中国には中華丼がない? 本場「中華料理」、日本と何が違う? 食事マナーの違いなど専門家に聞いた
日本の食卓に欠かせない中華料理。ラーメン、ギョーザ、チャーハンなど、日本で食べる中華料理と現地の料理は同じものなのでしょうか。
ギョーザ、チャーハン、マーボー豆腐……。日本人も大好きな中華料理。どの街でも中華料理店があり、日本人の食生活に欠かせない存在といえますが、日本で食べる中華料理と現地の料理は同じものなのでしょうか。中国現地の食文化について、ノンフィクション作家で中国社会情勢専門家の青樹明子さんに聞きました。
日本の中華料理のルーツは広東料理 食事マナーにも違い
Q.そもそも、日本と本場中国では、中華料理の味付けに違いはありますか。
青樹さん「全く別物と考えた方がよいです。これはどの国でも共通していると思いますが、日本で発達した外国料理は、日本人の口に合うように、つまり日本人に寄り添った味になってます。作られた料理です。中国料理はその代表例で、例えば、日本のようなラーメンは中国には存在しません。中国の麺料理は味付けが薄いです。日本人が現地で食べると、あまりに味がなくて不満に思いますし、逆に中国人が日本のラーメンを食べると、味が濃くて食べられない人もいます。
また、日本人の好きな料理である『天津丼』『中華丼』は中国にはありません。これは日本人が独自に作ったものです。日本で発達した中華料理は、主に中国南方の広東料理がルーツです。日本人が北京に行って北京料理を食べると、あまりにも味付けが違うので『あれ?』と思います。北京料理はどちらかというと塩辛いです」
Q.中国国内でも、地域によって味付けが違うのですね。
青樹さん「全然違います。『酸甜苦辣』(スワンティエンクーラー)と書きますが、酸っぱいもの、甘いもの、苦いもの、辛いもの、いろいろです。あれだけ広い国土なので、1地域を一つの『国』と捉えた方がいいでしょう。中国でも地域によって人間の性格、民族性も違えば、料理の味や習慣も違います。私はいろいろな所で政治や経済、社会問題などに関して『中国ではどうですか』とよく聞かれますが、あれだけ広くて人口14億人です。それを「中国」とひとくくりで説明するのは困難です」
Q.中国人は、日本人になじみが深い広東料理をどう評価しているのでしょうか。
青樹さん「広東料理は一般的に“甘い”というイメージのようです。広東料理と対極にあるのが、四川料理、湖南料理でしょう。お肉でもお魚でも、唐辛子の山の中に埋もれている。本当に辛いです。なお、北京や上海、広州のような大都市では、中国全土からその土地のレストランが出店しており、あらゆる地域の料理が食べられます」
Q.中国人は普段、外国料理を食べますか。
青樹さん「中国は共働きなので外食も多いです。今日は四川料理、明日は山東料理、火鍋にしても重慶火鍋や香港火鍋など選択肢は豊富です。最近は外国旅行経験者が多いので、外国料理も人気です。なかでも日本食は大人気です」
Q.日本では焼きギョーザが人気ですが、中国にはありますか。
青樹さん「あります。ただ、ギョーザというと、中国では基本的に水(スイ)ギョーザを指します。焼きギョーザはもともと、余った水ギョーザを翌日焼いて食べたのが起源とされています。戦後、旧満州(中国東北部)から引き揚げてきた日本人が日本でギョーザを作って流通させ、やがて流行しました。なお、中国でも20年ほど前から日本料理店を中心に、『鍋貼』(グオティエ)として焼きギョーザが出されるようになりました」
Q.中国での食事におけるマナーは、日本と違いますか。
青樹さん「日本と違い、茶わんを手に持つのはマナー違反です。日本に比べ、箸が長いのも特徴です。今はさすがに少なくなりましたが、飲食店では、食事中に魚の骨をテーブルにペッと吐き出すことも珍しくありませんでした。なぜ、お皿ではなく、テーブルに食べ物のかすを吐き出すのか聞いたことがあります。答えは『日本人のように口から出したものをお皿の隅に置く方が汚い』。一理あるなと思いました。
家族や親しい友人と食事をする際、自分の箸で相手に料理を取り分けてあげるのが『おもてなし』とされていた時代もありました。しかし、サーズの流行以降、衛生に対する考え方が変わり、菜箸を使うようになりました。車の普及や伝染病の流行など社会的要因が中国の食文化に影響を与えることもあるのです」
(オトナンサー編集部)
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