昭和の献身妻と切り捨てるなかれ 半沢直樹を支える花の「妻力」とは
ドラマ「半沢直樹」が話題ですが、主人公の妻・半沢花の描かれ方にも、いろいろな声が出ています。彼女の「妻力」を分析してみます。
堺雅人さん主演のTBS系連続ドラマ「半沢直樹」第2シリーズの勢いが止まりません。前作以上にクセのある敵が次から次へと立ちはだかり、窮地の連続の主人公・半沢直樹の姿に毎週、ひやひやしながら画面を凝視している人が多いと思います。そして、1話につき1度、半沢の妻・花(上戸彩さん)が登場するシーンになってホッとする…という人も。
半沢直樹と花の夫婦シーンは、ドラマに癒やしを与えているように見えます。一方で、花の描かれ方については「これが男たちの理想なのか。ありえない!」「こんな“昭和風”献身妻、時代にそぐわない」「男にとって都合がいい描かれ方だ」など、厳しい意見も飛び交っています。
今回は半沢直樹の妻・花へのさまざまな見解を踏まえながら、花の“妻力”を分析してみようではありませんか。「男の理想ってこれなの?」と首をかしげる妻の皆さんも、ドラマを楽しみながら結婚生活について考え、夫婦の会話のきっかけにしてみてください。
「帰ってくる港」になる
半沢花の“妻力”について、今作のドラマに登場したシーンや会話からひもといてみましょう。
【最後は「プラスの言葉」で締める】
第1話で、花は結婚記念日にレストランを予約しました。予約が取りにくい人気の店でしたが、直樹から「仕事で行けなくなった」と電話がかかってきます。
現実世界の妻なら、「はあ? 何それ。意味分かんない」の第一声が出て、そのまま電話を切っても不思議ではありません。仕方なく認めたとしてもその後、数日間はグズグズ言ってしまいかねないでしょう。
ここで、花は「来れない? 来れないってどういうことよ。今日は結婚記念日なんだよ。あのレストラン予約するのどれだけ大変だったか知ってる?」と言いつつも、「まあいいわ。(中略)無理しないで、お仕事頑張って」といったプラスの締め言葉をかけて電話を切ります。不満は述べるものの、最後は夫を気遣うのです。
「ピークエンドの法則」とは「ある事象において、人は感情のヤマ場と終了時の気分で全体をジャッジする」というものです。「終わりよければ全てよし」にも通じます。この法則によって、後味がよい会話に仕上げているのです。
似た事例で、「けんかした後に背中からハグする」ことで、夫婦げんかを長引かせない妻が存在します。花にも勝る、かなりの“妻力”です。
【夫の帰る場所を言葉で示す】
前作では「負けんじゃねえぞ!」と、ふざけ顔で男っぽい言葉をかけたかと思えば、今作では、今よりも厳しい場所へ異動させられると覚悟を決めた夫に向かって、「直樹が頑張ってたのは分かってる。どんな辞令が出ようと、堂々と帰ってきてよね」と真顔で声をかける花。「夫の居場所」を明確に示しているのです。
花の言葉は、銀行から子会社の証券会社へ出向させられていた直樹が「次は地方に出向かもしれない」と花に告げた後に出てきたものです。誰しも、居場所がなくなることを不安に感じるもの。そうした状況を前に「理不尽な目に遭おうが、遠い場所へ飛ばされようが、あなたを信じて一緒にいる」という覚悟を、ちゃんと言葉で伝えています。
「半沢直樹」の原作で描かれているのは「バブル期入社世代」なので、あえて昭和風に表すと“男が帰ってくる港”でしょうか。平成や令和の時代しか知らない世代にはくすぐったい言葉でしょうが、どんなに悪い状況にいても、“帰る場所”があれば、そこで英気を養ってリカバリーできるのです。
これは女性側も同様です。外でバリバリ働いていて、人間関係で傷ついたり、上司に嫌みを言われたりしてボロボロになったとき、“港”に帰れば元気をチャージできる。それが夫であり、子どもであると確信していれば、苦難を乗り切ることができます。
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