中央線線路内を酔った男が“堂々と”歩いて運転見合わせ、「立ち入り」の法的問題は?
10月6日朝、JR中央線国立駅近くの線路内を歩く男性が発見され、同線は約30分間運転を見合わせ。朝の通勤客ら約1万5000人に影響があり、SNS上には怒りの声が上がりました。今回は、線路に立ち入る行為について考えます。

10月6日午前6時40分ごろ、JR中央線国立駅(東京都国立市)近くの線路内を男性が歩いているのを、西国分寺~国立間を走行中だった下り列車の運転士が発見し、停車。その後、男性は駅員に保護されましたが、中央線が約30分間運転を見合わせ、上下19本・約1万5000人に影響が出る事態となりました。朝の通勤時間帯を直撃した迷惑行為に、SNS上では「迷惑な話です」「線路内で散歩すんな」「さすがに賠償請求すべきでは」などと怒りの声が上がりました。今回は、線路に立ち入ることの法的問題について考えます。
往来危険罪や威力業務妨害罪の可能性
外井法律事務所の鹿野智之弁護士によると、線路内に故意に立ち入った場合は刑事上、鉄道営業法37条違反で1000円以上1万円未満の罰金(罰金等臨時措置法2条3項、刑法17条)が科される可能性があります(新幹線の場合は新幹線特例法3条2項により、1年以下の懲役または5万円以下の罰金)。
また「鉄道もしくはその標識を損壊し、またはその他の方法により、電車の往来の危険を生じさせた場合」には、往来危険罪(刑法125条1項)に問われ、2年以上の懲役を科される可能性も。往来の危険の「危険」について判例は「汽車または電車の脱線、転覆、衝突、破壊など、これらの交通機関の往来に危険な結果を生ずるおそれのある状態をいい、単に交通の妨害を生じさせただけでは足りないが、脱線等の実害の発生が必然的ないし蓋然的であることまで必要とするものではなく、実害の発生する可能性があれば足りる」としています。
「今回のケースは、線路脇を歩いて『単に交通の妨害を生じさせた』だけであれば同罪には問われませんが、運行に必要な設備を壊したり、レール上に寝込んだりした場合のほか、線路脇を歩くことで、カーブなどでの急ブレーキによる脱線といった実害が発生する可能性があった場合には、同罪に問われる余地もあるでしょう」(鹿野さん)
さらに、電車を止めたことで鉄道会社の業務を妨害していることから、威力業務妨害罪(刑法234条)で3年以下の懲役または50万円以下の罰金に問われる可能性もあります。
なお、過失の場合でも、前述のように往来の危険を生じさせれば、過失往来危険罪(刑法129条1項)により30万円以下の罰金を科される可能性も。
民事上は、不法行為(民法709条)として、JR東日本から損害賠償請求をされる可能性があります。
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