自宅で飲食→複数人感染「宅飲みクラスター」の危険性と防止ポイントは?
緊急事態宣言下、自宅で友人とお酒を飲んでいる人もいるようですが、その後、感染が判明する「宅飲みクラスター」も発生しているようです。宅飲みの注意点とは。

新型コロナウイルス感染再拡大を受けた緊急事態宣言下、飲食店の営業時間が制限され、外出自粛も呼び掛けられていることから、自宅でお酒を飲む「家飲み」をする人が増えているようです。「宅飲み」ともいうそうですが中には、自宅に友人を招いて飲食した後、複数の参加者の感染が判明する「宅飲みクラスター」といえる事例も発生しています。友人・知人を招いての「宅飲み」に潜む危険性について、医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
時間無制限で感染リスク増
Q.首都圏を中心に「飲食店の営業は午後8時まで」などと制限されていることから、自宅で友人と「宅飲み」をする若者が増えているようです。まず、自宅の方が飲食店より、感染対策の面で優れているところがあれば教えてください。
森さん「マスクを外した状態で食事や会話をすることによって感染リスクが高くなるのは、飲食店でも個人宅でも同じです。感染対策について、自宅の方が優れている面を挙げるとすれば、参加者から感染者が出た場合に『濃厚接触者』となる人が全員把握できていることです。
また、飲食店の場合は店の方針や周囲の客の意向に感染対策が左右されますが、自宅の場合は自分の意思で感染対策を徹底できます。席の配置を自分で決められるため、スペースが広ければ、ソーシャルディスタンスを保てること、寒くてもその気があれば、自由に窓を開けて換気できることなどがメリットです」
Q.逆に、自宅が飲食店よりも感染対策の上で危険な面を教えてください。
森さん「自分の意思で環境を設定できることはメリットにもなり、デメリットにもなります。部屋の広さに対して多くの人数で『宅飲み』をすれば、『密』の状態になります。飲食店のようなアクリル板も自宅にはないことが多いでしょう。マスクを外して会話をすれば、飛沫(ひまつ)を近い距離で受けることになりますし、周囲の客への配慮が必要ないため大きな声にもなりがちです。大きな声を出すと飛沫が空気中に多く放出されることが分かっています。
寒い時期なので窓を開け放した換気も難しくなります。厚生労働省が推奨している『30分に1回、数分程度』の換気を意識することは、お酒を飲んでいるような場では難しくなることが多いと思います。また、一般的に自宅は飲食店よりリラックスできるため、食後に話すときのマスク着用や手指消毒など、多くの飲食店が取り組んでいるような基本的な感染対策がおろそかになる可能性もあります。
さらに、時間の制限がないことも感染のリスクが増すことにつながります。かつては話が尽きるまで飲んで、いざとなれば泊まることができるのも『宅飲み』の気楽さといえましたが、感染対策が必要な現在はさらにリスクを高めることになるため危険です」
Q.「宅飲みクラスター」を防ぐためのポイントを教えてください。
森さん「飲食店でなくとも、同居の家族以外の人と会食することは感染を拡大させるリスクが高くなります。緊急事態宣言が出ている都府県など感染が広がっている地域では、『宅飲み』も基本的には控える必要があると思います。感染がある程度落ち着いた後でも、友人を自宅に招いて会食をする場合、できるだけ少人数で、体調が悪い人は参加しないことが前提です。少人数といっても、参加する人が途中で入れ替わるのは濃厚接触者を増やすことにつながるので避けましょう。
部屋の中では、可能な限り距離を取って座るようにします。換気は2カ所の窓を開けて、空気の通り道を作ることが大切ですが、ワンルームマンションなどで窓が1カ所の場合は併せて換気扇を回すか、玄関のドアを少し開けるといった工夫をすれば空気が流れます。お酒が入ると換気のタイミングを忘れがちなので、スマートフォンのタイマーを利用するのもよいと思います。
飲食店と同様、会話が中心になるときはマスクを着用し、お酒の量は感染予防に意識が向けられるくらいまでにすることもコロナ禍では大切なことです」
Q.家族でお酒を飲む際も注意は必要でしょうか。
森さん「家庭内感染が急増しています。自宅での過ごし方まで気を付けなければならないのは窮屈ですが、同居家族の感染リスクを高めないために注意が必要です。家族の誰かが職場や会食等の経路で感染したとしても、無症状であれば、なかなか気付くことができません。
一般的に家庭内ではマスクをしないで過ごすことが多いので、食事が終わった後も長時間、お酒を飲みながら話すといった行為は感染の可能性が高くなります。特に、高齢者や持病のある人など重症化リスクが高い人と同居する家庭では、十分に気を付ける必要があります」
Q.自宅で1人でお酒を飲む場合にも注意すべきことはありますか。
森さん「時間や支払いの心配がないので、自宅で飲むと酒量が増えるという人も多いようです。アルコールによって判断力が鈍ると、基本的な感染対策がおろそかになる可能性があり、飲酒途中や飲酒後の行動に影響する場合もあります。コンビニに行くなど外出する場合に基本的な感染対策を徹底できるくらいの量が、お酒の適量といえるのではないでしょうか。コロナ禍の何かとストレスが生じやすい時期だからこそ、適量をおいしく味わいたいですね」
(オトナンサー編集部)
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