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習近平氏腹心を市民が罵倒、「餓死者」情報…都市封鎖1カ月、中国・上海で今起きていること

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、約2500万人が住む巨大都市、中国・上海でロックダウンが始まって1カ月近くがたちます。現地はどのような状況なのでしょうか。

ロックダウンが始まり、閑散とする上海の街(2022年4月、AFP=時事)
ロックダウンが始まり、閑散とする上海の街(2022年4月、AFP=時事)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、約2500万人が住む巨大都市、中国・上海でロックダウン(都市封鎖)が3月28日に始まり、1カ月近くたった4月下旬も続いています。世界最大規模の都市を封鎖したことで、大きな混乱が起き、食料不足から「餓死者が出た」との情報が流れたり、大物政治家が市民に罵倒される動画が出回ったり、大都会でなぜか物々交換が盛んになったりと、現代の中国では考えられないような事態が進行しているようです。上海の現状について、ノンフィクション作家で中国社会情勢専門家の青樹明子さんに聞きました。

習近平氏「勝利宣言」で気が緩んだ結果?

Q.上海の新型コロナの状況と、基礎情報を教えてください。

青樹さん「4月22日の新型コロナの新規感染者数は、症状のある人が2736人、無症状の陽性者が2万634人と発表されています。日本の発表方式(無症状者も含めた陽性判明者)でいえば、約2万3000人となります。

人口2487万人、面積が群馬県ほどの上海は、中国の中で別格といえる都市です。中国の政治の中心は北京ですが、経済では上海が中国トップで、教育や文化の面でも、影響力がとても大きい都市です。海外貿易の心臓部であり、香港をしのぐ美食の中心地でもあり、映画産業も香港から上海に中心が移っています。平均寿命も中国全体の76歳を大きく上回る83.66歳。2021年のGDP(速報値)は前年比8.1%増、日本円に換算して77兆5100億円でした。上海に戸籍を持つというだけで100万ドルの価値があるとさえ言われています」

Q.中国のロックダウンは、かなり厳しいと聞きます。どのような状態なのでしょうか。

青樹さん「厳しい外出禁止、食料不足、毎日のPCR検査や抗原検査が続いているようです。

先日、日中のジャーナリストなどがオンラインで行う国際シンポジウムに司会として参加したのですが、中国側のプロデューサーは上海外国語大学の教授で、封鎖地区だったのでご自宅からの参加でした。彼に『大丈夫ですか』と尋ねたら、『朝いちにネットで食料を確保するのが日課です』と話していました。『争奪戦なので、時々負けますけどね』とも。そのシンポジウムの最中でも、PCR検査の呼び出しがあったら、絶対に行かなければいけないんですね。10分前とか15分前に突然通知が来て、絶対に断れないとのことです。

ロックダウン下の隔離生活では、恐怖心や不安感が強いようです。それはオミクロン株に対する恐怖ではなく、これまで人があふれていた上海の街中から、人影がほぼ消えてしまったことに対する恐怖です。患者の数が減らないことに対して、『政府の対策が追い付いていないのでは』という不安も募っていきます」

Q.中国は政府が「ゼロコロナ政策」を進めており、一部地域を除いて感染はかなり抑えられていたはずです。「水際対策」も厳しい中、なぜ上海で感染が拡大したのでしょうか。

青樹さん「多くの中国人が同じ疑問を持っています。考えられる理由として、1つ目は上海が国際金融センターであることです。経済、産業、貿易の中心地であり、中国を発着する航空機も国際線の半分以上が経由するハブ空港であること。海外から疫病が入りやすい条件が元々あったと考えられます。もちろん厳しい水際対策はしていましたが、それでも防ぎきれなかったと思われます。

2つ目は新型コロナウイルスの変異です。オミクロン株の感染の速さに対応しきれなかったのでしょう。3つ目は、習近平政権が新型コロナへの『勝利宣言』をした後だった、ということです。厳しい水際対策は続けていましたが、一般市民の中では警戒心が薄れてきていて、予防意識もかなり低くなっていたようです。警戒心が緩み、ワクチンも積極的に打たない人が多いところで、変異株が入ってきて、流行が広がったと考えられます」

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青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」「中国人の『財布の中身』」など。近著に「家計簿から見る中国 今ほんとうの姿」(日経プレミアシリーズ)がある。

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