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中央線線路内を酔った男が“堂々と”歩いて運転見合わせ、「立ち入り」の法的問題は?

男性は酒に酔っていたというが…

 この男性は当時、酒に酔っており「何をやっていたか分からない」と話したそうですが、仮に酒に酔っていても上記のペナルティーを科されるのでしょうか。

 鹿野さんによると、刑罰は程度に応じて不処罰や減軽となる可能性がありますが(刑法39条)、その判断は慎重になされるとのこと。また、民事上の不法行為責任は、故意または過失により、その能力を一時的に欠いたに過ぎない場合には免れることができません(民法713条)。酩酊の場合、そのような状態まで飲酒したこと自体に少なくとも過失があるとされることが多く、今回のケースも責任を免れないと考えられます。

 今回の一件では、19本が遅れ、約1万5000人に影響が出ましたが、JR東日本としては、振替輸送費や乗車券払戻金、一時停止損害金などが発生すれば、それが損害となるため、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)が可能です。通勤ラッシュ時間帯で振替輸送の人数が多ければ、数百万円規模の損害賠償もありえます。

 ちなみに過去の裁判例では、平日夕方の時間帯に酔っ払った人が線路内に転落、進入し、電車が急ブレーキをかけた事案で、振替輸送費約110万円、払戻金約3万5000円、一時停止損害金7000円の計約114万円を損害として認めたものや、平日夕方に線路内に立ち入って衝突死したことにより、上下20本に2時間程度の遅れが発生したケースで、振替輸送費約500万円のほか、旅客対応にかかる人件費などを含む計約700万円の損害発生を認めたものもあるそうです。

(オトナンサー編集部)

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鹿野智之(かの・ともゆき)

弁護士

1975年生まれ。第一東京弁護士会所属。中央大学法学部卒業。早稲田大学大学院法学研究科(民事法専攻)修士課程修了。IT・通信メディアの企業で法務を専任。在職中、法科大学院(夜間)を経て司法試験合格。外井法律事務所。IT企業の法務出身という経歴を生かし、経営目線で事業の円滑な推進を心がけながら、企業のリーガルサポートを幅広く行う。事務所の強みである労働事件をはじめ、相続問題等にも積極的に取り組んでいる。得意分野は、企業法務(IT法務、労働事件、規約・契約書作成、新規事業立ち上げ支援、コンプライアンス等)。最近は、特に中小・ベンチャー企業の支援に力を入れている。「月刊 人事労務実務のQ&A」(日本労務研究会)に執筆中。

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