土地に付いた「宅地抵当権」、抵当権者不明でも抹消できる?
所有者と抵当権者が共同申請する
Q.どのような手続きで抹消できるのですか。
岩沙さん「抵当権の抹消を行うためには、原則として、登記権利者(土地の所有者)と、登記義務者(抵当権者)が共同して申請しなければなりません(不動産登記法60条)。今回のように、古い時期の登記である場合、抵当権者が既に亡くなっており、その相続人全員が登記義務者ということもあり得ます。相続人が全くわからない場合は、共同申請を行うことはできません」
Q.抵当権者や相続人が所在不明の場合はどうするのですか。
岩沙さん「抵当権者や相続人が所在不明であると証明することを前提として、公示催告という手続きを用いる方法もあります。1つ目は、抵当権が担保していた債務が消滅していたことを示す書類を登記所に提出することで、単独で抹消申請できます(同法70条3項前段)。しかし、60年以上前に完済した場合、完済証明書などの書類が残っている可能性は低く、この方法を使える可能性は低いでしょう」
岩沙さん「2つ目は除権決定を得ることで、単独で抵当権の抹消を申請できます(同法70条2項)。しかし、除権決定を得るには、抵当権が消滅していることを示す資料の提出が求められるため、結局完済の事実を示す資料を提出する必要があります。したがって、この手続きを使うメリットはほとんどありません」
岩沙さん「3つ目は、抵当権が担保していた債務の弁済期から20年が経過していることを示した上で、その借入額と利息、遅延損害金のすべてを供託する方法です(同法70条3項後段)。この方法は、登記などから債務の額がわかり、かつ遅延損害金まで含めた金額が支払える範囲であれば有効な手段といえます。しかし、そもそも債務の額がわからず、供託すべき金額が特定できない場合や、遅延損害金を含めた総額が高額になってしまう場合は使えないデメリットがあります」
Q.今回のケースに関してまとめをお願いします。
岩沙さん「今回のように抵当権者の相続人の所在が判明しなかった場合、とりあえず債務の消滅に関する証拠を探す必要があります。もっとも、現実的にはそのようなものが発見される可能性は低いため、公示催告と供託の方法を検討することになるでしょう」
(オトナンサー編集部)
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