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気質が同じだから? 中国人がこれほど「大阪」を愛してやまない理由

中国人に好きな日本の都市を聞くと、多くの人から「大阪」という声が上がります。中国人ならではの「大阪好き」の理由があるようですが、何でしょうか。

中国人の「大阪好き」、理由は?
中国人の「大阪好き」、理由は?

 中国人に「日本のどの都市が好きですか」と聞くと、多くの人から「大阪」という声が上がります。コロナ禍直前の2019年、訪日中国人観光客が訪れた都道府県の順位で、大阪府は東京都に次いで2位でしたし、中国最大の検索サイト「百度(バイドゥ)」の都道府県別「検索動向ランキング」でも、大阪府は2018年に1位となりました。

 コロナ禍以前の関西国際空港には、中国の各都市から週30便以上と多くの格安航空会社(LCC)の便が就航し、アクセスのよさも中国人にとって、大阪が身近な存在と感じる理由なのかもしれません。しかし、これら以外にも、中国人ならではの「大阪好き」の理由があるようです。それは何でしょうか。

東京は北京、大阪は上海?

 筆者は以前、「大阪が大好き」という中国人たちに、その理由を尋ねたことがあります。最も多かった理由が「大阪の親しみやすい雰囲気が中国人の性に合っているから」というものでした。「東京の地下鉄では、大きな声を出して話ができない雰囲気があるし、東京の人には近寄りがたい雰囲気があるが、大阪ではそんなことはない。みんなフレンドリーで声を掛けやすい。大阪の人は中国人とどことなく似ている」というのです。

「大阪の街なかでは、おばちゃんが『あめちゃん』をくれる」という話もあるように、日本人が見ても、大阪は人と人の距離感が近い感じがしますが、中国人も同じような気持ちになるようです。次のような声もありました。

「大阪の女性が着ている服のセンスは中国人と通じるものがある。特に、中年以上のおばちゃんの派手な服は中国人のおばちゃんとまったく同じだ!」

「大阪は東京よりも、食べ物が安くておいしい。食べ歩きをしていても、あまり白い目で見られない。かしこまっていないところが好き」

「大阪の中でも、難波や道頓堀などミナミの繁華街に行くと、ハデハデな装飾が多くてワクワクする」

「大阪の地下鉄で『あなた、中国から来たの?』って隣の人に話しかけられた。日本語で。こんなことは日本を旅行していて、めったにない経験だ」

 中国人はよく、「東京は北京と似ていて、大阪は上海と似ている」という比較の話をします。北京は中国の首都で、中国全土から人が集まってくる大都市ですが、政治の中心でもあり、緊張感もあります。一方、上海はビジネスの中心地で、北京より開放感があります。人と人との距離感という点では、筆者も上海に行ったときに大阪と似たものを感じたことがあります。数年前までの話ですが、上海の地下鉄に乗っていて、よく初対面の人から声を掛けられました。

「次の駅は何ていう駅なの?」「○○駅には、あと何分くらいで着くかな?」といった感じで、「すみません。ちょっとお尋ねしますが…」といった「前置き」はなく、いきなり本題を、それも砕けた口調で話し始めるのです。その口調はまるで、10年来の知り合いのようで、筆者は最初のうちは戸惑いましたが、こちらも砕けた感じで「次は○○駅だよ」と答えると、ニコニコとうなずいていました。

 今では、地下鉄の行き先や停車駅などを調べるアプリが中国でも日本でも発達していますし、中国人も赤の他人に突然、親しげに声を掛けるということは、以前よりもかなり減っています。しかし、赤の他人に親しげに声を掛け、話をすることに抵抗のない中国人もまだいます。中国人が「大阪は性に合う」と言うのは、彼らはもともと、人と近い距離感で話をすることが大好きという民族性があり、それが大阪の気質と一致するのだろう、そんなふうに思います。

(ジャーナリスト 中島恵)

中島恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学留学。中国、香港、韓国など主に東アジアの社会、ビジネス事情などについて執筆している。著書は「なぜ中国人は財布を持たないのか」「日本の『中国人』社会」「中国人は見ている。」(いずれも日本経済新聞出版社)「中国人エリートは日本をめざす」(中央公論新社)「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(プレジデント社)など多数。

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