オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

叱るべき? それとも許すべき? わが子の「登園渋り」、どう対応する?

新年度が始まった途端、幼稚園や保育園に「行きたくない」と泣きだす子どもがいます。「登園渋り」に、親はどう対応したらよいのでしょうか。

「登園渋り」にどう対応?
「登園渋り」にどう対応?

 4月は新年度の始まりの月です。幼稚園や保育園に前年度から通っている子どもにとっても、担任の先生が代わるなど新たなスタートの時期かもしれません。そんなとき、子どもから突然、「幼稚園に行きたくない」「保育園、お休みする」と言われたら、親として叱るべきか、許すべきか、なだめて何とか登園させるべきか、悩む人も多いのではないでしょうか。

 3月末までは問題なく通っていたのに春休み明けや連休明け、そして、週明けの月曜日の朝になると「行きたくない」と泣きだす子どもがいます。そのとき、子どもから、「どうして行かないといけないの?」と聞かれて、「理由なんかないの」「幼稚園に行くのはあなたのお仕事なんだから行くべきでしょ」と言っていませんか。その答えで、果たして子どもは納得するでしょうか。

子どもに答えを出させてみる

 保育園や幼稚園は義務教育ではありませんから、言ってしまえば、「通わせなくてもいい」わけです。通わせないからといって、子どもの教育を受ける権利を奪っていることにはなりません。私は現在、保育園で4歳児、5歳児に関わっていますが、実際に何人かの園児に対してこんな質問をしてみました。

「ねえ、みんな、どうして保育園に来ているの?」

 返ってきた答えは「ママがお仕事しているから1人で、家で留守番できない。だから、ここに来ている」「家にはお友達がいないので、ここでお友達と元気に遊ぶため」「お歌が上手になるため」。中には「小学校に入る前の練習をしに来ている」と言う子もいました。

 さて、親が子どもから、「なぜ、保育園(幼稚園)に行かないといけないの?」と質問されたとき、「保育園に行くことは決まっていることなの」と木で鼻をくくったような回答をしても子どもは納得しないと思います。

 こんなときは「○○ちゃんはどうしてだと思う?」と子どもに聞いてみましょう。きっと、さまざまな答えが返ってくるでしょう。どんな答えでも「そうだね、だから、園に行くんだね」と肯定しましょう。なぜ共感し、同意するのがよいのでしょうか。それは自分で答えを出したことは納得しやすく、行動に移しやすいからです。

「○○ちゃんが保育園で過ごしている間、ママは会社でお仕事しているのよ。○○ちゃんは園で元気いっぱい遊んでくることがお仕事だね」「○○ちゃんが幼稚園に行っている間にママは掃除をして、買い物をして、夕飯の準備をするお仕事があるわよね」と付け加えてもよいでしょう。

“カウンセラー”になろう

「幼稚園に行きたくない」と子どもがただ、そう言っているだけなのに親がオロオロしてはいけません。大好きなママと一緒に家で遊んでいたくて、甘えているだけなのかもしれません。また、親が焦っている態度を見れば、「ぐずったら、僕の希望が通るんじゃないか」と勘違いするかもしれません。

 保育園や幼稚園は集団生活の場です。自分が好きなおもちゃを友達が使っていて遊べないこともあれば、給食で嫌いな食材が出ることもあります。つまり、わがままが通らない環境なのです。子どもからすれば、「今日は家で自由にしていたい」と思うこともあるでしょう。そんなとき、何とか解決しようと親がエキサイトしてしまい、次のような反応をしてしまうのはNGです。

・「どうして行きたくないの? 誰かにいじめられているの?」:追及型
・「頑張って行こうよ」:説得型
・「お友達だって行っているのよ。○○だけ行かないなんてだめよ」:脅迫型

 まずは、親が「そう、保育園(幼稚園)に行きたくないのね」と寄り添い、“カウンセラー的聞き方”をしてあげましょう。むやみに励ましたり、頑張らせたり、説得したりするのではなく、また、ただ、「うん、うん」とうなずくのでもなく、「そうなんだ、保育園行きたくないんだ」と子どもの口から出た言葉を繰り返すのです。

 こうした「能動的聞き方」や「傾聴」で一度、子どもの気持ちを受け止め、共感していることを示しましょう。親に気持ちをぶつけて分かってもらえたことで、気持ちの切り替えができて、園に行けるようになることもあります。

 それでも登園渋りが続く場合、何らかの理由があります。「行きたくない」と言っていることを「単なるわがまま」と捉えて子どもを叱るのではなく、「何が一番嫌で行きたくないのか話を聞かせて。好きなおもちゃで遊べないからかな? 給食で嫌いなものが出るからかな?」と話し掛けてみましょう。

 また、担任の先生に連絡して、「登園を嫌がるのですが、園内で何か本人が苦しいと感じることがあるのでしょうか」とダイレクトに聞いてみるのもよいでしょう。もしかしたら、いじめがあるのかもしれませんし、園でやらされる課題が本人にとってハードルが高過ぎるのかもしれません。絶対に口にできない苦手なおかずを「残さず食べよう。お皿はピカピカに!」のスローガンのもと、無理強いされているのかもしれません。そうした理由がもしあるなら、先生と相談し、解決策を考えましょう。

 大人だって、体調が悪かったり、会社で嫌なことがあったり、何となく気分が乗らなかったりとさまざまな理由で「今日は仕事に行きたくないなあ」と思うことがあるもの。子どもは特に気分や体調に左右されやすいです。「いつも、絶好調で機嫌よく園に通うとは限らない」と親が心構えをしておくことも必要かもしれません。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

コメント