食べ物が喉に詰まった恐怖で、食べられなくなった子ども…親はどうすべき?
子どもが食事中、不意に食べ物を喉に詰まらせると、その恐怖から食べることができなくなることが多いそうです。この場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
筆者は、子どもの偏食や小食に悩む保護者の相談に乗ったり、園や学校向けに給食指導の研修を行ったりしています。そのような中で、未就学児の保護者からよく届く相談に「食事を喉に詰まらせたことで、子どもが食べることを怖がり、食事量が落ちてしまっています。どうすればいいでしょうか」というものがあります。
子どもの食事量が落ちてしまうと、栄養が十分に足りているのかなど、保護者は健康面で不安になると思います。今回はこの問題について取り上げながら、解決のヒントをお伝えしていきます。
「摂食・嚥下障害」の2要因
今年5月、このような相談が届きました。
「5歳の娘ですが、先日、食事中に食べ物が不意に喉に詰まりそうになったことがありました。食べていたハクサイが喉に詰まったようです。それを機に、今まで普通に食べられていた食べ物も『飲み込めない』と吐き出すようになってしまいました。今では、食事の7割近くを飲み込めずに出してしまいます。食べ残しも多くなっています。どうすればいいでしょうか」
これと似たような相談が筆者によく届きますが、このような食べ物をうまく飲み込めない症状のことを「摂食・嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)」といいます。そして、摂食・嚥下障害に子どもが悩む場合、主に2つの要因があります。それは(1)かみ砕くことや飲み込むことが未発達である「機能的な要因」(2)トラウマ(心的外傷)やストレスなど「精神的な要因」です。
最初に「機能的な要因」から食べ物を喉に詰まらせてしまい、それがトラウマになる(「精神的な要因」へとつながる)ということも多いのですが、どのように解決していけばいいのでしょうか。解決方法としてまず、「機能的な要因」が大きい場合は、機能の発達を具体的にサポートしてあげることが重要です。
そもそも、人が食べ物を口に入れてから飲み込むまでには、3つのプロセスがあります。それは(1)歯でかみ砕く(2)舌を使ってかんだものを喉元へ送る(3)喉で飲み込む――です。
そして、今回の相談のように、5歳前後のある程度大きい未就学児の場合は、奥歯をうまく使えないと食べ物を喉に詰まらせることが多くなります。具体的には、炒めた肉や生野菜など、繊維のある食べ物が食べにくい傾向がある場合は、特に「すりつぶし(奥歯を使った横の動き)がうまくできていない」ことが多いのです。
こうした場合は、食前や食後に1分ほど時間を取って、「すりつぶし」の練習をしていくのがおすすめです。
やり方としておすすめなのは「ガーゼ食」というトレーニング法です。いつもは食べられない肉や野菜のスティックをガーゼに包み、保護者がそれを子どもの口の中に入れ、ガーゼに包まれた肉や野菜を繰り返しかむ練習を行います。ガーゼに肉や野菜を包むことで、形を整えて何度も練習できますし、保護者がガーゼを持ちながら練習することで誤飲も防げます。
次に「精神的な問題」についてですが、人はストレス状態にあると喉の筋肉の動きが鈍くなり、食べ物が飲み込みにくくなります。そのため、食事の際、なるべくリラックスできるように心掛けます。喉の筋肉の動きが鈍くなるタイミングは、子どもにとって「食べるのが怖い」という緊急事態のようなものです。こうしたタイミングでは、子どもに「何が食べたい? 何が食べられる?」と意思を聞くのは「アリ」だと思います。
そうすると「お菓子しか食べられない!」と言うかもしれません。そのような場合は、その要求に全て応じる必要はないですが、しっかり傾聴して、その気持ちを受け入れてあげることが一番大切です。その上で、保護者自身に余裕があるときは「それだけしか食べないとどうなるか知ってる?」などと促しながら、栄養素について話してあげる機会にするのもいいでしょう。
判断に迷ったときは「どっちの選択をすれば、子どもにとって安心か」を基準に判断するのがベストです。子どもの安心感が高まっていけば、喉の筋肉も緩んで飲み込みやすくなりますし、食欲も湧きやすくなります。
最後に、冒頭で紹介した相談者から先日届いたメッセージを紹介します。
「想定していた期間より、かなり早く、夏を迎える前には完全に今までと同じ、何でも食べられる娘に戻ることができました。今回の出来事があり、『子どもの食事』に対する私の向き合い方が変わりました。とてもよいきっかけになりました」
(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)
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