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給食が心配…「小食」「偏食」の子ども、小学校入学前に家庭ですべきことは?

小学校に入学する「小食」や「偏食」の子どもと保護者はこの時期、「給食をきちんと食べられるのだろうか」と不安に思うようです。給食で困らないために、家庭でどのようなことができるのでしょうか。

初めての学校給食、どう準備する?
初めての学校給食、どう準備する?

 筆者は子どもの「小食」や「偏食」に悩む保護者の相談に乗ったり、園や学校向けに給食指導の研修を行ったりしています。この時期、「これから小学校に入学するのに、あまり食べないうちの子は給食は大丈夫だろうか…」という保護者からの不安の声をよく聞きます。特に、小学校の入学説明会で「給食は好き嫌いなく、時間内に食べきれるようにしてきてください」と言われることも多いようで、さらに不安になったという声もありました。

 小学校に入学する小食や偏食の子どもが給食で困らないために、入学するまでに家庭でどのようなことができるのか、お伝えします。

ある栄養教諭の声

 4月に小学校へ入学する子どもの保護者から、「初めての学校給食が不安」という声をよく聞きます。特に、入学説明会では入学前にできるようにしておくこととして、「好き嫌いなく何でも食べること」「時間内に食べきれるようになること」などが栄養教諭や教頭からの説明、あるいは書面で保護者に伝えられることがあります。

 これを聞くと、あまり食べられない子どもやその保護者は大きなプレッシャーを感じると思います。学校側は実際に「どこまで、入学前にできるようになってほしい」と求めているのでしょうか。最近、保護者向けの説明をしたという、ある小学校の栄養教諭に聞きました。

「ついこの間の入学説明会で『アレルギー対応』についてだけではなく、給食で実際に食べる時間の目安は約20分としていること、1年生は最初の数カ月は食べる時間をしっかり取れるようにしていますが、給食後の活動もあるため、30分程度にしていること、家庭でも時間を気にして食べ進められるようにしてきてほしいことも伝えています。

『好き嫌いをなくしてきてほしい』とは言いませんでしたが、『献立表を(子どもと)一緒に見て、給食が楽しみだと思えるようにしてほしい』とは伝えました。アレルギーの関係もあるので、もし、食べたことがない食品が給食に出るときはその前にできれば家庭で一度、食べてほしいとも伝えました」

 小食や偏食に関しては次のように伝え方の難しさを教えてくれました。

「子どもが小食である場合、給食で食べる量は担任がきちんと調整することや、給食について心配なことがあれば、担任や栄養教諭に相談してほしいことも伝えています。偏食の子どももいます。それを否定するつもりはないのですが、全体に向けての説明の中で、個別のケースとして偏食のことをどのように話せばよいのか難しいと感じることがあります。上手な伝え方があれば知りたいと思っています」

「好き嫌いなく何でも」は不可能

 もちろん これは一人の栄養教諭の個別意見ですが、このようなことを踏まえて上で、小学校に入学するまでに家庭でどのようなことができるのか考えてみましょう。

 まず、お子さんの現在の食物アレルギーを確認することや、給食で初めて食べることになるものはあらかじめ、家庭で少しの量から、食べても問題ないか試してみましょう。「給食で初めて食べたらアレルギー反応が出てしまった」というリスクを避けるために、これはできるだけやっておいた方がよいと思います。

 一方で「好き嫌いなく何でも食べること」は、入学までの期間では到達不可能な目標だと思います。その大きな理由は「どうすれば好き嫌いなく食べられるようになるのか」が大多数の保護者には分かりませんし、学校側から、「好き嫌いなく食べられるようになるため、家庭でこうしてみましょう」という具体的な方法が提示されることも少ないからです。

 実際のところ、苦手な食べ物を減らしていくためには苦手な食べ物にいきなり挑戦させるのではなく、「食べることは楽しい」という土台を作り、少しずつ広げていくことが大切ですが、このようなやり方が分からなければ、「好き嫌いをなくしましょう」と言われても何をしたらよいのか分かりません。また、苦手な食べ物を減らしていくには数カ月、数年とかかる場合があります。

 その一方で「時間内に食べること」については、時間を意識して食べるだけでも早く食べられるケースもあります。その際は「今日はどれくらいで食べる?」などと、お子さんに時間を決めてもらう形の方がより効果が高まりやすいです。

 しかし、そしゃくや嚥下(えんげ)に関わる口腔(こうくう)機能が未発達で、食べることが遅い場合は「早く食べようと思っていても早く食べられない」という状況です。そのような場合は、歯科医師や言語聴覚士などから、専門的な指導を受けることが必要なケースもあります。

 ここまで述べたことをまとめると、小学校の給食が始まるまでの間に家庭でできることは、まずは子どもの食物アレルギーについてなるべく把握しておくこと、そして、食べられないものが多いのであれば、無理に食べさせようとはせず、まずは食べられない理由を把握することではないかと思います。

 文部科学省が発行している「食に関する指導の手引-第二次改訂版-」の第2章でも「学校・家庭・地域が連携した食育の推進」という項目があり、「校内食育推進体制を整備するとともに、学校が家庭や地域社会と連携、協働し、食育を一層推進していくこと」が求められています。給食が始まり、不安が解消できなければ、担任とコミュニケーションを取りながら、わが子の食育を少しずつ進めていくことが大切でしょう。

(月刊給食指導研修資料=きゅうけん=編集長 山口健太)

山口健太(やまぐち・けんた)

月刊給食指導研修資料(きゅうけん)編集長、株式会社日本教育資料代表取締役、一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事

人前で食事ができない「会食恐怖症」の当事者経験から、食べる相手やコミュニケーションの違いによって食欲が増減することを実感。既存の「食べない子」への対処法に疑問を感じ、カウンセラーとして活動を開始。「食べない子」が変わるコミュニケーションノウハウの第一人者として、延べ3000人以上の相談を受ける。著書に海外でも翻訳出版されている「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)などがあり、給食指導などの研修を保育所や学校などの栄養士・教職員に向けて行っている。「目からうろこの内容」と言われるほど“とにかく分かりやすい解説”と、今日からすぐに使える実用的な内容が特徴。月刊給食指導研修資料(きゅうけん)

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