定番なし、“ギョーザだけ”も? 日本と違う中国の「お弁当」事情
アニメのキャラクターなどを模した「キャラ弁」など、日本には、家庭で作るさまざまな種類のお弁当がありますが、中国では少し様相が違うようです。
日本では4月から新学期となり、自分や家族のために毎朝、お弁当を作り始めたという人も多いのではないでしょうか。日本では、お弁当というと、子ども用にアニメのキャラクターなどを模した「キャラ弁」を作ったり、栄養バランスを考えた「少量多品種のお弁当」を作ったりする人が多いと思います。しかし、中国のお弁当事情は日本とは少し様相が異なるようです。どのような違いがあるのでしょうか。
最近は自作の「お弁当派」も
まず、中国の幼稚園や学校では、基本的に給食かビュッフェスタイルの学食で食べることが多く、子どもがお弁当を持参することはあまりありません。昔からよく、「中国人は冷たいご飯は食べない」といわれますが、そうした理由に加え、中国では夫婦共働きの家庭が多く、毎朝、お弁当を作るのが大変であること、貧富の差があり、どの家庭でも子どもにお弁当を持たせてあげることが難しいこと、お弁当の習慣があまりなかったことなどの理由があります。
地方出身の中国人に聞いてみると、以前、小学生は昼食時間になるといったん家に帰って昼食を済ませ、再び登校したそうです。あるいは学校が午前と午後の「2交代制」だったという話も聞いたことがあります。現在でも、地方では学校施設などの都合から、そうしたところがまだあるようですが、都市部では給食か学食なので、いずれにしてもお弁当ではありません。
では、中国人は全然、お弁当を食べないのかというとそうではありません。いろいろな人に話を聞くと、中国人がお弁当を持っていくのは社会人になってからが多いようです。都市部では社員食堂やレストラン、あるいは中国語で「外売(ワイマイ)」と呼ばれるデリバリーでランチを食べることが多いですが、最近では自作の「お弁当派」も増えています。
上海の日系企業に勤務している30代の中国人女性は前日の晩ご飯として、自宅で作った中華料理の残りをお弁当箱に詰め、会社に持参していると話していました。以前はレストランで食べていたのですが、マンションのローン返済のため、少しでも節約しようと、1、2年前からお弁当生活を始めたそうです。お弁当は会社にある電子レンジで温めて食べると言っていました。
北京の地元企業に勤務する20代の中国人女性も、お弁当派です。この女性がお弁当作りを始めたのは昨年の春ごろから。新型コロナウイルスの影響で一時的に在宅勤務となり、以前は興味のなかった料理作りに目覚めるようになったとか。さまざまな料理を作っているうちに、お弁当も作ってみると楽しくなったそうです。といっても、日本人のように、いろいろなおかずを少量ずつ詰めるのではなく、中華料理2種とご飯、果物というシンプルなお弁当です。
別の友人も以前、水ギョーザを10個ほど、お弁当箱に敷き詰めた「ギョーザだけ弁当」を見せてくれたことがありました。水ギョーザはご飯とおかずの両方を兼ね備えた料理なので、お弁当箱に入れる人は結構多いです。中国では、日本のように例えば、卵焼きやブロッコリー、プチトマトなど「お弁当といえばこれ」という定番があるわけではありません。余った料理や好物をお弁当箱に入れる人が多く、特別な決まりはないのです。
鉄道車内販売が急増
最近、急速に増えてきたお弁当といえば、高速鉄道の車内販売のお弁当です。以前、長距離列車に乗るときには、駅でお弁当が売られていなかったので、自宅から持参した果物やトウモロコシ、パンなどをお弁当の代わりとして、車内で食べている人をよく見かけました。
しかし、数年前から、日本の新幹線と同じように、お弁当やサンドイッチが売られるようになり、それを買い求める人が増えました。筆者は2019年、香港から北京まで9時間の列車の旅を経験したことがあるのですが、その際、車内販売とは別に温かい特注弁当を食べている人がいました。
車内販売のお弁当は冷たいことが多いのですが、事前に注文しておく特注弁当は温かく、「そういうものもできたのか」と驚いたものです。やはり、中国人にとっての食事は「温かい」ことが大事なのだと感じた瞬間でした。
(ジャーナリスト 中島恵)
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