中国版“料亭政治”? 習近平氏や「長老」たちが集まる「北戴河会議」とは? 専門家に聞く
中国発のニュースを見ていると最近、「北戴河会議」なる会議の話題が増えています。どのようなものなのでしょうか

中国発のニュースを見ていると最近、「北戴河(ほくたいが)会議」なる会議の話題が増えています。毎年夏に開かれている会議のようですが、どのようなものなのでしょうか。ノンフィクション作家で中国社会情勢専門家の青樹明子さんに聞きました。
「リーズナブルな避暑地」が一変
Q.そもそも「北戴河会議」とは、どのような会議なのでしょうか。
青樹さん「毎年夏、北京から東へ280キロほどの位置にあるリゾート地『北戴河』に、中国共産党の現役幹部や引退した長老が集まって開く非公式な会議のことです。かつては公式な実務の場だったのですが、現在は非公式の秘密会議と化していて、参加者や日程は一切公表されません。7月下旬から8月上旬くらいに開催されるだろうという情報を頼りに、世界中のジャーナリストが取材合戦を繰り広げます。
国の重要人物が一堂に会する会議なのに、何も公表されないのは不思議な感じがしますが、政治には根回しやすり合わせがつきものです。日本の“料亭政治”の規模を大きくしたようなもの、といえるかもしれません。
北戴河は、河北省の秦皇島市という所にあり、渤海湾に臨んでいるビーチリゾートです。中国のリゾート地として有名なのは、『中国のハワイ』とも呼ばれる海南島ですが、北京からは遠く、超高級リゾートでもあり、気軽には行けない所です。それに比べると、北戴河は北京から鉄道で行けて、1泊、2泊の休暇を楽しめるリーズナブルな避暑地なのです。
秦皇島市に赴任していた日本人は『日本でいえば三浦海岸(神奈川県三浦市)では?』と話していました。熱海や江の島ほどの派手さはないものの、庶民が気軽に行ける場所で、のんびりとしていて雰囲気のいい海岸都市だったそうです」
Q.なぜ北戴河会議が始まったのでしょうか。
青樹さん「歴史を説明する前提として、北京の夏があまりにも過酷ということをお話ししておきます。北京は6月から8月上旬ごろ、最高気温が40度を超すことも珍しくありません。湿気が少なく、ひりひりするような暑さで、まるで鉄板の上を歩いているような感じです。昼間街を歩いている人はあまり見かけません。今はもちろん冷房設備が整っていますが、30年ほど前までは、冷房設備のない工場などは、40度を超したら午後休業という規定がありました。
その北京の暑さを避けるため、夏に行政機能そのものが、北京から避暑地である北戴河に移った時期がありました。北戴河事務制度と称されて政府の多くの幹部が北戴河で執務し、半分は避暑、半分は仕事みたいな制度ですね。
毛沢東氏の時代に始まったこの制度は 、文化大革命の時代に中断。その後再開しましたが、胡錦涛氏が総書記になって再び廃止されました。『質素を旨とする共産党のイメージにそぐわない』という理由だったようです。
しかし、習近平氏就任後に復活しました。復活の理由として、長老たちが北戴河会議を開かないことに反対したとの話があります。ただし、以前のような公式なものではなく、秘密会議としての復活だったのです。
先ほど、北戴河は『のんびりとしていて、雰囲気のいい海岸都市』と表現しましたが、夏の一時期だけは一変して、私服警官が街中にいて、ピリピリした雰囲気になります。その様子で、長老や政府幹部が集まり始めていることがうかがい知れるのです。突然、政治の街になるわけです」
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