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悩ましき現代社会の寵児「うつ」をサバイバルする

筆者がうつになった20年前、うつは大したことのない病気と思われていましたが、現在ではすっかり“市民権”を得ています。啓発活動が逆にうつの「普遍化」を招いていることは皮肉とも言えます。

かつて「こころの風邪」と呼ばれていた「うつ」

 私がうつになった20年ほど前、うつは大したことのない病気と思われていました。「怠け病だ」「こころが疲れているだけで気晴らしをすれば回復する」「病は気からだから、気持ちの持ち方ひとつ」。そして、「憂うつなんて誰もが経験していること」――。

啓発活動は、うつの「普遍化」を促す

 当時、うつは「こころの風邪」とも呼ばれており、薬を飲めば治ると精神科医たちは断言していたのです。その一方で「うつは精神病だから、うつになるようなヤツはダメな人間だ」という真逆の解釈も横行していました。

 私も実際、定期的に仕事をしていた雑誌から理由も明かされずに干されて、仕事を失いました。うつで布団から出られないくらいつらくても、歯を食いしばって、比喩ではなく、本当に泣きながら仕事を続けていたにもかかわらず、です。

 そして現在。当時と比べて、「日本人総うつ時代」といっても違和感がないくらいに、うつは市民権を得ました。この長すぎる不景気の中にあって、まさに誰もがうつを経験しているでしょうから、今さら症状を説明する必要はないでしょう。皮肉な話ですが、啓発活動がうつの「普遍化」をかえって促しているともいえます。

 現在では精神科医はもちろんのこと、誰一人としてうつを「こころの風邪」とは呼びません。医療や政府は、警察庁が把握しているだけでも年間3万人もの自殺者が続いている原因をうつに押しつけました。うつは死に至る危険をはらんでいるからです。

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上野玲(うえの・れい)

フリージャーナリスト

1962年東京生まれ。早稲田大学文学部卒。著書に「ルポ がんの時代 心のケア」(岩波書店)、「うつは薬では治らない」(文春新書)など。