患者が多いことから、薬ではうつは治らないと感じて医者以外の方から学び、食事や考え方、コミュニケーションを変え、うつを克服する。「薬を使わない精神科医」と名乗り、成功哲学ベースの手法を発信。湯島清水坂クリニックで安保徹氏、福田稔氏の自律神経免疫療法で体の血行改善、温めの有効性を知り、生き方直しと一緒に提供して効果を実感。その後、YSメソッドに出会い、YSこころのクリニックでYSメソッドの治療を提供。単なるうつヌケだけでなく、本当の自分に出会い、愛と感謝と喜びの中に今日も生きる。著書に「薬を使わない精神科医の『うつ』が消えるノート」(青春出版社)、「自分の『うつ』を治した精神科医の方法」(河出書房新社)ほか多数。

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