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好き嫌いは甘やかし? 先生への怒りを乗り越え、娘の「小食」「偏食」と向き合う母

子どもの小食と偏食は周囲からの理解が得られず、親子ともにつらい思いをしがちです。長女が離乳食時代から小食と偏食になり、悩み続けたお母さんの話です。

給食が食べられない子どもは多い
給食が食べられない子どもは多い

 筆者は子どもの偏食や小食に悩む保護者の相談に乗ったり、園や学校向けに給食指導の研修を行ったりしています。相談では多くの保護者から、「子どもが偏食や小食で給食が食べられない」などの声が寄せられますが、中には、園や学校に通う前のさらに幼い頃から悩み続けるケースもあります。

 今回は、長女が離乳食時代から、小食と偏食で食べ物を極端に食べられず、しかも、その悩みを周囲にも理解されず、さまざまなつらい思いをしてきたお母さんの話です。

給食がまるで修行のようで…

「私は長女の離乳食時代から、小食と偏食に悩み、しかも、身内や友達、幼稚園や小学校の先生たちに理解してもらうことが難しく、親子ともにつらい思いをしてきました」

 そう語るのは2児のお母さんです。極端に食べられないわが子のことが周りにもなかなか理解されずに苦しんでいました。その中でも、特に学校の先生への憤りを強く感じているようでした。

「『何でも好き嫌いをせずにたくさん食べる子が素晴らしい。好き嫌いはわがままであり、甘やかしだ』という周りからの声に悩まされていました。中でも、子どもを教育する先生がほとんど知識がないまま、給食の指導に当たっていることで問題が大きくなることもあると思います。長女も毎日の給食がまるで修行のようだった時期がありました。給食が嫌で『学校に行きたくない』と言うこともありました。それこそ、何のための学校なのか分からなくなります」

 お母さんは悩みましたが、自分から少しずつ情報を得る中で子どもの性質や気持ちを受け入れ、理解できるようになってきました。そんな中、ショックを感じた思い出深いエピソードを1つ挙げてくれました。

「いつも、学校に行くときはハンカチとティッシュペーパーを入れるポシェットを身に着けていくのですが、ある日、その中に嫌いな豚肉をたくさん詰めて帰ってきたことがありました。長女は帰ってくるなり、『お友達にばれたかもしれない…』と私に話をしてくれました。詳しく状況を聞いてみると、その日は苦手な豚肉がメインの給食だったらしく、どうしても食べられなかったので、ポシェットに隠して持って帰ってきたとのことです。

普段は、給食で苦手なものは先生が食べる前に減らしてくれるはずなのですが、その日は減らそうと持っていってもあまり減らしてもらえなかったそうです。最近、長女が少しずつ給食を食べられることが増えてきたので、先生もあまり減らしてくれなかったのかもしれません」

 小学生くらいであれば、豚肉などの繊維が残りやすい食べ物を苦手とする子どもは多いです。もちろん、無理やり食べさせることはNGで、うまくそしゃくや嚥下(えんげ)ができないと、最悪の場合、誤嚥(ごえん)からの窒息死につながることもあります。しかし、お母さんが語るには、学校の先生だけでなく、実は周りの家族からも長女の行動が理解されなかったといいます。

「ポシェットに入れて帰ってきたことをたまたま居合わせた私の両親が知って、かなり怒ったのです。『うそをつくのはよくないし、お肉を食べないのはわがままだ!』と。もちろん、両親の気持ちも分かります。でも、長女だってやりたくてやったわけではないのです。正直に残そうとしても先生に怒られるかもしれない、でも、どうしても食べられない…だから持ち帰ってきたんだと思います。

確かに、給食を残して持ち帰ってくることがよいことではないことも分かります。でも、本当は子どもがそこまでしなくてはいけない状況の方が問題ではないでしょうか。それだけ、『給食を残す』ことがクラスで“タブー”になっているのだと思います」

 実際、娘さんは罪悪感がいっぱいの様子で帰宅したそうで、その様子を見て、お母さんは「とても責める気にならなかった」そうです。その上で、娘さんに対してこのように伝えたといいます。

「これからは、食べられないんだったら正直に残してきたほうがいいよ。それもあなたにとってはすごく嫌だろうけど。もし、ポシェットに食べられなかった給食を入れていることが分かったら、『食べていると先生は思っていたのに!』と先生もショックだろうし、これからずっと疑われるかもしれないよ。

ママはあなたがそう思われるのは嫌。だから、残すのも嫌だろうけど、持って帰ってくるより正直に残した方がいいと思う。もし、それで先生にものすごく叱られたり責められたりしたときはママがちゃんと助けるし、相談に行くから」

 それから、お母さんはどうしたら子どもがより給食を楽しめるかを考え、新しい取り組みをすることにしました。そして、それが功を奏して、少しずつ食べられるように変わってきたといいます。

「長女の給食へのネガティブなイメージを改善するためにやってきたことがあります。それは『献立表にその日おいしかったものをマーカーでチェックする』というだけなのですが、長女にはこれが結構、効果的でした。

最初は私が『今日、なんかおいしいのあった?』と聞いて、それがたとえデザートだけであろうが、ご飯やパンだけであろうがチェックするようにしていたのです。だんだんと自分から、『あっ! 今日のおいしかったのを色で塗ろう!』と言いだし、最初は色がつかなかった主食以外のおかずや副菜にも色がつくようになったのです。

苦手なものを一口でも食べられたら、それもメモするようにすると1口が2口、3口…と増えていくようになり、長女も『すごいでしょう!』と自分から書き込んだり、『見てー! こんなにいっぱい色ついたー!』とうれしそうに話したりといい変化が見られました」

 これは筆者としても、とてもよい方法だと思いました。特に、完食できたかどうかだけではなく、苦手なものに少しでも口をつけられたらメモするというやり方が「さらなる食べる意欲」につながっているのも見逃せないポイントです。

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山口健太(やまぐち・けんた)

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事

人前で食事ができない「会食恐怖症」の当事者経験から、食べる相手やコミュニケーションの違いによって食欲が増減することを実感。既存の「食べない子」への対処法に疑問を感じ、カウンセラーとして活動を開始。「食べない子」が変わるコミュニケーションノウハウの第一人者として、延べ1000人以上の相談を受ける。「楽しく食べられる」ようになる道筋を理論的に分かりやすく明示することで「食べない子」の問題を解決しながら、「食べない子」の親の肩の荷がおり、心が楽になるメソッドが特徴。カウンセリングや講演活動を通して「食べない子」に悩むお母さんや学校・保育園の先生などにメッセージを伝えている。著書に「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)。

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