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子どもと話せず? 「新しい給食様式」で先生が抱える新たな悩み

「新しい給食様式」による給食が始まり、以前とは勝手が異なることから、園や学校の先生も悩みや困りごとを抱えています。どのようなものなのか紹介します。

「新しい給食様式」による悩みとは?
「新しい給食様式」による悩みとは?

 筆者は子どもの偏食や小食に悩む保護者の相談に乗ったり、園や学校向けに給食指導の研修を行ったりしています。7月になり、全国各地の園や学校で給食が徐々に再開されていますが、新型コロナウイルス感染防止への配慮から、食事中は前を向いて会話せずに黙って食べるなど、「新しい給食様式」が実施されています。そうした中、園や学校の先生から、以前とは異なる悩みや困りごとが筆者の元に届くようになりました。どのようなものか紹介します。

給食の時間が足りない

「新しい給食様式」では、どのような変化があったのでしょうか。まず、共通する大きな変化として2つ挙げられます。1つ目は、子どもたちの席の間隔を広く取ること。2つ目は、なるべく会話を控えることです。それ以外にも、最初から、弁当箱に入れたものを配って食べる、以前は子どもがしていた机拭きを先生がするなど、園や学校によってさまざまなバリエーションがあるようです。

 こうした大きな変化の中で、先生から悩みとしてよく聞くのが「給食の時間が足りない」ことや、「コミュニケーションを取りづらい」ことです。

 まず、「給食の時間が足りない」ことについてです。「新しい給食様式」では、特に園に関していえば、子どもと子どもの間隔を広く取るため、教室内に子どもの人数分よりも多めにテーブルを用意する時間が必要になりました。これまでであれば、4人がけのテーブルに4人座らせていたところを、対角線で2人座らせるようにすると、単純にテーブルが倍必要になるからです。

 学校での給食では、密になることを避けるため、給食当番が配膳室へ取りに行く時間をクラスごとにずらしたり、給食当番の人数を減らしたりしています。また、クラス内で給食を配膳するときに並ぶ人数を制限したり、自分のものは自分で配膳するようにしたり、学校によっては先生が1人で配膳を担当するケースもありました。消毒の徹底も必要で、給食の準備に以前よりも時間を必要とするようになり、「時間が足りない」という声が多くありました。

 時間節約のため、メニューの数を減らしたり、丼もののメニューをあえて多くしたりしているところもあります。地域によっては、給食再開直後に保護者や地域住民がボランティアで給食の配膳を手伝っていたケースもあるそうです。

 次に「コミュニケーションを取りづらい」ですが、特に保育園の先生から多く聞きました。保育園の先生は会話を通じて、子どもが何が好きで、何が嫌いかを把握する必要があります。苦手なもの、嫌いなものを食べていない子に、「一口食べてみたら?」と一声掛けるのも先生の役割です。そうした声掛けで、食べる子もいます。自分から食べない子どもでも、先生がスプーンを子どもの口の前に持っていくと、食べ始めるということもよくあります。

 しかし、新型コロナの感染に敏感になっている現在の環境では、このようなコミュニケーションを取ることが難しいようです。「仕方がないかもしれないが、給食の時間が、ただの『栄養素を摂取する時間』になりつつある」という声もありました。

子どもにとってのメリットも

 一方で、そのような中でも楽しめる工夫をする先生や、子どもにとってのよい面を見つけた先生もいました。

 友達とワイワイ話しながら食べるこれまでの給食とは異なり、「新しい給食様式」では、話をせずに黙々と食べることが求められます。そうすると、教室内が静かになってしまうため、「給食が少しでも楽しい時間になるように、テーブルにお花を飾ったり、音楽を流したりし始めた」という先生がいました。

 また、「普段は食が細い子どもがいるのですが、『新しい給食様式』になってから、いつもよりも食べるようになりました。どうやら、周りに友達がいない分、自分の食べている量やペースを周りに見られることなく、自分のペースで食事ができていることが、よい方向に働いているようです」と話してくれた先生がいました。特定の子どもにとっては、よい面もあるようです。

 食事に限りませんし、また、学校にも限りませんが、今は「新しい生活様式」での生活や仕事をせざるを得ない状況になっています。このような状況では、一人一人が手を取り合いながら、協力していくことが大切だと思います。

(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)

山口健太(やまぐち・けんた)

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事

人前で食事ができない「会食恐怖症」の当事者経験から、食べる相手やコミュニケーションの違いによって食欲が増減することを実感。既存の「食べない子」への対処法に疑問を感じ、カウンセラーとして活動を開始。「食べない子」が変わるコミュニケーションノウハウの第一人者として、延べ1000人以上の相談を受ける。「楽しく食べられる」ようになる道筋を理論的に分かりやすく明示することで「食べない子」の問題を解決しながら、「食べない子」の親の肩の荷がおり、心が楽になるメソッドが特徴。カウンセリングや講演活動を通して「食べない子」に悩むお母さんや学校・保育園の先生などにメッセージを伝えている。著書に「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)。

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