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なぜ、日本人はわざわざブックカバーを掛けるの? 中国人の疑問

今、中国各地には大型の書店が次々とオープンし、多くの中国人が訪れていますが、中国の書店と日本の書店では大きく違うことがあります。それは何でしょうか。

書棚をイメージした天井が特徴的な書店も登場(2018年11月、AFP=時事)
書棚をイメージした天井が特徴的な書店も登場(2018年11月、AFP=時事)

 中国では新型コロナウイルス感染再拡大の影響で、今年の春節は実家に帰省できなかった人が大勢いました。おかげで、地元の観光地や繁華街は人出が多かったと聞きますが、書店もその一つ。今、中国各地には大型の書店が次々とオープンし、多くの中国人が訪れています。

 ところで、中国の書店と日本の書店では、大きく違うことがあります。それは何でしょうか。

「全民閲読運動」で書店増

 日本以上にネットが発達している中国では、10年ほど前まで、「書店離れ」が深刻化していましたが、ここ数年はむしろ、書店の数は増えています。中国政府の統計によると、2019年の書店数は全国で約16万店と過去最高を記録しました。

 政府が2016年から始めた「全民閲読運動」(国民の教養を高め、文化レベルをアップさせる運動)を打ち出したことが要因で、政府がテナント出店料の補助や税金の優遇策を行っていることから、目に見えて書店が増えているのです。2020年末、上海に日本の蔦屋書店がオープンしたというニュースを覚えている人もいるかもしれません。

 かつて、中国の書店といえば、政府系で全国各地に支店がある「新華書店」が代表的な存在でしたが、10年以上前の新華書店といえば、店内は暗く、おしゃれな雰囲気は全くありませんでした。しかし、近年、各地の「新華書店」をはじめ、民営の幾つかの大型書店は照明が明るく、内装もおしゃれです。カフェが併設されていることが多く、トレンドに敏感な人が訪れるスポットになっています。

 これらの書店に行ってみると、本の展示の仕方は日本と大きく変わりませんが、ベストセラーなど一部の書籍は床から人の胸の高さくらいまで、らせん状に積み上げて置いていることがよくあります。

 こうした中国の書店で販売されている本の多くはソフトカバーであり、日本の単行本で時々見かけるハードカバーはごく一部の高価な本を除いて、ほとんどありません。コストの関係かもしれませんが、本の表紙がカバーの役割も兼ねている、つまり、欧米のペーパーバックのようなイメージの本もあります。

 そうした本が多いからか、日本の書店でよく聞く「カバーを掛けますか?」という質問を中国の書店でされることはありません。日本では、単行本(ハードカバー、ソフトカバー)、文庫、新書などを購入するときはほぼ必ず、「カバーを掛けますか?」と聞かれますが、中国では本にカバーを掛けるという習慣がないのです。

 欧米のペーパーバックなどと同様、カバーを掛ける習慣は中国にもありません。むしろ、世界的に見て、日本の書店の方が特殊なのです。

 以前、上海の書店に中国人の友人と一緒に行ったとき、ブックカバーの話になったことがあります。筆者は友人に「なぜ、中国人はブックカバーを掛けないの?」と聞いたのですが、そのとき、逆に友人から、「なぜ、日本人はわざわざブックカバーを掛けるの?」と聞かれ、答えに窮したことがありました。

 筆者自身は「本が汚れないように」という思いと個人的な習慣もあり、書店で聞かれたときは、カバーを掛けてもらうことが多いです。しかし、その友人は「せっかくいい本を買ったのだから、誰かに見せびらかしたい。だから、カバーは要らないし、その必要性を感じない」と言っていました。

 確かに、筆者自身もたまに小難しい本を買ってしまったときは「この本を持っているだけで自慢」という心境になることがあるので、その意見もよく分かります。中国では日本よりもメンツを重視する人がとても多いので、もしかしたら、そういう価値観もブックカバーを掛けない背景にあるのかもしれません。本一つとっても、国によって文化は異なるものだと感じた出来事でした。

(ジャーナリスト 中島恵)

中島恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学留学。中国、香港、韓国など主に東アジアの社会、ビジネス事情などについて執筆している。著書は「なぜ中国人は財布を持たないのか」「日本の『中国人』社会」「中国人は見ている。」(いずれも日本経済新聞出版社)「中国人エリートは日本をめざす」(中央公論新社)「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(プレジデント社)など多数。

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