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大浴場無断使用で逮捕…では「コンビニトイレ」無断使用は法的問題となりうる?

「トイレを利用する際は店員に声を掛けてください」という張り紙が掲示されたコンビニでトイレを無断で使用した場合、法的問題はあるのでしょうか。

トイレの無断使用、法的問題になる?
トイレの無断使用、法的問題になる?

 山形県新庄市で1月8日午前7時ごろ、宿泊客でないにもかかわらず、ホテルの大浴場を勝手に使ったとして、男が建造物侵入容疑で現行犯逮捕されました。通常であれば、ホテル側が男に注意するだけで済みそうなケースにも思えますが、法的問題となったわけです。

「勝手に使う」事例としては、コンビニトイレの無断使用がありますが、こちらは法的問題となりうるのでしょうか。「トイレを利用する際は店員に声を掛けてください」などの張り紙が掲示されているのにもかかわらず、無断でトイレを利用する人や商品を購入せずにトイレを使用する人も多くいますが、これらは建造物侵入罪には該当しないのでしょうか。

 佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

理論上、建造物侵入罪の可能性

Q.そもそも、住居侵入罪、建造物侵入罪とはどのような犯罪なのでしょうか。また、どのような場合にこれらの罪に問われる可能性があるのでしょうか。

佐藤さん「住居侵入罪や建造物侵入罪は『正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物(中略)に侵入』した場合に成立する犯罪です(刑法130条)。3年以下の懲役、または10万円以下の罰金が科される可能性があります。

ただし、住居侵入罪や建造物侵入罪は、住居や建造物の管理者の意思に反して立ち入った場合に成立します。管理者の意思に反するかどうかは、立ち入りの目的や建造物の管理状況、管理者の態度などを考慮し、管理者が立ち入りを許していないと合理的にいえるかどうかで判断されます。

刑法の『住居』とは、人が寝起きや食事をする場所を指します。また、『人の看守する建造物』とは、施錠されていたり、監視員が置かれていたりする、いわゆる他人の管理や支配が及んでいる建物です。住居や建造物の中に侵入した場合はもちろん、その庭や屋根の上なども『住居』や『建造物』に含まれるため、管理者の意思に反して敷地内に立ち入れば、その時点で住居侵入罪や建造物侵入罪に問われる可能性があります。

なお、住居侵入罪、建造物侵入罪は未遂についても罰するとされています(同法132条)。そのため、施錠を壊そうとしたり、塀を乗り越えようとしたりした時点で逮捕され、未遂犯として処罰される可能性もあります」

Q.ホテルの浴場を勝手に使用した容疑で男が現行犯逮捕される事件が発生しました。宿泊者以外の人がホテルの浴場を無断使用した場合、常習性の有無にかかわらず、建造物侵入罪に問われるのでしょうか。

佐藤さん「ホテルの宿泊者用の大浴場の場合、ホテル管理者は宿泊者以外の浴場への立ち入りを認めない意思があると思います。今回のケースは、その意思に反して立ち入りをしたため、建造物侵入容疑で現行犯逮捕されたのでしょう。男が常習的に無断使用していたかどうかは明らかになっていませんが、一度きりの立ち入りであったとしても、理論上、建造物侵入罪に問うことは可能です」

Q.ホテルや旅館が「宿泊客以外の浴場の利用を禁じる」「無断使用した場合は通報する」などの張り紙を掲示しない中で、部外者が浴場を無断で使用した場合、宿泊施設側はその人を建造物侵入罪として訴えることはできるのでしょうか。

佐藤さん「建造物侵入罪は故意犯なので、無断使用した人が管理者の意思に反する行為だと認識していることが必要です。『宿泊客以外の利用を禁じる』『無断使用した場合は通報する』などの張り紙が掲示されていれば、『宿泊していなくても使用して問題ないだろう』という誤解はなくなるため、故意が認められやすくなり、より建造物侵入罪に問いやすくなるでしょう。

ただし、こうした張り紙がなかったとしても、ホテルの構造や利用客の様子などから、社会通念上、宿泊客以外の利用が禁じられていることが分かるような状況であったのであれば、建造物侵入罪に問うことは可能です」

Q.事例が変わりますが、「トイレを利用する際は店員に声を掛けてください」と張り紙が掲示されたコンビニでトイレを無断使用した場合、建造物侵入罪に問われ得るのでしょうか。

佐藤さん「『トイレを利用する際は店員に声を掛けてください』といった張り紙が掲示されていた場合、無断でトイレを使用すれば、『コンビニ管理者の意思に反したトイレへの侵入』として、理論上、建造物侵入罪に問われる可能性はあります。

ただし、コンビニのトイレは基本的に、商品の購入客のためのものと考えられるため、トイレを無断使用する前後に商品を購入した場合、罪に問われることはないでしょう。また、商品を購入せずにトイレを無断使用した場合も、その行為自体の悪質性が高いとは必ずしもいえず、実際に処罰されることはあまりないと思います。とはいえ、コンビニのトイレを使用するときは、店員に一言声を掛けるのが礼儀なのではないでしょうか」

Q.ホテルや旅館の浴場の無断利用で、冒頭の事例以外に住居侵入罪、建造物侵入罪に問われた事例はあるのでしょうか。また、施設のトイレの無断利用ではどうでしょうか。

佐藤さん「ホテルや旅館の浴場の無断使用、施設のトイレの無断利用で、住居侵入罪や建造物侵入罪に問われる事例は珍しいと思います。例えば、女装した男性が女性の裸を盗み見る目的で公衆浴場の女湯の脱衣所に侵入し、建造物侵入罪で逮捕された事例などがありますが、それほど多くはありません。住居侵入や建造物侵入は盗み目的での侵入など他の犯罪を行う手段としてなされることが多く、窃盗や強盗など他の犯罪と併せて罪に問われることがほとんどです」

(オトナンサー編集部)

佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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